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第56話 ハッピーエンド

 ──こうして、小波実幸と春松夢の活躍により、ミヴァリア王国は、いえ、この世界は、無事に平和を取り戻しました。

 人々は今までの行いを反省し、心を入れ替え、魔物たちと手を取って生きていくことを決めました。すぐには無理かもしれません。しかし人々はそれが出来ると信じました。何故なら、信じられないことをした勇者たちが、優しさと勇敢さがあれば、出来ないことはないのだと教えてくれたからです。

 ミヴァリア王国の城の礎には、2人の勇者の名が刻まれました。2人のことを、永遠に忘れないためです。



 こうして人々は、いつまでも、いつまでも、平和に暮らしていきましたとさ。




 おしまい。


 ──


「……何だコレ」

「わー!! 皆さんが平和に暮らしていけたなら良かった!!」


 戸惑う俺に対し、実幸は手が痛まんばかりの拍手をしていた。スタンディングオベーションでもしそうだ。


 ……えーっと、ミヴァリア王国を後にし、ピンク色のモヤに入った俺たちは、アテもなくさ迷い歩いていた。そこには何もなかった。入り口も、出口も。俺たちを導いたはずの神もいなくて、お望み通り低評価フィードバッグを送ってやろうか、なんて本気で考え始めたところで……冒頭のあれが流れ始めたのだ。なんか、絵本みたいな気軽さで。


「……今のは……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってことでいいのか……?」

『ええ、そういうことです』

「うわぁっ!? びっくりした!?」


 突然背後から声が掛かり、思わず俺は大声を出してしまった。振り返ると、そこには神の姿があって。


 神は先程までとは違って具現化していて、その姿がはっきり見える。そしてなんか、腕を組んで頬を膨らませ、俺のことを睨みつけていた。


『こちらはさっきのその後VTRを用意していたところだっただけだというのに……悪いフィードバッグを送ろうとするだなんて!! 小波実幸と違い、貴方は非道ですね……春松夢!!』

「いや、そんなVTRなんて用意してるなんて考えないだろ! それなら、『今用意してるので待っててください』とか、一言言えよ!!」

『あー、最近の人間は気が早くて困ります。昔はもっと寛大な心を持っていたというのに……』


 マジで悪いフィードバッグ送ってやろうかな。


 俺が心の中でそう言うと、神の表情がまた不服そうに動いた。貴方こそ寛大な心を持ってほしいのだが。


『……まあそれはともかく。貴方たちのお陰で、また数々の人間が救われ、物語はハッピーエンドで終わりました。素晴らしい功績です』

「えっと~……どうも?」


 神の言葉に対し、実幸はキョトンと首を傾げる。当たり前だ。本人にとっては、至極当たり前のことをしたに過ぎないからである。


 暖簾に腕押し状態に、神は静かにため息を吐いた。なんか俺たちのせいでこのひと、だいぶやつれた気がする。まあこの調子を崩すつもりはないが。


『……それでは、貴方たちの救った国の今後は見せましたし……次の世界への道も繋ぎました。今後どうするかはもう伝えてある……えーっと、あとやることはない……はず……』


 神はなにやら指折り数え、何かを確認していた。どうやら何かやり残しがないか思考を巡らせているらしい。事前になんか、チェック用紙とかでも作っておけばいいのに。

 そして確認が終わったのか、コホン、と彼女は咳払いをした。


『……大丈夫でしょう。まあ、何かあれば……自力でどうにかしてください』

「適当~」

『貴方たちの身に着けた魔法は、この先の〝世界〟でも受け継がれます。……大丈夫でしょう?』

「それは……まあ、確かに、大丈夫そうだな」


 リセット型じゃなくて、セーブ型なのか。魔法が今後も使えるということは……今後もチートであり続けると……。


 神は軽く手を振った。するとその手の先に……何か、夜色に光る淡いモヤが現れる。次はあそこに入れ、ということなのだろう。


『次がどんな世界で、どんな物語が紡がれることになるのか……それは、私にも分かりません。それこそ、神のみぞ知る……そんな事柄です。あ、ここで言う神とは、私よりさらに上の神です』

「まだ上がいるのか……大変だな……」


 悪いフィードバッグを恐れていた理由もそれなのだろう。あくまで彼女は部下なのだ。思わず同情してしまう。

 実幸が神の頭をヨシヨシすると、神はその優しさに咽び泣いていた。やはり緊張感がない。


 神は泣き止むと、気恥ずかしそうに咳払いを1つする。そして改めて俺たちを見つめた。


『貴方たちの力で……ぜひ、ハッピーエンドに導いてあげてください』

「はい!! 張り切っていきまーすっ!!」

「……まあ、ぼちぼち頑張ります」


 やる気十分な実幸に対して、冷めている俺。まあ、この温度差くらいできっと丁度いいのだ。


 俺たちは新たに現れたモヤの方へと、足を向ける。

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