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不運からの最強男  作者: フクフク
ダンジョン編
84/213

最下層_02



 レッドソードキングを倒した喜びと、念願だった剣スキルが獲得できた感動に身体が打ち震えていると、可愛らしい声が聞こえた。


「「ジークベルト様!」」


 王女とエマだ。

 二人は仲良く嬉しそうに俺にかけよると、俺を褒めたてた。

 恥ず嬉しい言葉の羅列を素直に受け止めていると、後ろからポンポンと優しく頭をなでられる。


「ジーク、いい戦闘だったよ」

「ヴィリー叔父さん! 剣スキルを取得できました! ついでに魔法剣スキルも取得してました!」


 その声に俺は勢いよく振り向き、叔父に興奮して話しかけた。

「それはよかったね!」と、叔父が満面の笑みで、さらに褒めてくれる。

 普段でも俺に甘々の叔父だが、手放しで喜ぶその姿が、強さを認められていると感じ、それが嬉しくて俺は破顔した。

 また伯爵が「魔法剣スキルがついでとは、恐れ入りましたな」と、カミルが「おまえ、すごいな!」と賞賛してくれた。

 いつの間にか俺の周りに、皆が集まっていた。

 そして絶妙なタイミングで、前方が光だし、階層スポットが現れた。


「これで帰れますね」


 王女が嬉しそうに、少しだけ寂しそうに呟いた。

 その呟きに「そうだね」と同意したところで、ゴトッと『黒い玉』が、俺たちの方へ転がってきた。

 叔父が反射的に『微風』で黒い玉を遠ざけるが、『黒い玉』は割れることもなくヒビさえ入らず、黒い霧を発するとその上に魔法陣を浮かべた。


「あの魔法陣は、召喚魔法! 誰かが干渉しているみたいだね。よほどダンジョンから出したくないようだ。心あたりは……あるんだね」


 叔父の言葉に伯爵が神妙な面持ちで応えた。


「数人いますな」

「そうですか。エスタニア王国の事情に私たちを巻き込むのはやめてほしいですが、先方は敵を選んでいるわけでもないようですしね」

「申し訳ないですな」


 二人の視線が絡む。

 叔父が呆れたようにため息を吐くと、俺に指示をだした。


「ジーク、ここは私と伯爵に任せて、王女たちを守りなさい」


 叔父は指示をだすとすぐに、黒い霧の魔法陣から現れた五匹のデュラハンに、ゆっくり近づいていく。

 伯爵もそれに追従する。

 デュラハンは、Bランクの魔獣だ。

 魔獣は、魔物より上位に存在し、全体的なステータス値が魔物より上である。

 強力な魔法や攻撃もあり、知性もある。


「ディア、エマ、ぼくから離れないで『守り』」

「「はい」」


 二人を伴って、慎重に後方へ下がる。

 叔父は、誰かが干渉していると言っていた。

 この場に第三者がいるのか、遠隔で『黒い玉』を転移させたのか。

 それともこの中に裏切りものがいるのか……。

 俺が思案していると「グッ」と、男のこもった声がした。

 声のする方に視線を向けると、カミルの胸に女騎士の剣が刺さっていた。


「ダニエラ……どうしてっ……」

「………………死ねっ!」


 カミルの非難めいたまなざしとその言葉に返答することもなく、女騎士は感情を伴わない抑揚のない声でカミルに告げると、更に深く剣を刺した。

 後ろにいた王女たちが「ヒッ」と言葉を詰まらせる。

 幸い彼らと少し離れていたため、すぐに俺は行動に移せた。

 王女たちに向け『守り』の防御を展開し『倍速』で女騎士に近づき剣を振る。

 俺の動きを察した女騎士が、カミルから剣を抜くと素早い動きで離れていく。

 カミルは地面に倒れ、その周囲が赤く染まっていく。

 すぐさま「カミル!」とかけよるが、心臓あたりに深い刺し傷があり、意識はない。

 だが息はある。


『癒し』


 躊躇することなく、水魔法よりスキルレベルが高い光魔法を使う。

 人の命がかかっている。

 隠蔽している魔属性を使用することに、戸惑うことはない。

