闇に生きるもの2
暗闇の中を漂う。
身体の感覚は無く、有るのはただ意識だけが漂う感覚。
言うならば海に浮いている様な感じだ。
死んだはずだ。
ならばこれは地獄か……人を殺したのだ。 当然だ。
「それは違うな。正確には世界の境界の狭間、魂の最果て、終わりと始まりの場所。呼び方は色々あるが地獄ではないの」
その声は老人のようで声が直接意識に、脳に響く音で語りかけてくる。俗に言う神ってやつか?
「わしの声が老人のものに聞こえるのは、お前さんが神とは老人の姿をしており、髪は白く髭があってと言う考えからじゃろうな。本来なら性別、年齢という概念はないからな。まぁ神かどうかは想像にまかせるが…。それにしても……お前さんは馬鹿なヤツよの。久しぶりに見た馬鹿なヤツじゃわい」
人を殺したことだろうか、それとも死んだこと、ほぼ自殺のようなものだが、そのことだろうか。
「両方じゃ。自殺はまた生を受けることができても、足枷をされることになる。無駄に人殺しもまた同じじゃ。お前さんは両方やっておる。いずれは現世に魂を還すがまた生を受けたとしても、その人生は過酷なもので幸せにはなりにくい。」
またあの世界で不幸を繰り返さなければいけないのか。それならいっそのこと地獄でいつ終わるかわからない苦痛を受けていたほうがましだ。
「すまんが、地獄なんてもんはない。天国と呼ばれるものも同じくないの。人は皆死ねばまた生まれ変わるのみじゃ。ただ良き行いをして死んだものは、それなりの幸せを授けておるがの」
成る程……だが、やっぱりあの世界は嫌だな……。
「なら、違う世界ならどうじゃ?お前さんにはそれなりの辛い思いをさせると思うがの」
「そんなことができるのか?」
「世界は一つじゃないからの」
違う世界か……よくあるファタジーなあれか?まぁそれもありか?違う世界で醜い化け物にでもなって殺されるのもいいかもしれない。惨めな俺にぴったりかもな。
「お前さんは何でも悪い方に考えすぎじゃ……まったく」
まぁ違う世界でまた辛く生きていくのもいいかもしれないな。
そこで前世を悔いて生きるよ。
醜く愚かに生きていくか。
「まぁ……よいか。このままじゃ埒があかん。もう一度生きて生きるとは何か考えるがよいわ。あちらに着いてしばらくして一度だけ直接会いにゆく。お前さんは馬鹿じゃが、本当は自分で思っておるより悪じゃないぞ。悪と善は紙一重じゃ。生まれ変わっても苦しみは付き物。生きると言う意味を噛み締めながら生きるがよいかの」
意識はそこで途切れた。