18 プリメラが……悔しそうだったからだ
「待て。何者だ」
モンスターに呼び止められる。
二本足で立つ巨大な角を生やした牛のモンスター、恐らくミノタウロスだ。
俺の背丈の倍近くはある槍で、俺たちの行方をはばむ。
「……ハウンドドッグだ」
人間と同じように喋るモンスター。
ゲームでもよく見かけた光景なので多少の耐性はあったものの、正直、驚いていた。
が、正体を隠すため、俺は平静を装い答えてみせた。
「よし、通れ」
ミノタウロスによって、巨大かつ重厚な扉が開かれていく。
その先に見えるのは、到底、洞窟の規模とは思えない。
城といってもいい程の圧倒的な内装。
並ぶ彫刻。等間隔に輝く松明。
「……案外、うまくいくものなんだな」
「ねー」
訝しみながらも足を前に出す俺と、軽く返事をする女神。
俺の方は肩が震えているというのに、女神のヤツは何とも思っていないんだろうか……?
というのも、俺と女神は、モンスターのフリをして洞窟に潜入している。
ミミックでいうところの擬態、というやつだ。
「ね、私の言った通りでしょ? 十層以上地下を降りて、ここまで一回も戦闘なし!」
女神が自慢げな態度で、俺に囁いてくる。
正直、俺も驚いている。
今でも信じられないくらいだよ……。
毛皮と宝箱を重ねて持ち上げるだけの変装で、敵の目をあざむけているんだから……。
「私スゴイでしょぉ? ね、スゴイでしょぉ?」
モンスターの毛皮を重ねただけのミミック。
そのミミックの口を開けたままの状態で持ち上げ、被るように姿を隠す俺と女神。
俺が前方を歩き、女神が後方を歩く。
各層ごとに門番を務めているモンスターに尋ねられたら、俺が答える。
こんな感じで戦闘を回避し続けてきたのだ。
「ああ……さすがだよ本当……」
どうやら、モンスターの目は節穴のようだ。
こんな子供だましなハリボテに気づかないんだから。
何ていうか、拍子抜けだな。
この調子なら、ボスの元まで到着するのはたやすいんだろうな。
これまで何層もくぐり抜けてきたけど、一度も看破されていないんだ。
怪しいと思われる素振りすらない。
どうやら、この異世界でミミックへの対策は全くできていないらしい。
まあ、動き回るミミックなんて、俺も想定しようがないんだけどな。
「どうしたのミミ久? さっきからふてくされているみたいだけどぉ?」
「別に……。こうも簡単に事が運んでいいのかって思っただけだ。もっとこう、怪しまれるものかと思っていたからな……」
「え〜、いい事じゃなぁい? 無駄な騒ぎを起こさないで順調にきたんだからぁ」
「いやそうなんだが……あの盗賊たちとのように戦いが起きるものかと思ってだな……」
「なぁにぃ? ミミ久って、もしかして無双とかしたかったのぉ? 女の子の前で宝箱でも振り回してモンスターを倒しまくって、『ミミックの戦士』でもやりたかったのぉ?」
「いやそういう訳じゃないんだが……」
「はいそろそろ静かにして! 騒いでいたら私たちの擬態がバレちゃうでしょ!」
コイツは……っ。
俺は拳を握りながら、怒りの感情を押さえていく。
ちなみに女性冒険者たちのその後だが、半裸だった彼女たちは気を失った盗賊たちから衣服を剥ぎとって、洞窟の入り口付近で俺たちの帰りを待っている。
「ねぇねぇ、ミミ久?」
「何だよ……」
『静かにして!』と叱ったくせに、女神の方から声をかけてくる。
俺はイライラしながらも、返事を返してやる。
「どうしてプリメラちゃんを、彼女たちに預けないでここまで連れてきたのぉ?」
もっともな疑問だった。
眠ったままのプリメラ。
俺は彼女を、ミミックの口の中に収納して洞窟の奥へ進んでいるのだ。
……ちなみに、ミミックの口を開けているじゃないか! というツッコミが入るだろうが、ミミックのスキル:居住性の効果により、俺かミミックの意思がない限り、ミミックの口を開けたままでも追い出される事がないのだという。
まるで異空間に閉じ込められているような感覚だが、……まあその辺の仕組みは俺にもよく分からない。
……と、話を戻そうか。
「それはプリメラが……悔しそうだったからだ」
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