15 ……さて、やるか
盗賊たちに、殺意を抱かれている。
俺がやらかした数々の行為を見せられたのだから、無理もないのかにしれない。
けどな……俺だって好きでやっていた訳じゃないんだよ……。
というのも、これも女神の指示だったから。
『宝箱からコンニチハッ! そしてジョークを決めるっ。これでみんなにウケる事間違いなしだよっ! 威風堂々とした態度で披露するのがコツだからねっ!』
……だなんて言うから、半信半疑でやってみたものの……何だよこれ……。
ペンをひねったらツボミから熊が飛び出す……だから何なんだよ……。
「野郎ども、いくぞ。……分かっているな?」
「ああ、よいぞ。こうしてコソコソ隠れていたという事は、タネが分かればあとはたやすいわい……」
頬に傷をもつ盗賊の号令。
彼がリーダー格なんだろうな。
ソイツを合図に、盗賊たちが剣を、槍を、ボウガンを構えていく。
まさに戦闘態勢。殺気をみなぎらせている。
「覚悟はいいか? ヒャッハァァァァァー!」
「だまし討ちを図る者が、強いはずがありません。いっそいたぶってあげましょう……」
盗賊たちが、少しずつ距離を縮めてくる。
俺は彼らの歩幅に合わせて下がりつつ、ミミックに手を触れた。
そしてーー
「やれ」
頬に傷をもつ盗賊のつぶやき。
その瞬間。飛びかかる盗賊たち。
「モランスフォォォォォォォーム……!」
ーーバッチィィィィィィィン!
ほぼ同時に、盛大に、音が鳴り響いた。
激しく、叩きつける音。
しかし、俺は無傷だった。
「……ガッハァ……!」
やられたのは、盗賊たちの方だった。
大きな宝箱で、彼らを返り討ちにしたからだ。
倒れていく盗賊たち。その内のリーダー格が、不思議そうに口を開く。
「な……なぜ……?」
なぜ……か。
「お前たちのレベルはせいぜい二十程度」
「あ……?」
「それと比べ、俺のレベルは七十八。どちらが上かなんて、言うまでもないだろ?」
「そんな……宝箱振り回すようなふざけたヤツに……」
気を失う盗賊。
まあ、宝箱の下りは俺も分からなくはない。
とはいえ、このミミックを掴んだ途端だった。
自分のものとは思えない程び力がみなぎってくるのだ。
これもミミックの力だったんだろうか?
その割には、ステータスのスキル欄にそんな項目は存在しなかった。
それでも、この盗賊たちを倒したという結果が証明しているのだ。
ミミックを握った瞬間に襲いかかる盗賊たち。
なぜか彼らの挙動がモッサリというのか、とても遅く感じられた。
まず年老いた風の盗賊からボウガンの矢が放たれる。
次に眼鏡をかけた盗賊から、槍による攻撃。
最後に、頬に傷をもつ盗賊が剣を振り下ろす。
……がどれも遅い。
ミミックを前面に出す。
するとミミックがベロをカメレオンのように伸ばし、ムチのようにしならせた。
『……ガッハァ……!』
またたく間に、彼らの攻撃をベロでうち払う。
そしてミミックを一振り。
たったこれだけで全滅させてしまったのだった。
「一瞬だったな……。俺、レベル一のはずだったのに……それより」
俺は盗賊たちとは別の方向へ目を向ける。
その先にいるのは、身を寄せ合う半裸の女性冒険者たち。
こちらを睨むようにジロジロと警戒しているのだ。
「ねえ、誰なの、あの人……」
「知らないわよ。顔を隠しているし、何か宝箱振り回して戦ってたし……」
「宝箱とか、……うわ、意味不明……キモ」
「ってかアイツ、絶対男よ。何か私たちの身体チラチラ見てるよね?」
「え……最低……。アイツも盗賊といっしょで私たちの事……」
うん、聞こえているよ。
エライ言われようだな……。キモいとか言われたし……。
「……さて、やるか」
俺は改めて、気合を入れ直す。
ここからが、本当の戦いだからだ。
女神の打ち合わせ通り、盗賊たちを撃退した。
そして、怪しさ全開の俺に不信感を抱いているだろう彼女たち。
打ち合わせの次のステージ……。
それは、彼女たちを説得して、信頼を勝ち得るというものだった!
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