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一年!!

お久しぶりです。

プライベートで大変なことが起きて二ヶ月振りの投稿になりました。

詳細は後書きに書きました。

 父さんや母さん、ジナ婆様から聞いた創世記の伝承では六柱の神様は眠りについたとされている。そのことを信じるのであればラグナさんやナラトさんは神ではなく、神を語る偽物になってしまう。だが、仮に二人が偽物だった場合は俺の前世が地球と見破ったことと先ほどの気配について説明がつかない。


「僕達六柱の神は世界や生き物を創ったことで力は衰えた。けれどもそれは眠りにつく直前のことで、今は力を十分に取り戻しているんだ」


 俺の疑惑を感じたのかナラトさんは疑惑を解くために色々と教えてくれた。それと先ほどの異様な気配は神の気配、神気だと言うこともナラトさんは教えてくれた。ナラトさん達は普段の日常では神気を隠していが、神の力を使うと溢れてしまう。先ほどは俺の過去というか、魂の記憶を探るために神の力を使ってため神気が漏れたようだ。


 それと普通の人間が神気を感じることはできないらしい。けれども俺はそれを感じとることができた。どうして感じることができたのかは正確には判らないが、俺の魂が異世界から来たのが影響しているとナラトさんは推測している。


 それにしても神様が復活して、人間に紛れて生活しているのは驚いた。


「人々の前に姿を現さないのは神がいない世界で人々がどのように成長するのかを観察するためなんだよ」

「まあ、俺達が顕界したことが広まると今のように自由に暮らすことができなくなる。昔みたいに崇められ祀られることに興味はない。だから正体を悟られないように身体は仮の器を用意している」

「仮の器?」

「僕達の本来の身体はある場所で眠っているんだ。魂の一部を人の身体に入れて操作しているんだ。君の前世の知識で言うとTVゲームでアバターを作って操作している感じかな」

「――そうなんですね」


 ナラトさんの説明に驚きつつ他の神様についても気になったので俺はそのことをラグナさん達に聞いた。


「この世界には六柱の神様がいると教わりました。獣神様、蟲神様、精神様、人神様も顕界されているのですか?」

「人神は僕達と同じようにこの世界の何処かにいるけど、獣神と蟲神は眠っているよ。十年ほど前に獣神と蟲神は精神とある儀式を行ったんだ。けれどもその儀式は失敗して獣神と蟲神は強制的に眠りについたんだ」

「正確に言えば獣神と蟲神がミスをして、精神がブチ切れて獣神と蟲神から力を奪った。精神は奪った力で後始末をしている最中だ」


 ナラトさんの説明を補足するかのようにラグナさんは面白そうに教えてくれた。


「神様でも失敗するのですね」

「まあな。俺やナラトは神だが全知全能ではない。生き物を創り出すことはできるが、過去を修正したり未来を思い通りに操作することはできない。神とはこの星の創造者でもあり管理者だ。だけどなんでも思い通りにできるなら管理なんてする必要はない」


 ラグナさんはそう言ってテーブルにサイコロをだした。


「アースはサイコロを振って、自分が意図した目を出せるか?」

「今は無理ですが練習すれば出来ると思います。故郷の村では出来る大人がいましたから」

「じゃあ、他人が振ったサイコロの目を予測することはできるか?」

「それは無理です」

「確かに普通の人間には無理だ。観察力を鍛えればある程度予測することはできるが完全に予測することはできない。それは情報を処理する能力を少ないからだ」

「サイコロの目を当てるには投げる速さや角度。落下までの距離や空気の流れや状態、それにサイコロが落ちる机の上の傷などの様々な情報を処理する必要があるんだ。それができればサイコロの目を当てることは可能なんだけど人間の処理能力では不可能に近い。ラグナや僕達神と呼ばれる管理者はその情報処理の能力が人では辿り着けない領域にいる生命体なんだよ」

「だが、それでも限界はある。この世界の全ての情報を収集して、未来を予想することはできるが、結果を変えることはできない。サイコロの例えに戻すと投げられたサイコロの出る目を予想することはできるが、投げられたサイコロに干渉する力や止まったサイコロの目を変える力は俺達にもできない」

