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プロローグ2 そりゃ、嫌われるよミーク……

「紹介するわ。一人目はログナス。リーダーであり、一国の王子である。代々受け継がれた伝説の鎧を着こなし、ミークたちの盾として活躍しているの」


 女神が説明を入れてくれる。ミークの前に立つ、三人の冒険者たちについて。

 そのおかげで、かろうじてこの流れについていける気がした。


 なるほど、一国の王子というだけあって、凛々しい顔つきをしている。

 さらに体格もよく、身につけた装備も強そう。

 まさに非の打ち所のない勇者って感じだ。


「次はシャークレイ。レイピア使いの攻撃担当。彼も一国の王子で、その実力は折り紙付きよ」


 二人目の紹介。さっきのログナスと違って鋭い目つきだ。

 端正な顔つきだが、どこか厳しいというか、いけ好かない雰囲気の青年だった。


「そして三人目はサラサラ。ミークの幼なじみでもある、賢者。貴族出身で、父からもらった黒い杖をかかげ、攻撃、回復といった様々な魔法を使いこなすわ」


 サラサラという名前の女性。

 俺とそれほど歳が変わらない顔つきの少女。

 銀髪のセミロングでコートをまとっており、下はミニスカートだった。


 この三人、紹介してもらったが、何となく空気が重く感じてしまう。

 みんな、暗い表情をしているのだ。

 その視線はどうも、こちらに向けられているようで……。



『つ、追放……? ど、どういう事だい……?』



「……えっ」


 突然耳に入ってきた、聞き覚えのない声。

 青年らしく明るくも、真面目さを感じる声色。


「ミークの声よ」

「え! こ、これ、ミークの……」

「ミークはね、追放宣言されたのよ」


 それから、女神がミークの背景についても色々と解説を入れてくれた。


 ミークには夢があった。

 それは、この世界にモンスターを放ち、人々を不幸に陥れた魔王を討伐する事。

 何より、悲しみにくれる人々に笑顔を取り戻したい。

 そう願ってミークは冒険者になったのだった。


 彼には仲間がいた。

 先程女神から紹介してもらった、あの三人。


 ミークは、そんな彼らと合わせて四人で世界中を旅していたのだった。


 ミークは平民出身だった。

 パーティーの役割は後方支援。

 仲間たちの荷物を管理し、地形を調べ、薬草や治療薬を素早く手配してみんなを掩護する。

 いわゆる縁の下の力持ち。


 しかし、そんな日々も終わりを向かえてしまう――


『ミーク。話があるんだ、いいかな』


 ログナスと呼ばれた男の声。


 それは、今日の出来事だった。

 ログナスがミークを呼びつける。そして……。



『ミーク、お前パーティー抜けろ』



 突然の宣告。

 放ったのはシャークレイだった。


『え……待ってよ。な、何を言うんだい? 僕が何かしたっていうのかい?』


 ミークが戸惑うのも無理はない。

 彼には理解できなかった。何か自分に落ち度があったんだろうか……と。


 シャークレイは淡々と、その理由について説明していく。


『お前がオレたちの荷物持ちとして頑張ってくれたってのは分かっているよ。けどそれって、召使いの仕事じゃね? オレたちと対等ってのがおかしいだろ?』

『わ、分かった。戦いに参加しろっていうならそうする。今までと違って前に出て、みんなが簡単に倒せるように立ち回ってみせるから……』

『イヤよ。だってアンタの戦い方、キモいんだもん』


 シャークレイに同調したのは、サラサラだ。


『き、キモい……かい? だったら、後ろの方で戦うよ。サラサラと一緒に後方から支援するって事で……』

『イヤよ! 何でアンタなんかと一緒にいなきゃなんないの! アンタみたいなのが側にいるくらいなら死んだ方がマシだわ!』

『そ、そうか……ならサラサラの背後で……』

『背後から! イヤらしい! あのねぇ、前とか後ろとか、そういう問題じゃないの。イヤなの! 存在自体が! 私たちと同じ空間にいて一緒に戦っている! その事自体が不愉快なの! 分かる?』


 おいおい、何なんだよこれ。何でそこまで言われなきゃならないんだ……?


 キモい……? 存在自体が不愉快……? ミークが何をしたって言うんだよ。

 ちょっとカワイイからって、そこまで侮辱するいわれはないだろうに……。


 と、俺があ然としていた時だった。



『アンタ、何で宝箱なんかで戦っているの?』



「……え?」

『宝箱振り回して戦うヤツの側にいる人の気持ち、考えた事ってある?』


 俺は再びあ然とした。さっきとは違う理由で。


『いや、アレって結構便利なんだよ? 大量に荷物を詰められるし、いざという時はそのまま攻撃手段にもなるし……』

『何なの便利って、ただの横着じゃない! ちゃんと武器持って戦いなさいよ! アンタが宝箱を振り回すせいで、私の荷物がいっつもグチャグチャに散らかっちゃうんだから!』

『そ、それは……』

『ねえログナス、シャークレイもそう思うでしょ? ミークに荷物をグチャグチャにされて腹立たしいって思うでしょ?』

『いや僕のはグチャグチャになっていない』

『オレも普通だけど』

『って私だけかーい!』

『ご、ゴメン……。ログナスはリーダーだし、シャークレイは怖いから、サラサラだけ仕方なく……』

『しかも消去法かーい!』


 俺は言葉を失っていた。


「……………………」


 言いたい事は色々ある。彼らにも、ミークにも事情があるんだと思う。

 なんだけど……。


 荷物番なのに宝箱を振り回して、中身グチャグチャにするって……。


 そりゃ、嫌われるよミーク……。


 読んでくださりありがとうございました。


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