26 戦略的リサイクル
「戦略的……リサイクル……ですか?」
ぽかん、とした表情をみせるプリメラ。
気持ちは分かるが、今は彼女の反応を気にしている場合じゃない。
俺はこのまま、言葉を紡いでいく。
「このミミックは確かにモンスターで、俺に襲いかかってきた。けど俺はそれに勝ち、仲間にする事ができた。……といっても、村人や周りの人々からすれば関係ない、ただのモンスターだ。だから無用なトラブルを避けるため、普段は宝箱のフリをさせていたんだ。ここまではオッケー?」
コクリ、とプリメラはうなずく。
本当に誤魔かせているんだろうかと疑心暗鬼になりながらも、俺は口からでまかせで説明を続けていく。
「そして今回、俺たちは真正面からボスたちと戦った。……ミミックの正体は明かさなかったが、そのおかげでミミックの猛攻に怯んでくれた。絶対的な威厳をもっていたはずのボスを動揺させてやったんだ、正々堂々とした上でな。そこらの武器だったらこうもいかなかったろう。……倒したモンスターを使い、敵に思わぬ一撃を喰らわせる。……これが、戦略的リサイクルだ」
説明し終えると同時に気がつく、激しい鼓動の高鳴り。
……緊張していたのだ。
真顔で俺の話を聞くプリメラが、どう思っていたのか、うまく言いくるめられたのか……を。
「あの、プリメラ……さん?」
「ミミ久さん」
「あ、ええ……なな、何でしょう……!」
「すごいです。勉強になります」
「べべべ、勉強……! ……え?」
一体何を学んだというのか。
思った以上の好反応に、俺はたじろいでしまう。
「すごいですよ……だってミミ久さん、そんな先の事まで考えていたなんて……。戦いの場においては今あるスキルや魔法を最大限使って相手を倒す、というのが普通なのに……。モンスターを使ってまで戦う前から準備を進めている……まさに戦略! まさに軍師のような采配に私……感動しました!」
目をキラキラと輝かせ、尊敬の眼差しで俺を褒め称えるプリメラだった。
おい、やめてくれ……。俺はそんないいもんじゃない。
ただミミックの正体を隠していただけの普通の男子高校生だ!
それも外見は正体を隠したイケメンのミーク・カロナヴィーナだ!
この嘘やだましが嫌いな異世界で、すでに君に嘘をつきまくっているんだよ……。
ただ女神のヤツの話に同情して異世界にやってきただけで、俺はそんな眼差しを向けられるのに相応しい人間じゃない。
どうせなら子供に優しくしようとして死んでしまったミークの方を尊敬してやってくれ!
そのほうが女神だって望んでいるに決まっている!
……と、俺が心の中で叫んでいた時だった。
「くっくっく……。そうかいそうかい」
その時だった。ボスが、含み笑いを始めたのだ。
「……おい、何がおかしい?」
「さっきの話をまとめると、ミミック族ってのはつまり、世界中に散らばる暗殺者集団って所だろ?」
「まあ、……そうだな」
何だコイツ、女神の説明を確認してきやがったぞ?
俺も正直な所、よく分からないから適当に返事を返す。
「それと、ミミックで戦略的リサイクルだとか言ってたよな……。要するに、テメーの強さの秘密はそのミミックにあるって事だろ?」
「……え? ああ、そうだけど……?」
妙な事をつぶやき始めている。
ボスの言葉が気になり始めた。……刹那。
――バァァァァァン……!
「ギャ!」
「えっ……!」
はじける衝撃音。
それと同時に聞こえる、小さな悲鳴。
それは、俺のものでも、プリメラでも、ドラゴンでも、……ボスのものでもなかった。
……恐らくミミックだ。
「なっ……!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
またたきの間に、ミミックが俺の足元まで転がってきたからだ。
ドラゴンがやったのかと思った。
……が、肝心のそれに、何一つ動きがなかったのだ。
ミミックに僅かに残されていたのは、小さな水滴が数か所……。
「水滴……?」
おかしい。この洞窟に、水脈はないはず。一体、どこからそんな……?
「くっくっく……。さすがに驚いたようだな」
ボスの笑い。以前よりも、距離が縮まって聞こえてくる。
「どけよ、ドラゴン野郎! 役立たずにもう用はねぇ!」
ーードガァッ!
「アオオオオオオオオオ……ン!」
洞窟内に響き渡る、獣の叫び声。
これは間違いなく、ドラゴンのものだ。
俺はこの間、暗い洞窟の中でもぼんやりとだが、目が慣れていた。見えていたのだ。
巨漢の男の一撃で倒されてしまう、ドラゴンの姿が。赤いうろこに、全長二十メートルはあ
るだろう巨大な体。そして、相棒のミミックと互角だったはずのモンスターが……。
今、はっきりと分かるのは、このボスの強さは別次元という事。
ドラゴンや、ミミックよりも……はるかに。
「どうだい? 自慢の武器を失った気分は?」
ボスが近付いてくる。その正体が、鮮明に写しだされてきた。
「…………!」
プリメラが、声にもならない悲鳴をあげてしまった。
確かに、ボスの姿は衝撃的だ。
額に角を生やしている。
筋肉隆々で、二メートルはあるだろうでかい図体。
目力がすごい。
上半身は裸体の上に、胸当てを装備している。
その色は金でケバケバしく、センスの欠片もない。
下半身は布の上に、金色の足甲。
「……もや?」
湯気だろうか?
ボスの全身から湧き出ている白い煙のようなもの。
オーラというやつだろうか、確かに強者の匂いをただよわせている。
とにかくここまで聞けば、体格のいい鬼と思われるだろうが、驚くべきはこれから分かっていった事だ。
「くく……ビビったろ? テメーが戦っていたのは、ただの前座。要するにザコだったって訳だ」
「そ、そんな……ミミ久さん……」
「驚いているねー、お嬢ちゃん。この破壊大帝の凄さを、ようやく思い知ったってか?」
破壊大帝……?
その時、俺は久しく忘れていた恐怖を思い出していた。
あ、これ、ヤバイやつなんじゃ……。
「そうとも! テメーらなんか、この全身を武器に変えられる破壊大帝、メグトロン様の敵ではないわ!」
ああ、やっぱり……このボスがそうだったんだ……。
「そ、そんな……」
「モランスフォーム! この掛け声も俺が考えた!」
「そんな!」
「ディべスティコン! これもオレが命名してやった!」
「あわ、あわわ……」
プリメラが、怯えた声を出している。
怖いんだろうな……。
うん、俺も怖いよ。
「み、ミミ久さん。顔が蒼ざめています……。やっぱり、恐ろしいから……ですか?」
うん、蒼ざめているよ……。
こんなに聞いた事ある個人名が出てしまって、大丈夫なんだろうか……って。
ありきたりなネタとかはもう、……今さら感があるから何も言わない。
けど、これはなぁ……。
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