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第6話 秘密のダンジョン探索

「よし、こんだけあれば良いだろう」


 掘り出した大量の鉄鉱石をスキルでそのまま剣に錬成したアカツキは、三十本あまり作り出した鉄の剣を丈夫な革袋に詰めて一息ついた。剣の詰め込まれた革袋は二つにもわたり、それぞれかなり重量がある。


「わぁ、お疲れさまです! これは私が持ちますね!」


 そんな袋二つを軽々と担ぎ上げるエルフィ。快活な表情を浮かべる彼女だが、その顔には汗一つない。対するアカツキは疲労困憊といった様子で、息を切らせながら額の汗をぬぐっていた。


「へぇ、アナタのスキル、やっぱり便利ねぇ」


 大戦斧をぐるぐると片手で回しながらバレイシアがやってくる。


「そっちはどうだ? 収穫はあったか?」


「まぁね。このワタシを甘く見ない事よ。こう見えて謎解きは得意なの」


 そう豪語するバレイシアにアカツキは意外そうに驚く。身の丈以上の重厚な戦斧を振り回すその姿ゆえ、賢さそうなイメージは微塵も感じさせないからだ。明らかに物事をとりあえず力で解決しようとする脳筋に見える。


「それで、隠されたダンジョンは?」


「この下よ」


 バレイシアは地面を指さした。下、つまりは地下だ。


「階段か何かをみつけたのか?」


「なかった。だから、今から道を作るわ」


 バレイシアは重厚な大戦斧を両手で強く握りしめ、高く振り上げる。そして、渾身の力を込めて振り下ろした。刹那、激震が走り一瞬にして地面に亀裂が走る。


「お、おい!?」


「さぁ、行くわよ、隠しダンジョン!」


 慌てるアカツキをあざ笑う様に、轟音と共に床が崩落した。夢にまで見なかった空中浮遊にアカツキの思考はフリーズする。頼もしかった足場は今は見る影もない岩塊になって、落下を共にする仲間だ。エルフィまで悲鳴を上げている。


「なるほど、筒状の大空洞だったのねぇ」


 バレイシアの言葉に耳を傾け、アカツキは周囲を見回した。遥か遠くに過ぎ去ってしまった天井から、直視したくない底へと螺旋階段が続いている。どうにかして謎をとき明かせば、あの階段で下へと降りられたのだろう。


「ちょ、やべぇ! おわっ、助けてくれぇぇ!」


 余裕をなくしたアカツキが叫ぶと、バレイシアが動いた。空中で器用に身を翻すと、大戦斧を駆使して瓦礫を飛び回る。虚空で藻掻くアカツキを回収すると脇に抱えた。


「ちゃんとワタシに掴まってなさい。この高さから地面に叩きつけられたら熟れたトマトみたいに弾け飛ぶわよ」


「誰のせいだと思ってやがる!」


「あはは、楽しいから良いじゃない!」


「お前だけだ!」


 バレイシアは笑いながら跳躍する。岩塊を蹴り、壁を蹴り、猫の様に飛び回る。アカツキは目まぐるしく変わる視界と、むちゃくちゃな慣性に胃がひっくり返る気分だった。


「ふぅ……、ちょっとバレイシアさん! 足場を崩すならちゃんと説明してください! びっくりしたじゃないですか、もう!」


 などと頬を膨らませプリプリ起こるエルフィだが、それだけで終わっている辺り流石の身体能力といえる。アカツキは普通に死にかけていた。


「お前ら上を見ろ!」


 少し遅れて降り注ぐ岩塊を見て、アカツキが声をあげた。あんなものが直撃すれば全員ただでは済まない。


「アカツキ、アナタけっこう怖がり屋なのね」


 バレイシアはそんな事を言いながら、アカツキを片手で抱えつつもう片方の手て大戦斧を振り回す。その細腕のどこにそんな凄まじい膂力があるのか、アカツキは不思議でならなかった。バレイシアが振るった戦斧は岩の雨を易々と打ち砕き、エルフィも加勢して粉々に切り刻まれた。


「アカツキさん、お怪我はないですか!?」


「あ、あぁ……、大丈夫だ!」


「ふふ、それじゃあ、ダンジョン攻略と行きましょうか。エルフィ、その荷物一つ貸しなさい」


「わぁっ、ありがとうございます!」


 エルフィは片手で担いでいた袋のうち、一つをバレイシアに手渡した。張り合っていた割には仲が良い。


「見ろよ、デカい扉があるぞ。アレがダンジョンの入り口だとしたら、想像以上の規模かもな」



 微かな風の流れを感じ、アカツキが視線を巡らせると、巨大な二枚扉を発見した。薄闇の中でも存在感を感じ取れる程の大きさで、材質は不明だが分厚い金属製なのは確かだ。鍵穴らしきものは存在せず、力で押し開けなければいけない様だ。


「ふぅん、試練みたいなものかしら? この扉を開けられないような弱者に、先を行く価値はないとでも言いたげね」


 アカツキと同じ考察に至ったらしいバレイシア。二枚扉の目の前まで歩み寄ると、不服そうな表情で扉を見上げた。それから、一つ溜息をつき──、


「……気に入らないっ!」


 気迫を込めて扉を蹴り破った。重い衝撃が迸り、それは少し離れたアカツキの腹の底にまで響き渡った。扉は大砲でも直撃したかの様に大きくひしゃげ、重く閉ざされていた重厚さは見る影もない。気絶した魚の様に大口を開け、もはやアカツキ達を拒む事は叶わない。


「ほら、行くわよ。ここまで大仰な扉、きっととんでもないお宝が眠っているに違いないわ! 心躍るでしょ?」


「わぁ、楽しみです! 冒険者らしくなってきましたね! アカツキさん行きましょう~!」


 はしゃぐ二人の背中を追いかけながら、アカツキは彼女達の強さに関心していた。〝元〟ではあるがアルキデス教国の十二騎士と、戦闘部族ヴィレア族の最強の戦士。割ととんでもないメンツが揃っている。そこいらの冒険者など、彼女達と比べるのもおこがましい。


 そして、二人は全く気にしていない様子だったが、アカツキは前のパーティーよりも顕著なメンバーとの実力差に負い目を感じ出していた。しかも今回ばかりは埋めようのない差だ。どれだけ努力しても二人には追い付けそうにない。


 だが、〝レリックアイテム〟を入手できれば話しが変わってくる。エルフィの様な圧倒的な才能、バレイシアの様な恵まれた強靭な肉体、それらが無くてもレリックアイテムがあれば二人と肩を並べる事ができる。何としても手に入れたいところだ。


 未開のダンジョン探索という、今までにないチャンスを得て、アカツキはレリックアイテム入手に野心を燃やす。


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