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10  君の傍での暴露


 少年の母親であった美しき女性は私の初恋の相手であった。

 彼の母親は本来、私の恋人だったのだ。

 彼は、彼の父親には本来私がなるはずだったのだ。


 あの事故が起きた日、あのセスナ機を整備していたのは私だった。

 ああそうだ。

 私なのだ、私の整備ミスなのだ。私の整備ミスで起きた事故だったのだ。


 私から生涯の宝物である恋人を奪った、あいつは私の親友でもあった。

 だからといってわざと整備ミスを起こしたわけではない。

 それについては本当にただの偶然だったのだ。

 だが親友の命は私が奪ってしまった。そのことはとても言い出せなかった。

 言い出す勇気などなかった。


 2人の忘れ形見であるあの子がいつかこの真実を知る時が怖いのだ。

 だからこうして傍に置いて彼の動向を見張っているというわけだ。


 もしも彼がそのことに感づいてしまったら私は彼のことも──


 私の人生はその後好転している。

 彼の父親の生命保険金と母親の生命保険金でこの会社を興した。

 身元引受人なのだから当然私が受け取る権利があっただけの話である。

 私にはすでに妻子もいる。子宝に恵まれ7人家族である。

 社員たちもかわいい家族である。

 年商だって今や億単位だ。私の実力で業績を伸ばしてきた会社なのだ。


 決して失うわけにはいかない。


 彼が父親の死因の真実を知ってしまうのなら大変気の毒ではあるが彼にも父親と同じ運命を辿ってもらうことになる。


 その時は偶然を装うが、殺意を持って故意にやってやるのだ。

 彼が真実を知ればすべてを奪われるのだから、私にだって彼のすべてを奪う権利はあるはずなのだ。


 これ以上私から何も奪わせはしない。

 愛した恋人も。今の家族も、名誉も地位も財産も。

 少年たちから浴びせられる賞賛の声、絶えない感謝の声。その優越さえも。


 君を傍に置きながらこの心の中で謳う

『血沸き肉躍る永久非公開の暴露』が最高のひとときに変わるよ。


 少年たちよ。迷える子羊たちよ感謝するのです!


 君がそうやって父親の罪を償い続ければ生きることだけは許されるだろう。

 やがて世間も同情に変わる日が訪れる。


 願わくばどうか生き続けてくれたまえ!

 討つべき仇が傍にいることも知らずに気の済むまで償い続け給え!






 (終わり)


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