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1夜目

初投稿です。お手柔らかにお願いします。

読みにくかったり、矛盾していたりする点もあると思います。ご容赦下さい。

 ※少し改稿しました。


   


 ーーーーーその人はとても美しい人だった。



 宵闇のなかに銀色の長い髪をなびかせてたたずんでいる。

夜の森の支配者のような圧倒的な存在感だった。


だけど不思議と息苦しくなくて私は見とれてしまう。

彼の背後の空には歪な月が青い光を放っている。

周囲の木々は青い光を受けて淡く輝いている。

そんな幻想的な雰囲気に私は夢を見ているのだと思った。


 ……そうだ。最近やり込んでたゲームのラスボスに似ている。 佇まいとか仕草がそっくりだ。

 

 レイヤーさんだろうか?だとしたら相当クオリティが高い…。

仕事で疲れはてて、無意識に迷いこんだ場所で撮影してたとか?


 確かにここのところ、仕事が忙しくて気がついたら朝になってた事はよくある。

けれども、近くにこんな大きな森はない。


「だとしたら、これは…。」


ボソッと呟いたつもりだったけど、目の前の人には聞こえていたらしい。


「どうした?私は白銀の魔王シオン・ヴィヴァル。君の名前を聞いてもいいだろうか?」

 

えっ。白銀の魔王って本物?!

 これって現実?!


「えっと、シオンさん?本当に?」


「ああ」


ちょっと待って。ゲームのシオンさんは冷酷非道な王道ヴィランじゃなかったっけ?

でも目の前に居るシオンさんは違う。


座りっぱなしな私を気遣い、すっと手を差し出して来てくれた。

思いきって手を乗せると、体温が伝わってくる。


 生きている。ああ、紛れもなく現実だ。夢ではない。


「わ、私は瀧川れんです。あの、どうして貴方がっ……」


そう言って立ち上がろうとしたのに足に力が入らない。

 

 本物の魔王だと思ってしまったからか、推しが目の前にいるからなのか、腰が抜けてしまった。


そう。私の最推しなんです。だ・か・ら、腰、砕けたー!!

あー、そのボイスはない!尊い!

何度か立とうと試みるけど、上手く行かない。

ラスボスだけどさ、すごく好きなんだよ。


「レン、こちらの都合で召喚してしまってすまない。詳しい事は城に戻って話す。少しの間、辛抱してくれ」

 

 そう言ってシオンさんは軽々と私を抱えた。


「ひゃっ!」


えっと、この体勢はあれですよね!?ええー!?かなり恥ずかしい!

心臓がドキドキして、落ち着かない。

推しが私に触れて、さらにお姫様抱っこしている!?


「あの、シオンさん。降ろして下さい」


「ここに長居は禁物なんだ。でないと………」

 

 言い終わる前にシオンさんは口を閉ざして目線を彼方へ向ける。

眉間にシワを寄せて、苦しそうな顔をしている。


(何か来ている?)


周囲の木々が風もないの揺れだした時だった。


「全方位、防御!」


シオンさんは目を見開いたかと思うと、呪文を唱えて私たちの周囲に白っぽいドーム状の結界を出現させた。


同時に風が強くなったかと思ったら、竜巻みたいにとぐろを巻いて私たちに襲いかかってくる。地面は抉れ、木々は高速で刈り取られていく。


「ひっ!」


心当たりが大有りだ。この技は男主人公の使う風属性の魔法だ。

やはり、ここはゲームの『彼方からの交響曲』に似た世界だ。シオンさんが張ってくれた結界のお陰でケガはない。


シオンさんの方を見上げる。眉間のシワは消えていたけど、感情が読めない。


「よお、白銀の魔王」


風が収まると、何人か人が立っている。中央の少年が歩み出て、シオンさんに声をかけた。


「ずいぶんな挨拶だな、勇者」


燃えるような赤い髪と初夏の草原を思わせる新緑色の瞳を持つ勇者ラギオール。

シオンさんとラギが並ぶとまさに氷と炎って感じがする。


あーここ、写真に撮って置きたい。不謹慎だけど。


「人さらいの魔王には丁度いいだろ?」


「あ。違います。私は魔王城で働く予定の使用人です」


さらりと嘘をついた。よく分からないけど、このシオンさんは悪い人じゃない。


「は?嘘だろ?」


「嘘ではありません。森で迷って居たところを助けて頂いたのです」


さっきの会話は聞かれてないみたい。何とでも誤魔化せる。


「アンタは騙されてる。魔王は人間の国を滅ぼす存在だ」


 ゲームの中だとそうだって即答するんだけどね。


「私は思わない」

  

「っ!!そこの魔王のせいで我が国の姫が苦しんでいるとしてもか!?」


姫って、シンフォニア真国のコーネリア姫?よね。

ラギの初恋の人だものね。


だとしたら、今は最終決戦間近くらい?


