2 告白
「なにがあったのよ?」
「それがね、第三倉庫に入ったらその彼がいて、私も偏見なんて捨てなきゃって」
少年に気さくに挨拶の声を掛けたという。
彼女の声に振り向き、彼も挨拶の返事をした。
少年は棚の整理をしていた。
女性職員に「この配置で合っていますか?」と気軽に尋ねた。
女性は彼の犯罪歴の詳細をまだ知らなかった。
無論、そのようなことを聞き出すつもりなど、これっぽちも持っていなかった。
彼の軽快な言葉のチャッチボールに気前の良い返事を返した。
「あら、整理整頓が上手ね! 私なんて運動神経ゼロだから荷物の整理をしているうちに疲れてしまって……一息ついたら、置いた荷物の数をもう覚えてないのよ」
そのようにいい、照れ笑いを見せ、彼を励ましたつもり。
運動神経ゼロはさすがに言い過ぎね、と。
その一言が、余計だったことを部屋を出て行くまでに猛省させられたのだ。
彼は彼女のお上手に、こう返してきた。
「運動神経なんてちっとも良くありませんよ。褒められるほど良かったのなら、無免許で操縦したセスナ機を飛行場に墜落させて、旅客機に搭乗中の客の列に突っ込んだりしていませんし。そのせいで多くの負傷者と死者をひとり出してしまいましたから」
「……あっ…………そ、そうだったのね……」
『そうだったのね、じゃないわ。
何もそんなに馬鹿正直に洗いざらい打ち明けなくても、いいじゃないの。
死者がひとり……いらっしゃったのね。
私はその一瞬で、後につづける言葉を失ってしまった。