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第28話 国王からの呼び出し

 数日間、実幸の護衛騎士にやったみたいに色んな騎士を買収して情報収集をしていて、なんとなくの事情は察せた。



 隣国、ヘイヴィーシュラン王国が最強の魔物──ウェダイアンの怒りを買ってしまったこと。

 俺たちは最終的にウェダイアンの退治を目標とされていること。

 そうしてミヴァリア王国を発展させ、様々な国の上に立つこと。

 ここまで言うと俺たちが協力してくれないと考えているのか、この情報は伏せられていたこと。



 本当に色んな騎士から話を聞いたから、裏付けは取れている。

 俺は舐められているのかなんなのかは知らないが、クッキーをあげたらあっさり口を開いて、聞いてもいないことを喋ってくれた。とある騎士は調理場の女の子に片思いしてるとか。知らねぇよ性格直して出直せ。


 実幸には言っていない。……少なくとも、ウェダイアンっていうヤバいやつと最終的に戦うことになるってことは言った方が良いと、分かってはいるんだけど。……どう言おうか迷っている。


 あっさり「大丈夫」なんて、あいつは言ってしまいそうだから。

 ……それが困るんだ。


 その時俺は、どんな顔をして、どんな言葉を返せばいいんだ。



 まあそれは見送って考えるとして。と、その後も修行に行かない時間は情報収集を進めていった。どんな場面でも、1番新鮮で信憑性のある情報を持っている者が優位に立つ。常識だ。


 クッキーを片手に、時には実幸の名前を出して情報を吐かせる。あいにく俺は善人ではないので、手段は厭わない。


 ……そんな風に自由にやっていたせいかもしれない。



 俺はミヴァリア王国国王に、呼び出されてしまった。



「今まで全く会ったことないのに、急にどうしたんだろうね~。魔法も満足に使えるようになったとは言えないし……」

「…………………………」


 隣を歩く実幸は呑気なものだ。俺は黙って、それには答えなかった。何故。分かるだろう。呼び出される心当たりしかない!!!!


 俺が独断で行っている情報収集だ。その話をされると、実幸にバレる。俺や、この国が隠していることが……。

 ……それは、すごい困る。


 でも実幸だけ帰すっていうのも変な話だし、2人で来いって呼び出されたし、実幸は行く気満々だし……。ああ俺の頭が弱い。


「ゆ、夢、大丈夫? なんか顔色悪いよ……? 私だけ行く?」

「だっ、大丈夫だ。大丈夫……。ちゃんと俺も行く」

「そ、そう……無理はしないでね……」


 食い気味で答えた俺に、実幸は若干ドン引きしているようだった。だって仕方ないだろ。実幸1人なんて不安過ぎる。そりゃ、酷いことされるってことはないだろうけど。実幸の方が期待されてるわけだし。


 そうこう話している内に、先導していた実幸の護衛騎士が足を止めた。目の前には大きな扉……いやこういう扉って、ラスボスステージのところじゃ? 来るところ間違えてるか、俺たちが今から会おうとしているのがラスボスなのか、その2択だと思う。


「……魔王とか出そうだね……」

「言うな、実幸」

「……オルカ陛下、勇者である2人を連れて参りました。入室の許可を」


 背後で繰り広げられている俺たちの会話はとことんスルーし、護衛騎士が扉を叩く。すると中から、入れ、と声がした。


 護衛騎士は小さく深呼吸をしたように見えた。それから、失礼します、と冷静な声を出し、おごそかな扉を開く。……重そうに見えるが、1人で開けられるということは、軽いみたいだ。


 余計なことを考えつつ、俺たちは部屋の中に足を踏み入れる。


 中は、その厳かな扉に似合うような、豪華な部屋だった。宝石をふんだんに使っているとか、そういう安っぽく見える感じではなく、「良い素材を使っているのだな」と一目で分かるような家具。頭上を見上げると、煌びやかなシャンデリア。外が見える窓は床から天井まで伸びていて、ただでさえ広い部屋が更に広く見えた。あのバルコニーで朝食でも取ったら、それはそれは幸せだろう。


 そんな評価をする俺の横で、実幸が「意外と地味」なんて零したので、反射的に頭を引っぱたいた。何するの!! 痛い!! と喚く実幸は放っておいて、俺は部屋の真ん中に視線を向ける。