 いまできる最大限の力で、カミルに再度『癒し』をかけ『守り』の防御も施す。

 止血はできたが、予断を許さない状態だ。

 カミルのその姿に、心を決める。

 相当数の魔物を殺めてきた。

 一方的に殺されかけた経験もある。

 だけど、面と向かって、人と殺し合いをするのは初めてだ。

 人を殺めることに抵抗がないと言えば嘘になるが、やらなければやられる。

 覚悟を決め、剣先を女騎士に向ける。


「仕損じたか。赤の魔術師だけでも厄介なのに、こんなチビに邪魔されるなんて! 予定外もはなはだしい。あの方に申し開きができない……ちっ」


 女騎士は、髪を振りながら悔しそうに言うと、俺に背を向け走り出した。

 女騎士の予想外の動きに後れを取った俺は「逃がすか!」と『倍速』で女騎士に近づく。

 すると女騎士は懐から『黒い玉』を出し、俺に投げつけた。

 それを回避するが、黒い玉からは黒い霧が発生して、さきほどと同じく魔法陣が浮かび、黒い霧の中から魔獣が三匹現れた。

 高レベルの魔獣を召喚する魔道具を複数所持していたことに驚く。

 警戒して女騎士から距離をとると、その隙に女騎士は、階層スポットに手をあて消えた。



***



 女騎士が消えてからすぐ、叔父たちの加勢が入り、追加で現れた魔獣三匹は討伐された。

 その後すぐに判明したことだが、女騎士の名は偽名だった。

 正確に言えば、彼女ダニエラの姓が偽りだった。

 彼女の本来の名は、ダニエラ・マイヤーで平民だった。

 叔父は『鑑定』で把握していたが、貴族を装った偽名はよくあることなので、注視しなかったそうだ。

 だから『誓約魔書』は、名前ではなく血液での契約に変更していたのだ。


「偽名で契約しても効果がないからね」


 叔父の説明にほっと安堵する。

 これで俺の情報が外部に漏れることはないはずだ。

 たが女騎士が、俺を要注意人物として『あの方』に話す可能性はある。

 あの方がどのような人物かはわからないが、魔獣を召喚する魔道具を与えることができる『裏』との繋がりが深い人物であることがわかる。 今後の行動は注意しなければならない。


「さてドロップ品の回収もできたし、カミル殿の手当も簡易的ですが終わりましたよ。あとは地上で意識が戻るのを待ちましょう。地上に戻りますかね」

「そうですな……。すぐに帰国して確認することもありますしな」


 叔父の呼びかけに、伯爵が応える。

 伯爵の言葉は重い。

 本国内に王女の抹殺を考えている輩がいるのだ。

 しかも王女付き騎士として配属されたものがその手先だった。

 まぁダンジョンに転移された時点で、不穏だったのだけどね。

 狙われた王女も事の重大さに気づいており、神妙な顔で女騎士が消えた階層スポットを見つめている。


「ディア、いろいろと思うことはあるけど、今はただ前を向いて、伯爵を信じるんだ」

「ジークベルト様……」


 俺の励ましに、王女は俺のマントをギュッと握り、頷く。

 そばのエマも王女に近づき「姫様、私はおそばにいます」と王女の左手を握る。

 マントから手を離す様子がない王女に、これは大丈夫だよね? 不安な少女を応援しているのだと言いきかせ、そっと左手をマントを握っている右手に重ねた。

 ハッと俺に視線を向けた王女は、俺の手を強く握りかえした。


 その微笑ましい様子に、叔父と伯爵が静かに会話を交わしていた。


「王女って、婚約者いませんでしたよね」

「えぇ、ジークベルト殿は?」

「アーベル家は自由恋愛なんですよ」

「それはいい!」

「いろいろとあるようですが、ジークが選んだ相手ですしね。力になりましょう」

「有難い。感謝します」


 盛大な勘違いをされ、俺の知らないうちに外堀が埋められていく。

 そうとは知らない俺は、王女とエマ、三人横並びで、階層スポットへ向かい歩いていた。



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