03 ステータスオープン
俺は急いで、少女を地べたに寝かせる。
ミミックにかじられた痕跡はない。……が、体中がベタついてしまっている。
「うんうん、間一髪だったねっ!」
鼓動をバクバク鳴らしている俺とは正反対に、女神はのん気に構えていやがる。
「お前! 何を気楽な事を! だいたいこの子、目を覚ましてないんだぞ! それを……」
「だって分かるもんっ。気を失っているだけだって。ステータスに何の異常もないし」
「……え?」
ステータス……?
何を言っているんだ……? いや、知らない訳でもなく、聞き覚えはあるんだが……。
「あ、言ってなかったっけ? 私ね、相手のステータスが見えるのよっ」
「み、見えるって……?」
俺が疑問を投げかけようとした、その時。
「ステータス、オープン!」
女神が人差し指を、空に向け掲げ出す。
すると……。
「うおっ……!」
俺の眼前に現れる、数字の羅列。
箇条書きのようで、漢字と数字が一列、いや二列に並んで、空気に浮かんでいるかのように表示されてしまったのだ。
「これがステータス。この女の子の状態を現しているの。雰囲気はなんとなーく、分かるでしょ?」
またも鼓動を鳴らしてしまう俺。
しかし女神の言うとおり、この数字の羅列に意味があるように思える。というか、異世界なのになぜか漢字が並べられていたおかげで、おおよその意味が理解できたのだ。
プリメラ
レベル 11 職業 魔法職・プリースト
HP 27/41 MP 8/40 SP 10
攻撃力 12 防御力 14
魔攻撃 19 魔防御 18
体力 8 敏捷 11
魔法 23 運 15
「うわ、すげぇ……! 本当にステータスだ……!」
俺は思わず、感極まった声を出してしまったね。何せゲームによくあるステータスを、この目で見る事ができたのだから。
「他にもあるのよっ?」
「えっ? 他?」
「衣装チェンジ!」
女神が大声を出す。すると彼女の体が一瞬、光に包まれ……。
「ふ、服が、変わった……?」
俺は目を丸くしていた。
何せ女神の白衣装がまたたきの間に無くなってしまい、青を基調とし、スカートの丈が短くなった格好に変わってしまったからだ。
さらに、首に巻かれていくマフラー。足元まで伸びる程に長く、色は薄く黄味がかった白い物。
俺と同じだ。
「どう? 似合ってる?」
「似合ってる……っていうかすげぇ……。服変えられるのかよ……。魔法みてぇじゃねぇか」
「えへへー、そうでしょー。このすごいのね、私のスキル。身につけている装備や道具をね、自分の意のままに変えられるのっ!」
スキル……と言ったか。服を一瞬で変えた魔法みたいなそれを指しているようだが、他にも色々あるんだろうな……。
うんうん、ますますゲームっぽくなってきたじゃないか。という事は、俺もこの異世界でモンスターを倒してレベルを上げていけば、かっこいいスキルに魔法を使えるようになるんだろうか。
「あ! 今のスキルはアナタにはまだ無理だけど、ステータスオープンならすぐ使えるよっ?」
「え! ステータスが……マジで! すぐ使えるって、さっきみたいに……?」
「そだよー。やり方は簡単。『ステータスオープン』って、把握したい相手を見ながら口に出すと見られるようになるよーっ」
「おおお……唱えるって事か……」
「ちなみにね、知ってもらいたいって思って可視化できるようにしたけど、それがいやなら自分にしか見えないように心の中で思っとくの。それでばっちりだからねっ」
「そうか……それは便利だな……」
さっきみたいなのに加え、相手に気づかれないようにステータス把握も可能って事か。
試しにやってみよう。
「ステータス、オープン」
自分の手に目を凝らしてみる。じっと見つめてみたものの、何も変わった様子はない。
「な、何も出ないんだけど……」
「湖を覗いてごらんっ。ステータスが見えるようになるからっ」
湖……?
そういえば、側にあったな。鏡代わりにしろって事だろうか。
何にせよ、覗いてみよう。
水面に映る、自分、いやミークの顔。そして頭上に浮かぶ、数字の羅列。
それは間違いなく、自分自身のステータスそのものだった。
きたみミミ久
レベル 1 職業 ノービス
HP 19 MP 2 SP 2
攻撃力 7 防御力 4
魔攻撃 3 魔防御 4
体力 2 敏捷 3
魔法 3 運 10
「やったぜ……」
俺の気持ちは、高揚感に溢れていた。いよいよ自分にもステータスが表示されるようになったからだ。
これで俺もこの物語の仲間入りだ。今日から本格的な冒険が始まるに違いない。
どんな戦いになるんだろう。やっぱり俺も前線に出てモンスターと戦ったりするんだろうか。
まるで始めてRPGをプレイした、あの感覚を思い出すよ。あの世界が広がっていくような……そんなワクワク感が……。
いやぁ、楽しみだ! 頑張るぞ!
……と思っていたが。
「レベル一……か」
自分のステータスの低さを目の当たりにされていた気分でもあった。
「まあ、こんなものだよな……」
自分には無限大の最強ステータスがついていた……なんてそんな都合のいい話。
……ある訳ないよなぁ……。
水面に映る俺の表情は、どこか落胆としたものだった。
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