「……初めまして。オルカ陛下」

「……よく来てくれたな。危機を穿うがつ勇者2人よ」


 部屋の真ん中にあるのは、ベッド。そこに横たわる1人の老人。……その体から、誰かが浮かび上がっている。それはまさに、そこで横たわる老人で。……薄く、その体の先に景色が見える、その姿はまるで霊体だが、きっと違う。

 ……これは、魔法だ。この国の王だという魔法使いである、この老人の。


 実幸はこういった怖いものが苦手なので、老人に気づくや否や、俺の後ろに隠れた。失礼に当たるんじゃないか、と思うのも束の間、その老人は笑う。


「驚かせてしまってすまない。だがもう体が動かないのだ。こうする他、君たちと目を合わせて話をすることは叶わないもんでな」

「い、いえ……大丈夫、です」


 実幸は恐る恐るといった調子で答えるが、俺の背中から出てきそうな様子はない。まあパッと見、幽霊だもんな……。

 後ろから出させようかとも思ったが、そのままで良い、と言われたので、素直に厚意に甘えることにした。


「さて、改めて……私はオルカ・ミヴァリア。この国を治める国王であり、魔法使いだ」

「……春松夢です。背後にいる彼女には劣りますが、魔法使いです」

「え、えっと、小波実幸です……すごい魔法使いみたいです……」


 やはりこいつ、すごいという自覚は全くないらしい。


「まずは若き2人に謝罪したい。……我が国の勝手な要望で君たちをこの国に連れて来させ、更に魔法の修行をさせていることを。……私がこんな状態でなければ、君たちの手を煩わせることもなかっただろうに……」

「そ、」

「そんなっ、いいんですよっ!! 顔上げてくださいっ!!」


 老人……オルカ陛下は深く頭を下げた。緊張感の走る部屋の中、慌てて口を開いた俺より先に、実幸がすぐにそう言う。お陰でオルカ陛下も顔を上げ、部屋の中に走った緊張感は解かれた。


 ……まあそれでも、国王に頭を下げさせるなんて、という視線を感じなくもないが。


「困っている人がいたんです。力になりたいと私たちが思ったんです。私たちは、自分の意思でここまで来ました。……だから、謝らなくても大丈夫です!!」


 実幸が真っ直ぐな視線で、笑顔も携えてそう言う。気づくと俺の背中から出ていて、そのことに気づいたのか、言い終わるとまた俺の背中に隠れてしまったが。


 それを見届けてから、俺はオルカ陛下の目を真っ直ぐに見つめ、頷く。俺たちは、自分の意思でここに来た。


「……深く感謝する。心優しき勇者たちよ」


 オルカ陛下はそう言って一度目を伏せる。ふーっ、と深く息をつくと、再び目を開いた。


「それで、ここに呼び出したそのワケだが……ユメ。君は、独自でこの国やその周辺のことを、調査しているね?」

「……」


 うっ、やっぱそこ突かれた。


 黙っている俺に対し、いち早く反応したのは実幸で。どういうこと? と後ろから問いかけてくる。

 俺は小さくため息を吐く。もう、腹をくくるしかないのか……。


「……はい。失礼ながらこの国は、私たちに重大な隠し事をしているように思います。ですが私も彼女も、見知らぬ土地の安全のために死ぬなど、そういったことは全くもって望んでいません。……話してもらえないのなら、自分で調べるしかないと思いました。彼女の……私たちの身を守るためです」


 そこまで言ってから、背後に微かに目をやる。


「……これは私の独断で行ったこと。彼女は一切関係ありません」

「!」


 実幸が息を呑む音が聞こえる。しかし俺は構わなかった。


「誰であろうと、生きるために必死なのは同じでしょう。……オルカ陛下の身辺とも言えるようなところを、勝手に嗅ぎまわるような行為に身を投じたのは、申し訳ないと思っています。ですが、間違えたことをしたとは思っていません」

「貴様、陛下を前に無礼だぞ」


 そこでようやく、陛下の枕元に立っていた偉そうな騎士が口を開く。俺たちを取り囲むように立っている騎士も、その剣を構え、こちらに向けて。


「……俺たちは、()()()()()をしたいだけだ。撤回する気はない」


 正しいことって、自分でも分かってないくせに、よく言うよな。


 心の中に住むもう1人の自分が、そう囁いたようだった。


 ……そうだな、分からない。

 でも俺は、実幸が正しいと信じていることを、正しいことだと信じたい。


 だから、思う通りに(信じさせ)やらせてやりたい(続けてほしい)


 騎士たちが動く。だが俺は、オルカ陛下を見つめ続けた。





 彼は、動かない。

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