闇に生きるもの11
ミシェルはゴーレムを見据えゆったりとした姿勢で立っている。
軽く手を握り深呼吸をする。
薄く紡がれた目に優しく微笑を浮かべる唇は余裕があるようだ。
試験とあってゴーレムは攻撃してこないがプレッシャーを与えるためか地響きを鳴らし近づいてきている。
ミシェルの両手が上がりゴーレムの方向へとゆっくりと手を伸ばす。
「冷たき刃よ、眼前に佇むは悪しき魔物。神の代理人として命ずる。全てを凍らし貫け!」
瞬間、ミシェルの身体が輝きはじめたかと思われたと同時にゴーレムを地面ごと凍らせる。
ゴーレムは一歩を踏み出した姿のまま氷漬けにされた。
甲高い音と共に頭上から何本もの氷の刃が降り注ぐ。
ゴーレムはガラスが割れるような音と一緒に粉々に粉砕される。
氷漬けになったゴーレムが砕け、氷の粒が舞い散る幻想的な美しいとも言える光景にロレーヌを始め多くの者が見入っていた。
ただ一人……絶叫とも言える怒鳴り声を上げた人物がいた。
「こ、この馬鹿ものがぁぁ!!誰がゴーレムを粉砕しろと言ったぁぁ!!」
「学院長!落ち着いてください……生徒に怪我がなかっただけ宜しいではありませんか」
とっさに学院長と呼ばれた初老の男性を若い先生が止めに入っている。
ミシェルはというとロレーヌの方を向いて相変わらず微笑んでいた。




