07 そういう事なのですね?
夕方、夜も投稿予定です。
「旅の方。先程は彼女――プリメラ殿を助けていただいたようで、感謝しますぞ」
村長を名乗る、白いヒゲをはやしたおじいさんが深々とお辞儀をする。
それにならい、村長のそばに集まっていた村の人々まで、お辞儀をしだす。
こちらもつられて頭を下げてしまった。
思いの外丁寧に迎えられたんだから、動揺してしまったのだ。
一方のプリメラは、その場で腰をおろし、足首に薬というのか、草をすりつぶした物を塗っている。
それと口に数束もの草を頬張っていたのだ。
「あれね、薬草なんだって。そのまま食べてよし、患部に塗ってよしで、傷や体力を回復させるのによく使うんだって」
へぇー……と、俺は関心していた。
薬草自体はゲームでよく見かけたから馴染みはある。
しかしこうして目の当たりにしてみるとなるほど、薬草はこの異世界ではこう使うのかと、興味深く感じていたからだ。
「さて、さっそくですがプリメラ殿。アナタ一人だけがこの村にいるという事は……」
神妙な面持ちで、村長は話しかける。
「他の方々はもう……そういう事なのですね?」
プリメラがうつむく。数秒間の沈黙。
ややあって……。
「はい」
小さくうなずいたのだった。
何だろう、この重い空気は。
何で村に来て早々、こんな暗い影を落としたみたいになっているんだ……?
と、俺が内心でしどろもどろになっていると。
「あのー? 私たち、この近辺に来たばかりで何も知らないの〜。よかったら、お話してくれるとうれしいなぁ〜っ?」
女神が猫なで声で、村長たちの間に割り込んだのだ。
「え? あ、あの、お主は……?」
戸惑いを隠せない村長。
しかし、上目遣いで体をくねらせる女神を目で追いかけているのを俺は見逃さなかった。
「ねぇ、村長さん? もしかして、焦らしてるぅ……?」
ここからさらに擦り寄ろうとする女神。
彼女の肩が村長の胸に接触しているのだ。
「ちょっと! 何なのアンタ! 馴れ馴れしいわね!」
それに気づいた主婦層の村人が止めに入る。
しかし、村長はそれを手で制止する。
「よさぬか。彼女はただ、我らの事情を知りたがっているだけじゃ」
「で、でも……」
「まがりなりにも彼女たちはプリメラ殿の恩人。多少の粗相があったとしても、むげにできんて」
落ち着いた口調で村人たちをなだめ、村長らしい威厳をみせていた。
しかし、女神に触れるたび口元がいやらしく歪んでいた事を、俺は忘れない。
「あ、待って下さい……私が話しますから」
事態を察したかのように、プリメラが説明し始めようとしてくれた。
それにならってか、女神も村長から距離をとる。
まあ、プリメラもそうだし、重い空気を変えてくれた事に関してはナイスだと思うよ女神。
俺だったら変に重い空気を読んでしまって、何も話せないまま固まってしまう所だっただろうからな。
「あ……そう……。ふーん……どうぞ」
そして村長。
お前はあからさまにガッカリしたような表情を見せるんじゃねぇ。
読んでくださりありがとうございました。
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