闇に生きるもの10
完全に整備された王都には溜息がでる。まるで地球でいうヴェネツィアにでも迷い込んだような風景は何度見ていても飽きがこない。水路が多いわけではないが、雰囲気とでもいうのか。城をはじめ民家や教会、商業施設に様々な教育施設。どれをとっても外観の作りが凝りすぎている。
ハジメ……いや、ロレーヌが通うことになった王都立魔法学院もいい例である。
学院の校門を潜ると大聖堂を入り、二階が礼拝堂になっている。
その一階部分をそのまま突き進むと出口になり更に進むと校舎棟になっている。そのまま校舎棟には入らず右に進むと第二大聖堂が佇んでいる。今日の入学式が開催されるようだ。
中に入ると正面は壁一枚がステンドグラスになっており、この国の宗教である神の使いが民に教えてを説いている姿が描いてあった。
そして、ステンドグラスの前に天井まで届く彫像が鎮座している。
盾を持ち剣を高々と天に向かい掲げている女神像だ。
大聖堂というだけあって500人は収容できる造りになっている。
その席の前列にロレーヌは座り入学式の話を聞いている。
(どの世界でも、こういうのは退屈なんだな)
必死に欠伸を堪えていると涙目になってくる。
退屈な入学式も終わり、各々が席を立ち始める。
これから学力テストならぬ魔法技能試験があるのだ。今日の魔力技能試験の結果によってクラスがA〜Eまでに分けられるそうだ。
AとEで天と地の差は無いにしろ、やはりAの方に振り分けられれば優秀ということだ。
今回の入学生が100名。それぞれのクラスに20名づつだ。
(この世界でも力によってランクづけされるんだな。こういうのあまり好きにはなれないな)
ロレーヌは周りを見渡す。
赤い髪、青い髪、金に白と様々で黒はいない。黒に近い灰色の髪は所々見られるが黒髪に金の瞳はいない。
キョロキョロと自分と同じ者がいないか見渡していると肩を叩かれる。
「いかないのか?場所が分からないなら一緒にいくか?」
振り返るとそこには、金髪碧眼のイケメンがいた。長い髪を後ろで束ねただけだが、いかにもイケメン臭がする。
キリッと睨んでやるが、イケメンは怖気づくこともなくニカッと白い歯を見せる。
(おのれイケメンめ!爆ぜろ!)
「僕の名前はミシェルだ。よろしくな。君と同じクラスになるかもしれないし」
そういうと彼は手を差し出してくる。
「ロレーヌ・イニティウム・オリカルクムよ」
名前だけ伝えると彼はそのまま手を引っ込めイケメンスマイルで笑っている。
仕方がないのでミシェルに付いて試験のある訓練棟まで歩いている。ミシェルの性格は非常に明るいもので、こちらが無言でも話続けている。
「お、付いたようだな」
歩みを止め目の前を見るとそこにはローマのコロッセオに似た闘技場があった。
受付にいた教師に名前を伝え水晶玉のような水色の丸い石に手を乗せる。
「本人と認証しました。それでは控え室にて待機してください」
ミシェルも認証を済ませ一緒に控え室に向かう。
控え室に入ると闘技場の中が見えるようになっていた。
闘技場の中央には高さ3mほどの巨大なゴーレムが棒立ちしており、その目の前に赤髪の女性が杖をゴーレムに向け何かを呟いている。次の瞬間、女性の周りを魔法陣が輝き、杖の先にサッカーボールサイズの炎の玉が輝く。炎の玉は杖から物凄いスピードでゴーレムに向かって飛んで……いかなかった。ゴーレムの目の前で急旋回し女性の後ろ、観客席の上方である評価をしている教師側に飛んでいった。幸いにも教師に当たる前に透明な壁の様なものに吸収され消えた。
「緊張して制御ミスしたんだね」
隣でミシェルが苦笑いを浮かべている。
「そんなこともあるんだな」
「ミシェル。ミシェル・クルアムスはいるか!次だ!準備してくれ」
ミシェルが次の番だと教師が伝えにくる。
「またあとでね、ロレーヌ」
にこやかに去っていく後ろ姿もやはりイケメンである。




