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04 自己紹介の前に

「おい。俺はどうすればいいんだ……」


 俺は思わず、女神にすがってしまった。

 なにせレベル一なのだ。つまり、一般人と何も変わらないステータスしか持っていない。


 この先、モンスターがはびこるだろう異世界で、どう生きていけばいいんだろうか。


「ミミックに助けてもらうといいわ。この子、すごく強いからっ」

「え、そうなの?」

「嘘だって思うならステータスオープンしてみなさいな。大丈夫よ? この子の強さ、すぐに分かるからっ」


 あっけからんと答える女神。

 けどまあ、確かにゴブリンをあっという間に倒したからなあ。


 俺はいったん、女神の言うとおりにする。

 ゴブリンを食べてから一歩もその場から動く気配のない宝箱に、じっと目を凝らしてみる。


「……ステータス、オープン」


 するとどうだろう。女神の言うように、ミミックの側からステータスが表示され始めたではないか。



 ミミック

 レベル 78 職業 モンスター・ミミック

 HP 6861 MP 4325 SP 5970

 攻撃力 2834 防御力 1943

 魔攻撃 1714 魔防御 1538

 体力 2007  敏捷 2244

 魔法 1067  運 10



「高いな……」


 俺と比べて圧倒的じゃないか。

 さっきの女の子もそうだ。

 そこらのステータスとはレベルも数値も比べ物になっていない。


「――ワンッ!」


 ミミックが吠える。嬉しそうに聞こえてくる。

 自慢しているんだろうか。

 それにしても、犬みたいに吠えるやつなんだな。見た目宝箱のくせに。


「ん……」


 と、ここで少女の声が漏れるのが聞こえた。

 目を覚ます前兆のようだ。


 まあ、無事だっていうのは何となくわかっていた。ステータスを見たからな。


 確か、このピンク髪の少女の名前は『プリメラ』といったっけ。

 といっても、初対面から『ステータスを見て名前を知りました』なんて言うのも心証が悪いかもしれない。


 ここは目を覚ましてから、色々聞く事にしよう。


「はい、ここで作戦タァ~イムッ!」


 すると女神が、唐突に叫び始めたではないか。


「……は?」

「あのね、あの子、目を覚ますでしょっ?」

「お、おう」

「その流れで、お互い自己紹介タイムに入ると思うのっ」

「タイムって、まあそうだけろうけど」

「それで、自己紹介の前に私たち、作戦タイムを設けたいと思いますっ!」


 おいおい、何やら女神が妙な事を言いやがったぞ。

 何だよ作戦って、自己紹介の前にそんなのいるのかよ、人見知りかよ……。


 と、俺の理解が得られない内に、女神が俺に詰め寄ってきたのだ。


「な、何だよ? 近いぞ?」

「あのね、自己紹介で『ミーク・カロラヴィーナ』なんて名乗らないでほしいの」

「な、何で……」

「嫌われた末に死んだのを忘れたのっ? 大騒ぎになっちゃうよ?」


 あっ……。

 言われてみれば、一理あるかもしれない……。

 この異世界に訪れる前に見た、あの阿鼻叫喚。

 あれが再現されるリスクがあるのなら、少しでも避けるべきだと思うが……。


「け、けど、俺たちは汚名返上のためにこの異世界に来たんだろ? なのにミークを名乗らないっていうのは……」

「そう思うなら聞いてみたらっ? あ、もう目を覚ましたよっ」


 女神に言われ振り返ると、少女はすでに起きていた。

 女の子すわりでこちらを見ている。

 しかし寝起きなのか、まぶたがあまり開いていない様子だった。


「あの、……大丈夫か?」


 思わず気をつかってしまう俺。


「え、ええ……ここは? みなさんは……?」


 うつろながらも、答えてくれる少女。

 しかし、場所が分からないあたり、記憶があいまいらしい。色々と説明した方がよさそうだ。


「ここは、……森の中ってところか。まあ、俺たちも初めて入ったもんだから、詳しくは知らないんだけど」

「森……え? 何これ」


 少女が思わず驚いてしまう。周囲を見回す彼女に見えているのは……大量のゴブリンの死体。

 そりゃあ、目を覚ましてみたらモンスターが死屍累々でした……なんてびっくりするに決まっているよな。


「ああ、これは……」

「これはねっ、モンスターが自滅したからなのっ!」


 俺が説明しようとした矢先だった。

 女神が突然、話に割って入ってきたのだ。


「え、ちょ……」

「覚えていないっ? アナタ、捕まっていたのよぉ? それでゴブリンたちが運んでいたんだけどぉ、誰が一番先にいただこうか、言い争いになっちゃったのっ。それでね、お互いに暴力から始まってやがて殺し合いにまで発展しちゃったのよねぇ。ゴブリン全員が倒れたところを私たちが見つけてぇ、アナタを救出したってわけっ。分かったぁ?」


 オイオイオイオイオイオイオイオイ、この女神、デタラメ言い始めたぞ。

 本当は俺といっしょに来たミミックが全部やっつけたっていうのに、何でそれを隠すんだ?

 ウソや騙しが許せない異世界じゃなかったのか? そんな適当な話、いきなり信じてもらえるわけが……。


「そうだったんですね、納得しました」


 ええ……あっさり信じちゃったよ。

 何で『合点いきました』って顔しているの? 何でそんな笑顔見せているの?

 そんな初対面の人の話、簡単に受け止めていいの?


「みなさん、私を助けてくれてありがとうございました。私はプリメラ。プリーストのプリメラっていいます。よろしくお願いいたします」


 俺の懸念もおかまいなしに、少女は頭を下げ、自己紹介を始めていく。


 少女は――プリメラ、と名乗った。

 プリーストのプリメラだと。

 モミアゲが長く、ショートヘアーのピンク髪の少女。ピンクと白のローブを身にまとっている。

 まあ、プリメラの名前や職業は分かっているんだ。さっきステータスで確認したからな。


「それで、えと、みなさんは?」


 おっと、ここで俺たちの番か。

 名乗ろうかと一瞬思ったものの、女神が言っていた事を思い出す。

 せっかくだ。念のため、確認してみようか。


「なあ、プリメラ……っていったな。ミークって知っているか?」

「え、ミーク? ミーク・カロラヴィーナ……ですか?」

「ああ、フルネームまで知っていたか。もしよかったら、彼のウワサとか聞きたいんだが……?」

「ウワサって、あの人って……」


 ミークの名を聞いた途端だった。笑顔を見せていたプリメラの表情がみるみるうちに……。



「確か……全国で指名手配されていた、極悪人ですよね!」



 曇り始めたではないか。


「ぷ、プリメラ……?」


 それからというもの、彼女のミークへの罵倒ラッシュが始まったのだ。


 読んでくださりありがとうございました。


「面白い!」

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