3 気まずい
いま、そこまでのことを打ち明ける必要があるの?
それもほぼ無表情で。
挨拶の返事をした時も、荷物のことを尋ねた時も、口だけが動いている感じ。
笑みのひとつも零さず。
いや、それだけのことをして置いて逆に笑みをこぼすのも怖いか。
その無機質な印象が何だかとてもあざといのよね。
年齢的には少年院から出所したばかりよね。
明るく元気に! なんて振る舞えるわけはなかったのよ。
でも私は犯罪歴といっても、万引きや窃盗の類だとばかり思っていたから。
まさか、人命を奪っていたなんて思いもしなかった。
私がそもそも声など掛けたばかりに。
もしかしたら、色々と聞かれるかもしれないと思っての言動だったのかな。
A子はそのようにB子に打ち明けていく。
『「そんなに気にすることないよ、罪は償ったんでしょ」などと言えるわけもなく。
私はこの子と同じ職場でこれからどう応対していけばいいのよ。
たしかに配属部署はちがうけど。
私はもう……気軽に声を掛けちゃったのよ』
「──気まずい! 気まずいったらありゃしないわよ!」
「それは、へこむわね。えらいこと聞かされたね。でもまだ社交性がないだけよ、きっと」
「社交性というより、思いやりの気持ちがないのかしら。そんなこと初対面の人間に暴露したら、相手が戸惑い、かえって傷つくことぐらい分かりそうなのに……」
A子は憤りを感じていた。
相談に乗った女性B子は、彼女の複雑な胸の内を察して。
それなら早いとこ、社長に相談をすることだと軽く肩を叩いてやった。