2 マリエール
やっと草原を抜けた。マリエールとベンチに座ってマリエールの昔話を聞いた。
2 マリエール
何度かの異世界討伐で草原を抜けた。ようやくという感じだ。マリエールは街を案内してくれた。川も多く、船が行き交っている。教会の鐘が鳴り、石造りの建物が並ぶ。まさに中世ヨーロッパだ。
2人は公園のベンチに腰掛けた。恋人同士に見えなくもないと思う。現に羨ましいそうに見ている人達がいる。マリエールは言った。
「あなたの事ばかり聞いて私のこと話してないわね。今日は私の話しするわ。私も地球人よ。出身は違うわね。私生まれも異世界に来る前もアメリカだから。人種は違うわね。今も特定転移拠点はアメリカにあるわ。もう家から移動させているけどね。私が始めてここに来た時アメリカは独立戦争をイギリスとしていたわ。」
300年以上前か。ワシントン大統領の時代だな。
「いろいろ大変なことがあったけどあなたほどは死にそうにはならなかったわ。割と早く魔法が身についたし、特定転移拠点も見つかったし。でも大変だったのは結婚話が持ち上がった時かしら。特定転移拠点を変更して分身体を回収したわ。あれでマリエールは世の中から消えたわ。その後もしばしば地球へは観光に行ったけどお金が変わるのが困るわね。」
親の死にめに会えないのは辛かったろうな。俺もどうなるか判らないか。
「分身体はこの星にも地球にも何体か置いてあるし他の星にも分身体はいる。分身体はきみが来るまで彼らだけが情報を共有出来る相手だったし、300年以上有った自分の中で技術は進む今の地球よりも遥かに進んだ技術がある。ただそれを発表することが人類のためになるかどうかが判らないが。」
これだけ高い能力を持ち300年以上生きた彼女に不可能はないだろう。
「だからその技術は私ときみのためだけに使おうと思う。きみには追々伝えていくから、地球との繋りのあるきみが発表するといいと思えば発表すればいい。」
同じ異世界転移者とは言え実力は雲泥の差だ。現に今している会話だって日本語だ。マリエールは理解がスムーズに進むからというが逆に言えば万能言語の力があってもこの世界の言葉はユウジには難しいということだ。マリエールと日本語との関係は不明だが、300年以上万能言語を使い続ければどんな言葉も万能だろう。
「失礼かも知れませんけどマリエールさんはどうして私と同じ年頃何ですか。」
マリエールは聞かれたくないことを聞かれたという顔をした。
「変幻自在の魔法を解けという意味だな。しかし理由があってこの姿をしている。解くのは一瞬だけだ。」
次の瞬間、だぶだぶの服た着た7歳ぐらいの美少女が出現した。
「これで満足か。」
ユウジはコックリ頷く。
「見ての通りの姿だ。冒険者にもなれんだろ。6 歳でここに着た。
300年の内延べ1 年は地球に居たから7歳ぐらいの年頃に見えるだろうが今は地球にも縁者もない。あまり行けなくて年が取れぬ。」
マリエールは子どもだった。そこに何かとっても微笑ましいものを感じた。
ユウジはここで特定転移拠点へ転移した。
マリエールの本当の姿が7歳と知ってびっくり。年取れない悩みもあるのだと知る。