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嘘をついてはいけない

 俺を守るための提案だと言うことはわかっている。

 だが……ぐぐぐぐぐ。


「そんなにイヤですか?」


「あ! いえいえいえ! 決してそう言うわけでは!」


 顔に出ていたらしい、図星を突かれた。

 ただ、観念するしかない。これが嘘をついた代償、因果応報だ。


「最初お風呂から出てから見た時少し不思議に思ってましたが、ベッドが二つあったのって」


「ここは騎士団が用意した騎士用の家なのですが、前までは一緒に住んでいた人がいたんです。私やあなたと同じ雷属性の剣士が」


「その人はどこに」


「別の部署に配属された際に引っ越しました。街の反対側から反対側へ」


「そんなに広いんですかこの街は」


「ええ。端から端まで行こうと思ったらお弁当を持った遠足になってしまうくらいには」


「へー……ところで、今どこに向かっているんですか?」


 ルームシェアをする。

 そう言う話になってから、騎士団の詰め所より出て家に向かう途中。ルミノさんの向かっているのは家の方向ではなかった。


「あなたが着ていた衣服を、近所の洗濯屋さんに預けていたんです。そろそろ乾く頃かと」


「あ! ほんとですか⁉︎」


 俺の服!

 よかった、さっき雷を纏って走った時服が邪魔に思ってたんだ。やっぱり俺はあの服装が一番だ。


「そんなに嬉しいですか?」


「はい! 戦う時、雷を扱う時に最適な服装ですから」


「え……そうなんですか? あんなほとんど裸の格好が……?」


「だって雷と熱さと痛みを感じた方が気合いが入るじゃないですか」


「いや同意を求められても知らないです、と言うより考えがこともありませんでした。雷は鎧にも纏えますから、可動域の拡張はいくらでもできますし」


 鎧に纏う?

 あ、そうか。剣や斧に纏わせられるのなら、着ている服にだって雷を纏わせることができるはずだ。

 というか火の町へ行く道中、火村(ひむら)君からそんな話を聞いたっけ。火を全身に纏う時、服にも火を纏わせれば燃えずに済むと。


「ドMのようですね、自身で出した雷で痛みを感じて興奮するとは」


「あの、言い方。それに違いますから」


 服を預けていた、代わりに洗濯と乾燥をしてくれるお店から服を返してもらった。

 そしてその店の部屋を貸してもらって、服を着替えた。

 ビキニとスカート、そして歩きやすいがっしりとした靴。

 うん、やっぱり俺はこれがいい。


「野生児じみた価値観の違い。やはり森で生まれたというのは本当みたいですね」


△▼△▼△▼△▼

 家のことを色々と聞いた。

 着替えは一旦ルミノさんのを借りる事となり、いつかは服屋で揃えようという話になった。


「そう言えばお金は……ああ、森でモンスターを倒したと言っていましたね。それなりにはありますか」


「はい。えっと今は……」


 確認してみると三万五千とちょっとになっていた。

 天狗の雷斧(シエルドッグ)を買ってから、向こうとこっちでモンスターを倒しまくったおかげで、斧を買った代金分を取り返していた。

 これなら生活も問題なさそうだ。


「大丈夫そうです」


「その左腕に巻いている腕輪は一体なんなんですか?」


「ああこれは、時間を確かめるものであると同時に、今持っているヴィータの数を確認するためのものでして」


「ヴィータは脳内ですぐに確かめられるはずですが……」


「俺はそれができないので」


 異世界の現地にいる人特有の能力で、ヴィータを思い浮かべるだけで保有数を確認できる。

 しかし転移者である俺たちはそれができないため、こうやって腕時計の機能で確かめている。


「うーん、まあ金銭面は心配しなくても大丈夫ってことですね」


「はい。お心遣いありがとうございます」


「では、次の問題。呼び方はどうしましょう」


「呼び方?」


「一緒に住むにあたっての名前の呼び方や話し方です。このまま敬語で行きますか? それとも砕けた感じで、ニックネームとかつけます?」


 ニックネームか。

 理事長から称号として〈雷神〉と付けられてはいるが、ニックネームとしては親しみやすくない。


「俺は、呼び捨てでいいですよ。イナカミでもライコでも」


「話し方は?」


「前住んでた人とはどんな感じだったんです?」


「年も同じで騎士学校でも同期。気心知れた間柄だったので、砕けた感じでした」


「でしたら、以前と同じようにそれで」


 その方がルミノさんもラクだろう。

 この家では彼女のやり方に合わせよう。


「ん。わかった、よろしくね。ライコ」


「はい。よろしくお願いします」


「……あなたは砕けないの?」


「ごめん。これでいいかな、ルミノ」


「よろしい」


 優しい彼女は俺の呼び方に、腰に手を当て胸を張って頷いた。ニコニコとした笑顔で、とても嬉しそうに見えた。


「その、やっぱり急に同居することになって迷惑だったりする?」


「ううん、一人でさみしかったとこ」

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