プロローグ
ふと思ったんですが、チートあまりにも多過ぎません?いやふとした疑問なんですが…何故?
昔話をしよう、俺の祖先は勇者に討伐される運命にあった。どういう訳か勇者は神々に愛され、女にも好かれ、ハーレムを築いた。何よりチートというものを手に入れていた。知識無双もしていた。文明が発展するのは人間の国のみ、あまりにも不公平過ぎる。だからこそ人間族以外の種族は勇者という存在を忌み嫌っていた。主に男から嫌われていた。無論、俺も嫌いだ。歴代の魔王はチートというものをどうにかしようと引き剥がす技術を身につけた。そして現在、技術を受け継いだ俺は…
「魔王覚悟!」
「チートに頼るなアホがァァァァァァァァァァ!!!!」
「ゴブバアァァァァァ!!!!」
「リクヤぁぁぁ??!!!」
チートを引き剥がし、ぶん殴ったのだ。引き剥がしたチートは球体になり転がっていた。
「な、何故だ!俺の必殺の…」
「いやチートに頼んな。」
「おのれ魔王!卑怯な!」
「卑怯なのはお前。」
返せーというが卑怯なのはお前ら勇者な、なんでチート手に入れてんだよ、なんで神々から愛されてんだよ、なんで女にすぐ好かれるんだよ。意味不明過ぎるだろうが。
「というかデカすぎるだろうが魔王!」
「いや言うことそれか?」
「リクヤの力を奪うとは!卑怯だぞ!」
話全然通じてねぇぇぇぇ!!これ以上なんか聞く前に部下に追い出させるかと追い出させた。ちなみにチートは踏み潰した。引き剥がしたものを長く置いておくのは馬鹿らしいからな。
「これで何人目だ?」
「5人目では?」
「うっわ。」
勇者って異世界では有名な訳?こっちでは忌み嫌われる職業なのによくもまあなりたいってやつ居たもんだ。何も知らないからこそなりそうだがなぁ…
「…散歩してくる。」
「お気をつけて。」
魔王の座について約十年、名はカオス、白い髪、赤い瞳の魔王である。鍛えまくった結果筋肉がついてるのは気にしない方向で。
「じい様の言う通り勇者ってのはろくでもねぇな。異世界にいる連中もろくでもねぇのか?全員そうじゃないってのは分かってるがそう思ってしまうのがなぁ…」
長い間勇者から受けた仕打ちを考えればそう思ってしまうのも仕方がない。全員が悪人ではないように善人がいると信じたいが…
「勇者の被害は?」
「また盗難に…」
「盗まれた地域に寄付しておけ。」
「ま、魔王様…」
リザードマンは目を輝かせていたが…んな事言われてもなぁ…俺は普通にしてるだけだっての。手入れされた庭も勇者たちによりボロボロ。こっちの被害も考えもしやがらねぇ…
「婆様の好きだった植物が折れてやがる。」
「早急に手入れします。」
「その前にけが人が居ないか確認しろ。」
「はっ!」
「流石は魔王様。」
「勇者をぶん殴る程の腕力と統率力の持ち主!」
男からの尊敬の眼差しを向けられているが…俺としては悲しい。女にちょいとモテたいんだがなぁ…最近のトレンドとやらは勇者らしい、おのれ勇者。
「…ここも…か。」
両親が大切にしていた植物園もまた被害にあっていた。外壁が壊れ、中にある植物は折られていた。ここで本を読むのが好きだったんだがなぁ…
「にゃー…」
「…ん?」
小さな鳴き声が聞こえた。思わず声が聞こえる方へ行くと身体を震わせる小さな生き物が居た。長年生きているが見たことがない。
「…にぃ…」
今にも死にそうな生き物を抱え、獣医の元へ連れていく。小さな命を見捨てるほど魔王は落ちぶれてなどない。
「猫ですな。」
カエルの魔族である獣医が言う。待てねこ?ねことはなんだ?聞いたことがない。
「…ねこ?」
「異世界の生き物ですな。」
「…あー。」
異世界の生き物か…人間ではないだけマシか。にぃにぃと鳴く猫は目を開けてない。
「子猫という生き物で…ふむ、何処かに書物があった筈…」
「探す。」
「魔王様は座ってください。その子の為にも。」
「分かった。」
こねことやらを見ている、俺より小さく、愛らしい生き物。異世界にはこのような愛らしい生き物が居たのか。
「おお、ありましたぞ。猫風邪という症状らしいですな。薬の作り方も書いてあるので今処方しますぞ。」
「感謝する。」
「いえいえ、魔王様のご家族になるやも知れぬ生き物ですからなぁ。」
…家族、かぁ。まだイマイチ想像出来ん。俺の家族は生まれてまもない頃、勇者たちに殺された。復讐する暇などなかった。統治しなければ民たちは苦しむ一方だからだ。だからこそ…
「にぃ…」
「…小さいなお前は。」
ああ、本当に小さい。暖かくて、白くて、愛らしい生き物…ねこ。異世界の生き物。
「魔王様、猫風邪の薬ですぞ。」
「ああ、金は…」
「いえいえ大丈夫ですぞ。」
「だがなぁ…」
「書物をくださる魔王様に金など取ってしまったらバチが当たってしまいますぞ。」
「…はー。」
俺の民たち頼もし過ぎるだろ。こねことやらを獣医が持ってきたケージとやらに入れて、城へと戻っていく。民たちは手を振り見送ってくれる。
「…名前…か。」
もし迎え入れるのならば考えなければならない。だが…覚えやすくて、可愛らしい名前。
「…ホワイト。」
ホワイトが一番良い気がする。俺は猫風邪とやらが治るまで目薬をさしていたのだった。無論、仕事をしながらだが。
偶にはギャグとほのぼのがあっていいじゃないか。




