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2夜目 

やっと2話目です。

    やらかした。


目が覚めて周りの状況を把握して思った。

明らかに、私、浮かれてた!!


白銀の魔王にラギとその仲間たち。

踊り出したいくらいのハイテンションになってしまった。


 無謀な事をして、とても反省している。


早くシオンさんに謝らなければ。


彼は笑って『目的は達成した』とは言っていたけれど。

 ゲーム通りの白銀の魔王だったら、間違いなく私は死んでいた。


優しく見えただけで、シオンさんは世界を滅ぼそうとしていたかもしれない。


うるさいからと音もなく殺されていたかもしれない。


一気に、冷静になって私はゾッとした。


結果としてシオンさんは『目的は達成した』と言って笑っていた。


勇者を穏便に追い返したかったのだと。


どうして、そんな面倒な事をしようとしたのだろう。


 もっと詳しく話を聞きたかったが『また明日、話す』と言われて私は魔王城の客室に案内された。


慌ただしい一夜だった。


だが、不思議と疲れはとれている。


私は起き上がって、絨毯に足を下ろす。ふかふかの柔らかい起毛が心地いい。


 改めて部屋を見回渡す。

暖かな日差しが入る明るい室内に、

落ち着いた薄ピンクの天蓋とカーテン。

焦げ茶色のチェストにサイドテーブル。

生成色のふかふか絨毯。


魔王城の中とは思えないような落ち着く部屋だった。


 気を遣われてる気がする。

確かに私は召喚された側だ。

でも、1ヶ月後には帰れるみたいだし悲観はしてない。


薄情だけど、私はこの世界に来れて良かったと思う。

元いた世界に帰ってもこの世界の事は宝物になる。


    ………ズキッ


 ??

なんか胸が痛い?


「変なの……」


コンコンと扉を叩く音で私は現実に戻る。


「入ってもよろしいですか?」


「は、はい。どうぞ」


背筋をシャキッとして居住いを正す。


「失礼致します」


扉を開けて入ってきたのは猫耳の可愛い女の子だった。

黒い毛並みが綺麗でピョコピョコ動く耳としっぽが何とも愛らしい。


「レン様の身の回りのお世話を任されましたキャンティと申します。以後、お見知り置きください」


ペコリと頭を下げられて、私も慌てて、


「私は瀧川れんです。よろしくお願いします」


と答えた。

それにしても。耳がモフモフしてそう……。

触ったら、ダメだよね。


挙動不審な目線を察してかキャンティさんは眉を潜めてしまった。


「あの、どうかなさいましたか?」


「え!?い、いや、あの、ですね。キャンティさんの耳、触り心地が良さそうだなーと思って。いきなり、すみません」

 キャンティさんはきょとんとしている。

「人間と違って大きな耳がついているのに、気味が悪くはありませんか?」


 怯えたようにキャンティさんは呟く。


「全然!耳もしっぽも貴女もとても可愛い!」


こんなに可愛いのに気味が悪いとはひどい。大体、どの世界にもいるよね、そう言う人たち。


「ええと、その。良ければ、耳、触ってみますか?」


「いいの!?ありがとう!!」


やわやわ、ふにふに……


はぁーー至福……癒されるー



 キャンティさんに止められるまで耳を触り続けた。





「シオンさんが朝食を一緒に摂らないか、と?」


「はい。どうなさいますか?」


キャンティさんが言伝てを伝えてきた。


推しが目の前で食事をする……


「行きます!是非とも!」


身支度を整えてもらい、私はキャンティさんの案内の元、食堂へ向かっている。


驚いたことに部屋を一歩出ると、雰囲気は一変した。


 真っ黒な壁に薄暗い廊下、床はグレーの大理石みたいな素材で、カツンと固い音がする。


先導しているキャンティさんのランプがユラユラ揺れている。


 いかにも魔王城って言う感じがする。ゲームでもこんなのだったなー。

うん。やり込み過ぎて懐かしさすら、ある。


いくつかの部屋の前を通り過ぎてキャンティさんは止まった。どうやら、ここが食堂らしい。


コンコンとキャンティさんがと扉をノックする。


「入れ」


「失礼致します」


キャンティさんが扉を開ける。

「レン様。どうぞ、中へお入り下さい」


「はい。失礼します」


食堂に入ると五人くらいが座れそうなテーブルが中央にある。1番奥の席にシオンさんが座っている。


よく見るとシオンさんの右隣にナプキンにフォークとナイフが置いてある。あ、フィンガーボールもある。


どうやら、ここに座ればいいみたい。

着座しようとすると、キャンティさんが椅子を引いてくれた。


「おはよう、レン。よく眠れたか?」


「おはようございます、シオンさん。はい。よく眠れました」


「それは良かった。では、食事を始めるか」


シオンさんの一言で、さっと給仕の人たちが入ってきて、様々な料理をテーブルに置き始めた。


カラフルなサラダに目玉がギョッと飛び出した焼き魚、

ビーフシチューっぽいもの、フルーツやデザートもある。


見たことのない料理が多いけど、どれもとても美味しそうな匂いがする。


 


「……作法、は気にするな。ここには私と君しかいない。見咎めるものはいない」


シオンさんは笑い出すのを堪えるためか肩が震えている。


「??わかりました」


不思議には思うけど、シオンさんが笑うととても幸せな気分になる。

  

「くくくっ。昨日と違い、借りてきた猫のようだな」


何が琴線に触れているのか分からないけど、こんなに笑うシオンさんは珍しい。写真、撮りたい。


 はぁーーー。推しの笑顔ですでにお腹がいっぱいだ。


一通り、食事を終えて、話を切り出す。


「あの、昨日の事なんですが、理由を聞かずにでしゃばってしまってすみませんでした」


私は顔を伏せた。


もしかしたら、別の解決法があったかもしれない。


「謝らなくていい。昨日も言ったが、君を呼んだのは勇者を自国に帰させるためだった」


私が感じてる違和感はそこだ。魔王であるシオンさんなら、実力行使した方が早い。

 実際、ラスボスのシオンさんはチートに近い能力を持っていた。

 

 相手を強制的に遠く離れた場所に転移させることも出来たはずだ。


それをしなかった理由とは一体何なんだろう?


「あの、シオンさんは人間を滅ぼしたいのでは、なかったのですか?」


  シオンさんは笑みを消して目を閉じる。





どれくらい時間が過ぎたかは分からない。

長い沈黙の後、シオンさんは呟く。


「………100回を超えてからは数えていない」


100回??なんのこと?


「人間を滅ぼそうとして勇者達に殺された回数だ」


「それ、って……」


「君になら話してもいいか。私は復讐のために人間を襲い、勇者に倒される結末を何度も繰り返している」








 


 









5話以内で終わる予定です。その後は番外編とか書けたら、アップします。

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