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02 ほら私って、カワイイじゃない?

「やーん、見つかっちゃったぁ〜」


 俺は女神に怒鳴りつけた。


 せっかく俺とミミックで、この異世界を周る冒険を始めようという時に、……雰囲気がぶち壊しじゃないか。


 しかし女神に、悪びれる様子はなかった。


「見つかった……じゃねぇよ! 何で女神が、俺の側にいやがるんだ!」

「……来ちゃった」

「やめろ。思わせぶりな声を出すな。っていうか何? 俺がミークの手柄横取りするように聞こえたんだけど……?」

「それはね、言葉の綾ちゃんだからっ!」

「言葉の綾って言いたいんだろが……ってか質問に答えろ! 何でお前がここにいる!」

「ほら私って、カワイイじゃないっ?」

「……は?」


 何を言っているのか……意味が分からなかったね。


 確かに美少女ではあるが、それが今の話とどう繋がるって言うんだ?


「冒険にはね、目の保養も大事だと思うのっ。イケメンもいいけど、ここはやっぱり、美少女の私が加わった方が、画面映えするかなって!」

「いや意味分からん……。っていうかお前、女神だろ? 立場はどうした?」

「だって、行きたくなっちゃったもん……。そうだ、京都行こう……って」

「世界観壊す発言はやめろ。いいから何でお前が……」

「……静かに! こっち来て!」


 押し問答の最中、俺は女神に腕を引っ張られてしまった。

 そして身を隠すように、草むらの中に飛び込んでしまったのだ。


 まるで踏んだり蹴ったりだ。俺の胸中に苛立ちが募っていく。


 異世界に来たのはいい。俺が死んだのも仕方がない。

 だが、何で女神まで来る必要があった? しかもいいように振り回されてしまっているではないか。


 そもそも何なんだ、さっきからその態度は。初めて会った時と全然違うじゃないか。まるでぶりっ子じゃないか。自分をカワイイという所が自分勝手というかイライラが募ってくる。


 さすがに我慢の限界だここらで文句を言ってやろうと思った、その時だった。


「お、おい……」

「いいから、あれ見て!」


 女神が指を差す。

 制止され、渋々差した方向へ顔を移してみると……。


「な……」


 そこにいたのは、小柄な人型の群れ。


「いや待て、あれは……」


 見覚えがあった。


 しなびた耳に、とがった鼻。口の中から見え隠れする牙と、長い舌。青白い肌に腰みの一丁という、裸同然の姿。



「ゴブリン……か?」



 それは、かつて日本のゲームで良く見た、あのモンスターたちそのものだった。


 その数、およそ十匹。

 獰猛な声をあげながら、我が物顔で森の中を歩いていく。


 俺は思わず、つばを飲んだ。

 モンスターを目の当たりにして、本当に意世界へ来たんだと痛感したからだ。


「よく見て。女の子が吊るされてる」


 女神の言うとおり目を凝らしてみると、両手両足を縛られた女の子が、ゴブリンたちに連れられているのが分かる。


 ピンク髪のショートヘアー。目を覚ます様子はない。

 それ所か、生きているのかどうかも……。


「……あれ? ……おい、あれ……」


 ふと、ゴブリンたちが立ち止まった。

 モンスターたちの目の前にポツンと、宝箱が現れたからだ。


「あれ、ミミックじゃ……?」


 そのまさかだ。

 あの造形、あの大きさ。

 さっき女神に引っ張られた勢いで、忘れてしまったのだ。


 ゴブリンたちが興味しんしんだ。

 まさか、持ち運ぼうとしているんじゃ……?


「待って。行っちゃダメ」

「けど……!」

「いいから見てて。あれがミミックの戦い方だから」


 何を言うんだコイツは……。

 と疑っていた、その矢先だった。


「――ガウガウガウガウガウゥ……!」


 犬が牙を見せた時のような吠え方。そして……。


「ギャ、ギャアアアアアアアアアアアアアア!」


 悲鳴が響き渡る。


 人のものではなく、獣の類でもなく。

 ゴブリンだ。



 ゴブリンが宝箱のフタに挟まれ、血を流しているのだ。

 まるで、食べられているかのように。



「なっ……!」

「ね、分かったでしょ? あれがミミックの戦い方。相手が予想しない物に擬態し、油断した所で強力な一撃をお見舞いする。これこそ、アナタのパートナーの力なのよ」

「力……」


 俺が呆気にとられている間に、ミミックに食べられていたゴブリンが、口の中に飲み込まれてしまう。

 その様子を見て恐怖を覚えたのか、残りのゴブリンたちが散り散りに去ってしまった。


 ……吊るされた少女をひとり、その場に残しながら。


「ゴブリンが……いなくなった……」

「ねー、そりゃ逃げるわよねぇー? あんだけ派手に不意打ちされたんだからぁ。ささ、それよりあの子を助けにいかないとっ……」


 女神が俺を再び引っ張ろうとすると……。


「あ。今度はあの子を食べようとしてる」

「お、おい!」


 俺がトラックを彷彿とするくらい、慌てて飛び出す日が訪れるとはね……。


 しかも、一日もたたないうちに。

 読んでくださりありがとうございました。


「面白い!」

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