1話 勇者の独白
僕の名前はアレン。よくある『勇者』と言われる者だ。
元々は村で暮らすただの凡人として生きてきた。多くの人々と同じように、将来は親の仕事でも継いで、武器をつくることになるだろう……そう考えていた僕だったが、ある日王城からの遣いが来て気づけば勇者という肩書を与えられた。王様にはただ一言、「勇者の使命として世界を守るために動け」とだけ告げられた。
先にこの世界の話をしておこうか。
この世界では数年に一度、各国に勇者が誕生するという伝承がある。これは他の国でも常識であり、現在体感している身としては事実であることがよく分かる。誕生すると言ったが、必ずしも生まれてすぐ分かるものではない。勇者の誕生には『生まれたときに力が備わっている』場合と『後天的に力を得る』場合の2通りが存在する。僕は後者であったわけだ。なぜ僕が勇者に選ばれたのかは分からず、神のお告げだとしか聞かされていない。
こうして誕生した勇者は後に世界を襲うであろう『厄災』を滅ぼすために、仲間と出会いともに技術を磨く。いつか来る『厄災』に向けて準備をするのだ。
なお『厄災』が何であるのかは誰にも分からない。伝わっていないのではなく、その時々によって変わるのだ。あるときは魔王の出現であった。魔王は街を、自然を破壊し暴れまわった。それに対して勇者らは力で魔王をねじ伏せた。またあるときは病気の流行、パンデミックであった。感染者は増え続け多くの村が廃れた。それに対して勇者らは魔法によって治癒を施した。さらに医療施設の建設や医者を育てる学校を設立する等を行い感染者の増加を抑えた。
このような不測の事態へ対処するため、僕たち勇者は何が来ても対応できるような能力が求められるのだ。
――こういう経緯から、僕は王によって付けられた3人の仲間とともに冒険をしている。僕に発現した力は、剣術に魔法を組み合わせて使用するというものであった。まだレベルが低いため剣に炎をまとわせたり、剣のダメージを増加させたりということしかできない。しかし成長すれば、雷や風など様々な魔法を使ったり、あらゆるものに魔法を組み合わせることができるようになるらしい。
だから今はいつ来るか分からない『厄災』に立ち向かうために、街のギルドで魔物退治や商人の護衛任務を受けながら日々鍛錬に取り組んでいる。
この日も普段通り、街で受けた依頼を完遂させて換金を済ませ宿屋に泊まる。そんないつも通りの日常を過ごす予定だった。しかしこの日は僕の人生の分岐点だったのだ。