(あのシオンさん、今エターナルリーフをお持ちですか?)


小声で聞いてみる。


(持っているが、何に使う?)


(ラギが今1番欲しいものなんです。)


(なるほど)


「さっきから何をこそこそ話している!?」


 やっぱり。ラギは相当、焦ってる。無理もないけど。


「ふむ。ここで争うことは双方にとって想定外だ。故に提案する。これを渡す代わりにこの場は引け」


シオンさんは呪文を唱えた。何もない空間からシャボン玉に包まれた虹色に輝くエターナルリーフが勇者の前に現れた。


「!!これは!だがっ魔王を目の前にして退く事は出来ない!」

 

 あ。ちょっとプチっと来た。


「勇者ラギオール!!ここで戦えば、間に合わなくなる!今、急げば門が閉じる前に人間の国に戻れる!貴方は大事な人を救いたくて勇者になったのではないの!?」


 私は知っているから。貴方はこの時の事をすごく後悔していた。ラギはコーネリア姫を救いたかった。コーネリア姫はずっと不治の病にかかっていて治すためにエターナルリーフを入手しなければいけなかった。


だけど、エターナルリーフは魔王の国の限られた場所にしか生息しない。おまけに周辺国の噂を真に受けて魔王を敵だと認識してしまう。


 人間の国と魔王の国の間は巨大な城壁と門によって隔たれている。門が開くのは満月の夜のみ。朝には再び閉じてしまう。


ここでシオンさんと戦えば、コーネリア姫を助けられない。

どうか、気づいて!


ラギはハッと目を見開く。


「・・・・っ!!そうだったな、何故忘れていたのか。魔王に借りを作るのは癪だが取引に応じよう」


「こちらとしても助かる」


シオンさんもどこかホッとしている気がする。戦いたくなかったのかな?


「そうだ。そこのアンタ、ありがとうな。俺は強さを求めるあまり見失っていたようだ」


ラギは私の返事を聞く前にエターナルリーフを受け取って足早に去って行く。ラギの足は早い。

仲間たちは慌てて後を追いかけて行った。


 勇者たちの後ろ姿を見送る。


最愛の姫を失った勇者は魔王の討伐を誓い、これを倒すも心は晴れる事なく生涯を独身で終えたーーなんて、

全然、ハッピーエンドじゃない物語は楽しくない。


 シナリオ、変わるといい。そうしたら、シオンさんの生きる道もあるはずだから。


 ゲームのエンディングを思い出して、私は振り返る。

どれくらい時間が経っていたのか、背後には朝日が上りかけている。

「それで、シオンさん。私は何をすればいいのですか?」


私はシオンさんを見た。?何か震えているような?


「ふっ、はははは!!」


「えっ!?」


なんかすごくレアなものを見た。シオンさんが高笑いしてる。


「いや。すまない。事情を話す前に目的を達成してしまったのでな。笑うしかあるまい」


あー。なるほど。勇者を追い返したかったのか。穏便かつ迅速に。

「お役に立てたようで何よりです。それよりも私は帰れるんですか?」


どうせ帰れないだろうなーと思って聞いてみる。


「帰すことは出来る。だが、すぐには無理だ。召喚は魔力を大量に使う。すまないが1ヶ月、待ってくれ」


帰れるのか。またとない機会だし、楽しんだもの勝ちよね。


「分かりました。それでは、改めて。よろしくお願いしますシオンさん」


「ああ、迷惑をかける分、自分の家だと思って寛いでくれ」


 う、ふふ。シオンさんの供給過多で気絶しそう……。



    瀧川れん、25歳。普通のオタク女子。社会人。

      

         最推しの

       

         魔王様に召喚されました。






取り敢えず、一区切りするまで書きたかったです。


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