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第4話 武闘派ヒーラー、バレイシア


「海岸の洞窟?」


 武器商人として、商品を揃えるのに必要な鉄。その在り処の情報に五万シルバーを支払い、アカツキはその情報を得た。ギルドの情報掲示板に掲載され、印を押された以上情報に間違いはないはずだ。


 洞窟内の詳細な地図があるとはいえ、アカツキにこの国の土地勘はない。そもそも海岸の洞窟とやらの場所から不明だ。これは地図も必要になる。それに採掘した鉄鉱石を積み、運ぶものが必要だ。海岸の洞窟とやらが遠い場所であれば、馬まで容姿しないといけなくなる。出費はかさむばかリだ。


 アカツキはエルフィの登録手続きが終わる間、流石に手持ち無沙汰だったので空いてるテーブルに座り、紅茶を一杯注文した。


「なぁ、レオーネの噂聞いたか?」


 ブランデーと砂糖を溶かし、湯気の立つカップを傾けようとした時、後ろの席からそんな話し声が聞こえてきた。レオーネ、その名前に耳がピクリと動く。


 何を隠そうレオーネとはアカツキをパーティーから追放した張本人。前パーティーのリーダーにして、腕の立つ剣士だ。キザな言動と顔を思い出すだけでも虫の居所が悪くなる。縁を切ったにも関わらず、その名が耳に入って来るとは不愉快極まりない。


「巷を騒がせてるあのパーティだろ?」


「そうそう! サファイアドラゴンを討伐した次は、西のダンジョンの制覇らしいぞ!」


「やべぇよな! アイツら出世街道真っただ中で羨ましいぜ」


 そんな会話を聞き、アカツキは苦虫を噛み潰した様な表情をする。アカツキをパーティーから蹴った次の日には、ダンジョン攻略に勤しんでいたらしい。そして、名を挙げているのも確かなのだろう。面白くない。


 早くここらか出ていきたいとアカツキがイライラし始めた頃、ようやくエルフィが登録手続きを済ませたのか駆け寄ってくるのが見えた。


「アカツキさんお待たせしました! 見てくださいギルドカードですよ~!」


 キラキラしら瞳で発行されたカードを天に掲げるエルフィ。


「おー、やったな。これでお前も正式に冒険者だ。あと一人良い奴を探し出せば活動開始ができる」


「はい! 良い人、見つかるといいですね~」


「本題だ。俺達がこれから商売していくにあたってまずは商品となる剣を揃える必要がある。そんでもって、剣の素材になるのが鉄だ」


「大丈夫です、いくら私でもちゃーんとわかってますよ!」


 席につき、水を注文しようとしたエルフィを制して、アカツキは適当な飲み物を注文した。


「あぁ、わかってる。ただのおさらいだ。こっからが重要だからな」


「なるほどっ」


「見ろ、これが鉄鉱石の鉱脈の在り処だ。海岸の洞窟とやらの地図らしい。ギルドが取り扱っている情報だから正確ではあるんだろうが、いかんせん海岸の洞窟そのものの場所がわからねぇ。エルフィは知ってるか?」


 アカツキは対面に座ったエルフィに向けて、買い取った情報をテーブルに広げて説明する。


「すいません、流石に私もこの街に来たのは数日前なのでわからないです……」


「そうか、じゃあ後で地図を買おうな。海岸の洞窟については、地図を買う際に店の人に詳細を訪ねてみよう」


 そんな話しをしていると、偶然テーブルを横切った一人の冒険者らしき少女が歩みを止めた。そして、アカツキ達のテーブルへと振り返る。


「アナタ達、海岸の洞窟に行きたいの?」


 凛とした真のある声音につられ、アカツキは声の主へと視線を向けた。


 銀糸の様な長髪を肩甲骨辺りでまとめた髪型。白い角とドラゴンの尻尾が特徴の龍人族の少女だ。褐色の滑らかな肌に、露出の多い軽装。曝け出した右腕には太陽を象ったトライバルタトゥーが刻まれている。猛禽の様な金色の瞳と視線が重なり、アカツキは底知れぬ小柄な少女の迫力に肝を射貫かれた。


 身の丈以上に巨大な戦斧を背負っており、引き締まった体を見れば肉弾戦を得意とするのが予想できる。手合わせをしなくても、彼女が手練れである事は経験の浅いアカツキにも理解できた。それゆえ、安易に声をかけられない。


「はい、そうです! もしかして地元の方でしょうか?」


 アカツキよりも先に返事をしたのはエルフィだった。流石アルキデス教国の元十二騎士だ。少女の放つ威圧感に物怖じせず、普通にコミュニケーションを取っている。


「全然違う。仲間はいないけど、普通に冒険者よ? ワタシはヒーラーのバレイシア、よろしくね」


 纏っていた威圧的なオーラを取り払い、龍人族の少女バレイシアはウィンクをする。


「え、ヒーラー?」


 バレイシアの自己紹介に、思わずアカツキは聞き返した。


「別にヒーラーが前線で戦ったっておかしくないでしょ? ふーん、もしかしてアナタも役割に勝手なイメージを押し付けるタイプ?」


「ま、待ってくれ、別にそういう事じゃない! 気に障ったなら謝る、わるかった」


 バレイシアはアカツキの言葉が気に障ったのか、腕を組んで嫌そうな顔をした。流し目で一瞥されたアカツキは慌てて訂正する。


「まぁ、慣れてるから別にいいけど。でも、どーしても誠意を見せたいって言うなら、昼食の一つでも奢ってくれたら許してあげるわ」


「オーケー、座れよ。ほら、好きなもの頼んでくれ」


「アナタ、さては良い人ね! 気に入ったわ、名前を聞かせてちょうだい」


 にししと悪戯に笑ってバレイシアはアカツキの隣に腰掛けた。


「俺はアカツキ。とりあえず鍛冶師みたいなもんだと思ってくれ」


「私はエルフィ、アルキデス教国の十二騎士でした! どうぞよろしくお願いしますねっ」


 アカツキに続き、エルフィが手を挙げなら自己紹介をする。


「へぇ、あの十二騎士? 見かけによらず凄いのね! 何だか面白い二人組だわ、ますます気に入った。ねぇ、ワタシも混ぜてくれない?」


 バレイシアは両手をテーブルにつくと、身を乗り出して広げられた紙を見やった。


 偶然の出会いとはいえ、この龍人族の少女は三人目のメンバーになってくれるかもしれないと、アカツキは今後の予定を打ち明ける事にした。別に他人に知られたところでどうにかなる話しでもない。例えバレイシアが裏切ったとしても、剣聖であるエルフィがいれば安全だろうという判断だ。


「じゃあ、最初から順を追って話そう。退屈かもしれないが聞いてくれ──」


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