「それができる者こそ全知全能と呼ばれる存在だよ。全知全能の存在は自分の思うとおりに世界を操作できるからそもそもサイコロを振るうことすら無意味なんだ」

「……」


 ラグナさんとナラトさんの壮大な話に俺は圧倒されるだけだった。神と呼ばれる存在がいることも驚いたが、神ですら全知全能ではないと教えられ、地球にいるだけでは決して知り得ない世界の理を聞いて只々驚いた。


 


「まあ、難しい話はここまでにしてお前達の身の振り方を考えようぜ。前世の記憶があると言ってもアースはまだ子供だ。この家で面倒をみるけど問題はないよな?」

「ええ、僕もそれがいいと思う。同行者のアーニャさんやオーナーさんについてもこの家で面倒をみよう。問題なのは……」

「滞在費ですね。できるだけ自分でできることはし、働く先を紹介して下されば頑張って働きます」

「…………いや、滞在費はいらないよ。既に君は対価を支払っているから」

「対価? いつ払いました」

「君の前世の記憶だよ。僕がさっき読み取った記憶の中には異世界の知識がある。とても興味深い知識だ。魔力を使わずにここまで発展した世界は僕達は知らない」

「魔力がない世界だと? それだと人の生活水準は低いだろ。それなのに発展しているのか?」

「そうなんだ。彼のいた世界では星の重力を振り切って宇宙まで進出している。驚くべきことだ」

「宇宙にまで進出ってどう言うことだ!」

「口で説明するよりも記憶を共有した方が早い」


 ナラトさんはそう言ってラグナさんの額を指でついた。


「こいつは驚いた。魔力のない世界でここまで発展するのも驚いたが世界の情勢が滅茶苦茶だ。特に宗教関連が酷すぎるぞ。管理者は何をしている」

「アース君のいた世界の管理者は敢えて放置している可能性が高いね。人々を争わせて発展させるのは確かに繁栄させるには最適かもしれないけどやり過ぎだよ」

「星を滅亡させる力を人の手に委ねるなんて正気を疑うぞ。俺だったらこの核が兵器にならないように干渉しているぞ」

「ラグナ、ここで僕達が議論しても無意味だよ。他の星への干渉や意見は禁止されているからね。それよりもアースくんの記憶にあった技術や知識を有効利用しよう。面白い文化はどんどん取り入れたいからね」

「……そうだな。確かにここで俺達が議論しても意味はない。せっかく異世界の情報が手に入ったんだ使わずにいるのは勿体ない。俺は食文化に興味が出てきたぞ。唐揚げやマヨネーズは直ぐにできそうだな」


 ラグナさんは嬉しそうに言うと部屋を出て行っていってしまった。


「夕食は地球の料理の再現かな。アースくんも楽しみしていてね」

「それは嬉しいですけど地球の知識を広めてもいいのですか? 先ほど他の星への干渉は禁止とか言っていましたが……」

「それは大丈夫だよ。知識や技術があってもそれが浸透するか廃れるかは使う人の判断だからね。アースくんも最低でも一年はこの街にいることになるから広めたい知識や技術があれば率先して普及するといいよ」

「はい、何かあれば相談しま……、一年? この街に一年の滞在?」

「そうだよ。一年はこの辺から出られないよ」

「ど、どうしてですか?」

「ここは東大陸の南側で北に行くには山脈を越える必要があるんだ。山脈は季節や気候の影響で一年のうち一ヶ月間しか通れない。ちょうどいまが通れる時期だけど準備や移動を考えると山脈を抜ける途中で危険な時季になるから通行はできないよ」

「船はないのですか?」

「東大陸の南側では船での交易はしていない。もともと東大陸の南側の住人は魔族や龍族しかいなくて、彼らは他の種族との交流をしたがらないんだ。この街ができて多少は他民族とも交易はするけど船で交易をするほどの交流はないんだ。希に船が破損したり、天候の状態が悪くてここの近くに停泊することもあるけど数年に一回の割合だね」

「じゃあ、最低でも一年はここで生活することになるのですね」

「その通り。滞在費はさっき言ったとおりもう受け取ったからここで自由に暮らしていいよ。一年をかけて旅に出る準備をしてもいいし、ここで身を固めてもいいいよ」


 ナラトさんの言葉に対する俺の返答は『旅の準備をする』だ。一年の期間があれば前世の知識を活かしてお金を稼ぐこともできる。稼いだお金でオーナーから奴隷の権利を買い取ることもできるし、旅をするための知識や道具を揃えるできるはずだ。


