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第26話 魔物とお話タイム

 可哀想なので、実幸も巻き込むことにした。実幸にも魔物の言葉が分かるようになる魔法を使わせた。……え、可哀想って、誰が……だって? そんなの、俺に決まってるだろ。


『──よわいはもう300来たあたりで数えるのをやめてまいましたけどねぇ、とにかくぎょうさん長い月日を生きて参りましたんやけど、まさかニンゲンに助けてもらえる日が来るとはねぇ。しかもこんなべっぴんさん2人に!! 生も、捨てるもんじゃあらへんねぇ』

「夢、魔法解いていい?」

「駄目だ、お前も道連れだ」

「ひぇぇぇぇ……」


 こんな調子でギャラゴラウスは1人で喋り続けている。「喋る相手がいる」ということが恐らく嬉しいのだろうが。それにしてもうるさい。マジで。


 ……まあ、俺たちより後方で、ジルファ先生が耳を塞いでいる。どうやら彼には、この言葉の1つ1つが全て、叫び声として聞こえるらしい。きちんと言葉として聞くことの出来る俺たちの方が、マシなのだろうか。


 ……いや、鼓膜の死を取るか、精神的な疲弊を取るか、だな……。


 にしてもこのエセ関西弁とエセ京都弁足して2で割ったこいつ、いつまで喋り続けるんだろう。


「……えー、ギャラゴラウスさん~? お話してもよろしいでしょうか~?」

『ん? ……ああ!! これは失敬、あっし、少々()()()われちまうんですよぉ』

「……いらち????」

「……落ち着きがないとか、せっかちとかいう意味だな」


 どうして俺は異世界まで来て関西弁と京都弁の解説をしないといけないんだ。


「ギャラゴラウス……標準語で喋れないか」

『標準語……? あっしにとってはこれがフツウなんよ』

「あー分かった分かった……〝俺と実幸には標準語で聞こえるようになーれ〟」


 俺は杖を一振りして唱える。最初からこうすれば良かった。連続で魔法を使ってしまったせいで……あとは、マシンガントークを聞かされ続けたせいで(たぶんこっちの割合が多い)疲労感がすごいが。


 魔法をかけられたギャラゴラウスは一瞬キョトンとしてから、再びその大口を開き。


『……あー、あー、テステス。標準語? に聞こえていますか?』

「……うん、たぶん平気だと思う……」


 たぶん本来だったらここは、「聞こえてはりますか?」とか「聞こえとる?」と言われるのが正解(?)だと思うので。


 俺は実幸の脇腹を肘でつつく。それに対し、実幸はハッとしたように目を見開いてから。


「それで、ギャラゴラウスさん……いくつか聞きたいことがあるんですけど、よろしいですか?」

『はい、大丈夫ですよ。何でも聞いてください』


 ……あれ、おかしいな。エセ関西弁とエセ京都弁を足して割る2する口調が鬱陶しかったはずなのに、標準語になるとそれはそれで違和感がすご……。


「えーっと……人間について、どう感じていますか?」


 恐らく実幸は質問という質問を、特に考えていなかったのだろう。あからさまに即興の質問を投げかけた。


『ニンゲンについて……ですか? そうですね、生きるためには仕方ないとはいえ、食べてもあまり美味しくはな……』

「味は聞いてない!!!!」


 俺は思わず盛大にツッコむ。こいつ、人のこと食べたことあるのか。まああるか……そういう生態だもんな……。花を綺麗だと感じるのなんて、人間くらいだろうし……。


『ええ、じゃあどういうことですか』

「……人間の動向とか? 何か感じることはあるか?」

『動向、ですか……私はここから動くことは出来ませんから、あまり知ってることはありません。来たものを食う。それだけの生活です』

「……それもそうか……」


 ギャラゴラウスは地に根を張り、そこから動くことが出来ない。つまりここから見える景色以上のこと、この辺りで起こる以上のことは、知らない。


『ですが、この根から他の同種との会話は可能ですよ。そちらに聞いてみましょうか』

「えっ、そんなこと出来るのか!?」

『ええ、出来ます。この辺りは人間が増えたから、種はそっちに飛ばさない方がいいとか、ここの土壌はとてもいいから繁殖させようとか……そういった情報交換をしています。我々がなかなか絶滅しないのは、そういった情報収集を怠らないからです』

「へぇ……」


 ジルファ先生が聞いたら飛んで喜んで、そのまま失神でもしそうな情報だな……。どういうわけか絶滅しない、ってさっきジルファ先生が言っていたってことは、魔物の生態の研究も、そこまで進んでいないんだろうし……。


 じゃあ頼む、と俺が言うと、ギャラゴラウスは頷いた。……そしてその場でゆらゆら揺れ始める。なんだそのモーション。そのダンスみたいなの、必要なのか? ていうか、こう見ると本当にダンシングフ……はい黙ります。


 俺が心の中で1人コントをしていると、ギャラゴラウスの動きがピタリと止まる。どうやら情報収集が終わったらしい。


『……どうやら最近、各地で他の魔物の動きが活発になり、ニンゲンたちはとても疲弊しているようですね』

「……」


 一応それは、聞いていた話だ。魔物たちサイドから見ても、同じであるらしい。

 ……いや……。


()()()()()()?」

『はい。それがどうか……?』

「魔物の数が急増した、じゃなく?」

『いえ、魔物の数はそこまで変わっていませんよ』


 俺と実幸は思わず顔を見合わせる。聞いた話だと、魔物の数が急増したって……でも魔物の数は増えていない……?

 活発になったのを、数が増えたと勘違いしただけかもしれない。その可能性もあるが……。


 ……何故だろう。そんな風には、どうしても思えなかった。


 俺はそれなりに冷遇されて、その恨みみたいなものが、そう思わせているだけかもしれない。でも……あの国は、何かを隠している気がする。俺の直感がそう告げている。いや、アテになるかは別として。


「夢……?」


 実幸が心配したような表情で俺の名を呼ぶ。俺はそれを見つめ返して……何も、言わない。

 ……憶測で物を語るべきじゃない。


「……なんで魔物は最近から、動きが活発化しているんだ?」


 再びギャラゴラウスの方を向き、更なる問いを投げかける。するとギャラゴラウスはあっさりとした口調で。


『とある国のニンゲンが、魔物の中でもトップクラスの──とても強い魔物に危害を加え、怒りを買ったため、他の魔物も躍起になっているようです』

「……!? その国は……?」

『さあ……そこまでは分かりません』


 ギャラゴラウスは肩をすくめる。いや肩がどこかは全然分からないが。たぶんここが肩だろうな、っていうところをすくめたように見えただけだが。


『ですが、ここからそう遠くはない国であるようですね。ここから見える城の統治する国か、もう少し離れたところにある国か……』


 ギャラゴラウスの言葉と、その視線を追うように、俺たちも顔を上げる。


 その先には城が……俺たちが召喚された、ミヴァリア王国がある。


 ……おいおい、ただの魔物退治……っていうわけにも、いかなくなってきたぞ。






蛇足


 ジルファ先生にギャラゴラウスの生態を伝えたら、めっちゃ喜ばれた。興奮でぶっ倒れそうになっていた。

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