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プロローグ3 という訳で、ミークは死にました

 俺はいたたまれない気持ちになっていた。


 ミークがログナスたちに対して、必死に懇願していたからだ。

 どうにかパーティーに置いてくれないだろうか。

 今まで以上に荷物持ちや雑用を担うから。ログナスたちのためなら何でもするから……と。


 ミークは不安そうに、ログナスの方へ視線を送る。彼の方は考えた素振りを見せたのち……。


『ミーク、残念だけど、君とはここまでだ。別れよう、これ以上はやっていけない』


 リーダーにまで、愛想をつかされてしまう。

 もはやこのパーティーに、ミークの居場所はなかったのだった……。


「こうしてミークはしばらくの間、一人でさまよい続けるの。行くあてもなく、風に流されるように」

「……………………」


 俺は何とも言えない気分だった。


 ミークにも落ち度はあったのかもしれない。

 宝箱で戦うというのは、確かにツッコまれても仕方なかったんだろう。

 しかしそれだけで、パーティーから追い出される何て事があっていいのだろうか……。


「そんなある日ね、ミークはある村にたどり着いたの」

「……えっ」


 考え事をしていた。そのせいで、場面が切り替わっている事に気がつかなかった。


 空がオレンジ色に染まっている。

 太陽が沈みかけ、それから離れた空から星が見えている。

 一言で言えば、何となく寂れた村だった。

 暗くなり始めたのもあって全容は分からなかったが、平原に木造の家がポツポツと並んでいるのが分かる。


 と、その時だった。小さな人影を見つけたのは。


「女の子……?」


 村の広場に一人、泣いている子供がいたのだ。


「何でこんな所に……?」

「よく見てて。ここからだから」


 俺が疑問を投げかけようとする間もなかった。

 画面が揺れつつも、子供の側に近づこうとしていたからだ。


 相手は女の子だった。

 中世ヨーロッパの田舎町にいるような、ボロい布の上着とスカートを着ていた。


『大丈夫? 君……迷子……かな?』


 ミークは女の子に駆け寄ったのだった。

 彼女は泣きじゃくった顔で何も言わず、――こくん、とうなずくのみだ。


『な、泣かないで。えと……そうだ』


 自分の名前も何もしゃべってくれない。

 まずは泣き止んでもらわなければ。


 そう思ったのだろうミークは、持ってきた宝箱に手をかける。


『ほら、見て。宝箱の中から……』


 宝箱のフタを持ち、口を開いていく。


『えっ……』


 女の子が、嗚咽をもらす。

 宝箱の中にあったのは、小さな花束。


『ほらごらん。宝箱を開けたら、花が出てきた……どう? びっくりしたでしょ?』

「……手品? いや、違うな……。そんないい物じゃないな」


 ただ、宝箱の中に仕込んでいただけ。

 正直言って、お粗末な物だった。

 しかしミークはこれで、女の子に喜んでもらうつもりだったのだろう。

 きっと、こんな子供だましでも泣き止んでもらいたかったんだと、俺は思った。


 しかし……。


『え……? ……やだ、うそ……』


 女の子の表情が、どんどん青ざめていったのだ。


「は……?な、何が起こって……?」


 俺もそうだが、ミークも戸惑っていたようだ。即座にフォローに入ろうとしていたが……。


『ど、どうかした?』

『え……だって……宝箱の中に隠していたって事で……それってつまり、私にウソをついていたんだよね……?』

『え? ウソって……』


 即座に、ミークは否定しようと、


『ち、違うよ! そんなんじゃ……! 僕はただ……!』


 しかし、女の子は震えていた。


 そして、次の瞬間。



『いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――!』



 女の子が叫び始めたのだ。


「えっ……えええええええっ!」


 大声で。耳がざわつく程の奇声を上げて。

 俺は思わず驚き、腰を抜かしてしまった。

 それと同時に、映像が消えてしまったのだった。


「それからの事態は、目まぐるしかったわ」


 映像の代わりとでもいうように、女神が前に出て、語り始める。


「女の子が悲鳴をあげたせいで、それを皮切りにみんなが大騒ぎ。家から飛び出した村人たちが襲いかかって一転、ミークは追われる身となってしまったわ」

「な、何で……? 些細な事だったんじゃ……?」

「あの村……いえ、あの世界の人たちは、嘘や騙しがとにかく嫌いなの。そんな輩がいたら、絶対迫害しちゃう。ひどいときは……」


 言いかけた所で、女神は口をつむぐ。そして話を軌道修正してきた。



「それでゾンビのように村人たちが群がって。追われたミークはすってんころりん、不幸三昧。ハチに襲われぶんぶんぷすぷす。矢が飛んできてはおしりにちんちくつんつん。石につまずいてどんがらがっしゃん。おまけに崖から落っこちて地面にどったんばったん。……返事がない。ただのしかばねのようだ」



「…………………………」

「という訳で、ミークは死にました」


 俺はあ然としていた。言葉が出なかった。

 そ、そんな理由で命を落とすとか……。

 いやおい。色々ありすぎて、ツッコミも理解も追いつかないぞ……?


「ち、ちなみに、楽しそうな擬音が混じっていたようだけど……?」

「彼、とってもかわいそうだったから。善意のつもりが報われなくて……。だからね、楽しい言葉で、ちょっとは和んでもらおうって思ったの」


 いや、全く和まないんですが……。


 この落差、何? どうしたらいいの……? 泣いたらいいの? それとも笑ったらいいの……?



 読んでくださりありがとうございました。


「面白い!」

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