「いろいろと考えているようだけどまずは身体をゆっくり休めないと駄目だよ。アース君は前世の知識が残っているけど身体は未熟な子供なんだよ。病気になりやすく体力が少ない。下手をすれば命に関わるかもしれない」


 俺は早速幾つかの計画を練ろうとしたが、ナラトさんから注意を受けてしまった。


「……そうでした。子供だということを忘れていました。数日は大人しく養生します」

「それがいい。僕もラグナもできるだけアースくんに協力するから焦らずにいこう」


 ナラトさんはそう言うと俺に向かって右手を差し出してくれた。俺はその右手を迷うことなく掴み深々と頭を下げた。


「よろしくお願いします」




「アース、何処に行っていたニャ?」


 ナラトさんとの話が終わって、二人で屋敷に戻るとアーニャが出迎えてくれた。


「ナラトさんに会っていたんだよ。こちらがラグナさんの友人のナラトさんだよ」

「始めまして、アーニャくんのことはラグナとアースくんから聞いたよ。この街に滞在する間はこの屋敷に住んでくれていいからね」

「ありがとうございますニャ。私はアースの姉貴分のアーニャですニャ。アース共々よろしくお願いするニャ」


 アーニャの挨拶にナラトさんは面白そうに笑った。俺の精神年齢を知っているナラトさんにとってはアーニャの挨拶は無垢な子供が背伸びをしているように見えるのかもしれない。


「アーニャくん、先ほどアースくんにも伝えたけど君達は短くても一年はいることになる。同じ家に一年も住むからそんなにかしこまる必要はないよ」

「判ったニャ。北の山脈のことはさっきオーナーと一緒にオロチさんから聞いたニャ」

「そうなんだ。オーナーは何か言っていた?」

「商売のことや住む場所を気にしていたニャ。一年間も滞在するとは予想外だったらしくて、今は部屋に籠もって色々と考えているみたいだニャ」

「住む場所に関しては解決したから早くそのことを伝えた方がいいね」

「滞在費を稼がなくてよいのかニャ?」

「アースくんの故郷の料理や知識を対価に貰ったから大丈夫だよ。今日の夕食もアースくんの故郷の料理がでるから楽しみにしていて」

「アースの故郷の料理って何かニャ? お魚かニャ?」

「魚料理もあるけど今日は違うと思うよ」


 ラグナさんの様子だと鳥の唐揚げやマヨネーズを使った料理になるだろう。俺としては米や醤油、味噌を使った料理を食べたいけれど流石に材料がない。この街に似たような物があれば代用したり、なければ自分で作るのも良いかもしれない。


「お魚料理は今日は無しニャ。悲しいニャ」

「魚の干物なら幾つか備蓄があった筈だ。それで良ければ夕食に出すようオロチに伝えるよ」

「本当かニャ。お願いしますニャ!」

「了解した。それにしてもアーニャくんは獣族らしく魚が好きなんだね」

「種族よって食べ物の好みがあるのですか?」

「そうだね。個人の好みはあるけど種族ごとの特徴は色々とあるよ。旅の知識として知っておいた方がいいから時間があるときに教えてあげるよ」

「ありがとうございます」


 故郷の村で人攫いに攫われてからの約半年。いろいろあったけれど一年間は身の安全が保証された。奴隷の権利を買い取ることや旅の準備をするなどやることはいっぱいあるけれど今はナラトさんの言葉にしたがって身体を休めよう。


 身体を十分に休めたら故郷に帰る方法を考えよう。神様も手伝ってくれると言ってくれたのだ。きっと俺は故郷に帰ることができる筈だ。俺は久しぶりに心が軽くなったことを実感した。


会社の辞令で5月から外国に行くことになりました。

急な話で私もびっくりしまして、現地の生活に慣れるまで右往左往していました。


執筆活動もようやくできるようになりました、投稿頻度は下がると思います。

また、もう一つの投稿作品である「迷宮の底で復讐を誓う」は止めて、「異世界転生~故郷を訪ねて三千里?」をメインに投稿します。

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