25 不思議に思うんです……
「なぁんだ。そんな事か」
まるで何て事もないかのように、女神はプリメラにバナナを渡し、ボスの方へ見据えている。
「要するに、私たちがミミック族のありようについて語っていた間、どうしてドラゴンとの真剣勝負が成立していたのか……その理由を知りたいんでしょっ?」
「お、おう……分かっているじゃねぇか」
「……宝箱をよく見なさい」
女神の話を聞き、注目するボス。
そして、プリメラ。
瞬間。二人は固まっていた。
「こ、これは……!」
宝箱が、いや、ミミックがキバを向いていたのだった。
「その宝箱……モンスターだったのか!」
ボスが驚愕の声を出す。
「…………………………………………」
一方の俺は、ため息を吐いていた。
まあ、そりゃ驚くよな……と思って。
ドラゴンとの激しいバトルが繰り広げられる展開だって思っていたら、実は宝箱がひとりでに戦っていた。
まあ、そこまでは分からなくもない。
そこまではいいんだ、誰が何と言おうとも。
けどだからって、真剣勝負の最中にくつろいで女神のおしゃべりを聞いてるって……傍から見たらおかしいだろ……。
しかもバナナまで持ってきて……。俺たち何しに来たんだよ、ピクニックにでも来たのかよ。
緊張感はどこへ行ったんだよ……。
と不満を溜め込んでいたが、俺も座っている立場のため強く言える事もできず、女神のよく分からない造語と説明をただ聞いている事しかできないでいた。
「そう、モンスターの名はミミック。見ての通り、宝箱に擬態した狂暴なヤツよ。油断していると食べちゃうぞっ!」
可愛らしく口を開け、ミミックのアピールをする女神。
その言葉通り、今にも襲いかかろうと宝箱の中から覗かせる目が、ギラギラとボスに向けひん剥いている。
「も、モンスター……? モンスター……だったんですね? その、ミミ久さんが持っていた、あの宝箱が……?」
「あ、ああ……」
プリメラの質問に答えてやる俺。
ここでプリメラが不穏な空気を抱いていた事に、俺は間もなく気がついたのだ。
「でも、だったら私、不思議に思うんです……」
「え? 何が?」
「どうしてミミ久さん、宝箱がモンスターだって事を、さっきまで私に隠していたんですか?」
俺は――ガバッ! とプリメラの方へ振り向いた。
気が抜けていた所で、頭を激しく殴られたような衝撃が走ったからだ。
「だってミミ久さん、強いんですよね? 宝箱を振り回してモンスターや盗賊を倒せるんですよね? でもあの宝箱がミミックだって事、ミミ久さんは知っていたんでしょう? どうして私に何も話さないで、宝箱を振り回すミミックの戦士のフリをしたんですか?」
突き刺さる、プリメラの視線。
俺は正直、しどろもどろになっていた。
何せこの疑いを向けられている状況、一歩間違えれば大変な事態になってしまう。
そう、あのミーク・カロナヴィーナのような……。
「な、なあ! 女神のヤツなら詳しいんじゃないか! さっきも講義してたし……!」
俺は機転をきかせたつもりで、女神に話を振ろうとした。
しかし……。
「えぇー? 何でだろー? みみ子分かんなぁーいっ」
「……はぁっ!」
まさかの知らんぷり。
女神のとぼけた態度に、俺は声を荒らげてしまった。
「ミミック族の話はしたけどぉー、あくまで生き方だからぁー、別にミミックを相棒にするなんて一言も言ってないしぃー、宝箱振り回す必要とか特にないしぃー」
「お……おまっ! おまっ……!」
「ミミ久さん、どうして……?」
止まらないプリメラの追求。
フォローする気のない女神。
「い、いや待て! 今そんな話をしている場合じゃ……!」
「ふっ、面白そうじゃねぇか……。オレにも教えろよ。ミミックとテメーとの秘密を……よ」
「……ええっ!」
何とボスまで興味を持ち始めたではないか。
ドラゴンとの戦闘中だというのに……女神、プリメラ、ボス。
なぜこうも三方向から俺が追い詰められなければいけないのか。
しかもその内二方向は味方だというのに……。
「う、う〜ん……」
それでも、とにかく味方の態勢を整えるのが先だ。
ドラゴンがいつ襲ってくるのか分からない。
やむを得ずそう思った俺は、自分の中のありとあらゆる知恵と思考をめぐらせ……。
「戦略的……リサイクルだからだ」
やぶれかぶれだった。
自分でも、訳の分からない事をつぶやいてしまっていた……と自覚はあった。
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