闇に生きるもの3
目が覚めるとそこは森のようだ。深緑の匂いが鼻腔をくすぐり、葉の間を縫って地上に舞い降りた太陽の光が眩しく、目を細める。
「本当に死んで生まれ変わったんだな」
光の眩しさを遮ろうと自然と顔の前に手が出る。
「人の手!?てっきりモンスターみたいな緑色とか紫の手を想像していたのに……」
驚きのあまり近くにあった切り株に座り直し手を見る。透き通るように白い肌。ほっそりと適度に長い指。桜色で血色の良い爪。
まさかと思い身体を探る。
服は黒に統一されており、服の上からも分かるように身体は全体的に細く出るとこは出ており腰は男性のものではなく、くびれている。まさに……女性になっていた。
「人で、女か……頼んでないのだがな。てっきりゴブリンや、オークとか、ファンタジー的なモンスターになってるのかと思ったんだが……」
「まぁ、わしもモンスターにするとも男にするとも言ってないがな」
先ほどの声が頭の中に直接響く。
「どこだ?会いに来ると言ってたが姿が見えないが……」
辺りを見渡すが周りは木ばかりで誰もいない。
「ここじゃ、お前さんの少し上の枝じゃ」
視線を少し上げると木の枝の上に小鳥が首を傾げこちらを見ている。
「そこの鳥か……?」
「そうじゃ。やっと気づきおったか。先ほどからお前さんの前に居たんじゃがの」
そう言うと鳥は俺の肩に乗り移って来た。
「あまり時間もないし、簡単ではあるが、お前さんの事を説明しておくぞ。ほれ」
目の前に大きな鏡が現れる。
そこには前世の自分の欠片も残っていない女性が映されていた。
全体的に細っそりとした身体。
身長は160くらいか?あくまでも見た目だが。
髪は墨でも流したかのように真っ黒な黒髪が綺麗にショートに切り揃えられており、金色に輝く切れ長の垂れ目が整った顔を可愛らしくしている。服まで黒で統一されているが……まるで思春期で、ある病をこじらせたような感じだな。
「容姿が良いのはサービスじゃ。髪もそうじゃが、この世界で単色は魔力の高さを意味する。白になるにつれて、たとえば白銀であれば光を意味する魔力が高い。黒は影、闇を意味する魔力が高く中でも瞳が金であれば、それは魔族の証じゃ。お前さんは人の容姿こそしておるが、魔族に生まれ変わったのじゃ。その部分は前世のペナルティ分じゃの。この世界には人間、魔族がおる。両種族はあまり中が良いとは言えんが、お前さんが街中を歩いとったからと言って殺されはせんし、嫌な目で見られることはあるじゃろうが表立った事は特にないから心配せんでもよいわ」
それじゃ前世と変わらないな。
見た目で嫌な思いをし、性格は前世のままで……また生きるのか。
「だいたい言いたいことは分かるが、あからさまに嫌そうな顔をするんじゃないわい……お前さんが生きるこれからの道は長い。そのなかで良いものが見つけられると良いがの」
そういうと鳥は肩から飛び立ち空に向かって行く。
「わしは帰るぞ!頑張らなくても良いが地道に生きるんじゃぞ!じゃぁの!」
そう言うとスピードを上げ空に消えて言った。