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20 ……むにゅ?

 目の前に存在しているのは、ちょっとしたビルくらいに全高が高くかつ巨大で、重量感を感じるような鋼鉄の門。

 さらに、龍が人間に対して暴れる様子が描写されており、その彩色センスはケバケバしく、いかにも洞窟のボスが悪趣味という事が窺えるというもの。


「開けてみよっ?」

「いやけど、……動くのか?」

「ミミックに触れたまま手で押してみるの。そしたら大丈夫だよっ」

「そ、そうなのか……?」


 確かに、ミミックを掴んだ瞬間、力がみなぎる感覚はあったけど……。


「……開けるぞ」


 俺は女神の言う通りにミミックに触りつつ、扉に手をかける。


 ……ああ、確かに重い。

 けど、思ったほどじゃない。

 このまま力を込めていけば、動かすのはたやすいだろう。

 そう思い、腕を前に押していく。


 ――ギギギ……と、きしむ音が鳴り響く。

 地面がこすれる音。

 鋼鉄の扉が開かれ、部屋の中から光が差しこんでくる。


「広い……」


 俺は思わず、声を漏らしてしまう。


 それほどに洞窟のくぐってきた階層とは比較にならない広がりぶり。

 松明の数も多いが、全てを照らしきれず、奥にまで光が届かない。

 闇に包まれている。


「ここに、捕らわれた冒険者たちが……」


 俺が周囲の暗い景色に目を配っていた。

 その時だった。


「……ぬっ!」


 殺気を感じた。

 風を切る音。 ーー刹那!


「――危ない!」


 女神が叫ぶ。

 そして勢いよく地面にしゃがみ、俺もつられて地面へ倒れ込んでしまった。


「なっ……!」


 俺が声をあげた――刹那。


 ――ゴォォォォォォォ……!


 吹き抜ける風切り音。

 背中越しに感じる殺気。

 そして背中の重量感がなくなっている。


「これ……攻撃……?」


 俺の目の前に転がる、口が開いたままの宝箱。

 ここまできて、ようやく事態を飲み込めてきた。

 間一髪だった。……真っ二つに別れてしまった毛皮を見て。


「ミミ久、立とう。これ以上擬態できないよっ」


 女神に促され、俺は立ち上がろうとする。

 背中が微かだが、震えている。

 不意打ちを喰らわされる恐怖に、怯えてしまったのかもしれない。

 それでも戦闘態勢に入らないと。そう思っていた、その時だった。


 ――ムニュ。


 手のひらに、柔らかい感触。


「……むにゅ?」


 布のような、温かいような……。


 いや待て、ここは洞窟だぞ? 

 下は地面だ、柔らかいなんてありえない。

 何事だろうと思って目を凝らしてみると……。


「あ……」


 その瞬間、俺は全てを察してしまった。


 目の前にいたのは、眠っていたはずのプリメラ。

 ミミックの口の中に収納したはずだが、さっきの衝撃で飛び出してしまったらしい。


「あの……」


 しかも、プリメラは起きていた。

 そして、彼女の頬が紅い。

 どうしてだろうと思っていると、プリメラの瞳が下を向いているではないか。

 その先にあるのは、俺の腕。彼女の胴体……。


 まとめてみよう。

 柔らかい布、温かい感触。赤面するプリメラ。

 仰向けの彼女に覆いかぶさっている構図の俺……。


「やば……」


 ここまでくれば、もうお分かりだろう……。



 俺の手のひらが、プリメラの胸を触っていたのだという事実に!

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