23 全力でおいでよっ!
まるで主人公のように、強気で攻める女神。
一方の俺は、彼女ほど動けなかった。
怯えていた……という訳じゃない。
見とれていたのだ。
暗闇に目が慣れ、見えてきたドラゴンの姿を。
俺は、ツバを――ゴクリ、と飲み込んだ。
それは、確かに女神の言う通り、巨大な怪物そのものだったからだ。
まず、俺の背丈はゆうに超えている。
例えるなら、十階程の高さのビルを見上げるような感覚だ。
暗い部屋で目が慣れてきた事で、見えてくる輪郭。
鋭いカギ爪に大仰に生えたコウモリのような羽。
重機のように頑強そうな尻尾に、伸びた首の上から覗かせる、鋭い牙と禍々しく血走った眼球。
まさに、ゲームや漫画で見た、ドラゴンそのものだ。
かつての日本で何度もその姿を見てきたとはいえ、生で見るのは初めてだ。
俺は内心、その圧倒的な存在感に震えていた。
……が、巨大なモンスターの影ーードラゴンも怯んでいるのは同じようで、俺たちに対し爪をおろし、後ずさるように気配と足音を響かせている。
いや、ドラゴンも大事だが、他にも確かめなければいけない事がある!
「なあ、アイツ、俺に向かってレベル一って言っていたんだけど……それって、どういう……?」
「……モンスターの中にはね、私たちと同じように相手のレベルとステータスが見えるモンスターがいるのっ」
「……ええっ!」
予想はしていたが、それでも驚いてしまった。
「じゃ、じゃあ、あのボスみたいなのがこの異世界中にウヨウヨしているっていうのか……?」
「そうでもないよっ。アレはモンスターの中でも特別……そう、突然変異みたいなモノだからっ」
「と、突然変異……」
「――喰らいやがれ! ドラゴンッ!」
俺と女神が話をしている隙に。
ボスの怒声に合わせ、ドラゴンの爪が降りかかってきたのだ。
「――なっ」
俺が叫ぶ間に、ソレは視界を覆っていた。
以前よりも、輪郭を捉えられるようになってきた位に鮮明に。
爪一本が、俺の体格以上はあった。
……しかし。
ーーカアアアアアアアアアアン!
「な……何ぃ!」
金属音と同時に、またもはじかれてしまった。
さっきと同様、ミミックが俺の腕を動かし、ドラゴンの爪にぶつかって威力を相殺したのだ。
腕に衝撃は感じるものの、俺には特に何の問題もなかった。
「どうせなら、全力でおいでよっ。油断していると、喰われちゃうわよっ!」
「クソが……! さっさとくたばれ!」
女神の度重なる挑発に血が上ったのか、幾度となく巨大な爪が襲いかかってくる。
しかし、俺には何の事もなく、ミミックで一つ一つそれら攻撃を振り払っていくのだった。
「す、すごい……」
金属と爪がぶつかり合う中で。
プリメラが、感心しているようだ。
「でしょー? すごいでしょー? ミミックのレベルは七十八。ドラゴンだってきっと倒せちゃうわっ!」
「わわ……そんな高レベルだったんですね……。どうりで、ドラゴン相手にひるんでいない訳です」
「そうなのっ! これで安心したでしょ? これなら何の心配もなくボスも倒して仲間を救出できるわっ! ね、ミミ久!」
「あ、ああ……そうだな……」
女神たちのやりとりに、俺はただうなずくしかなかった。
激しく繰り広げられる、ドラゴンとミミックとの攻防。
お互いが一歩も譲らない。
キバとツメのぶつかり合い。鳴り響く金属音。
時にドラゴンが体をくねらせ、ミミックが勇猛果敢に飛びかかっていく。
そんな苛烈な戦闘を、俺はぼんやり眺めている。
そう、俺は、眺めるだけだった。
ミミックがいつの間にやら俺の手から離れ、――ドラゴンと戦っていたのだから。
読んでくださりありがとうございました。
「面白い!」
「続きが気になる」と思った方は、
広告の下にある☆☆☆☆☆からの評価をクリックしてもらえるとありがたいです。
面白ければ★★★★★、つまらなければ★☆☆☆☆でも構いません。
また、ブックマークへの登録をしてもらえると執筆の励みになります。




