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不運からの最強男  作者: フクフク
ダンジョン編
75/208

二十一階層_01

大変お待たせしました。

不定期ですが、更新を再開します。



 二十一階層に下りてすぐ、叔父が「まずいね……」と 言って、悩ましげに眉間にしわを寄せ、立ち止まった。

 ダダ漏れの色気が、洞窟内に広がる。叔父に免疫がないエスタニア王国の面々は、突然身に起こった体の変調に戸惑いを隠せないようだ。

 たしか、歩くエロスと揶揄されていたっけ? 赤貴公子会の方々が、不謹慎だと騒いで、あまり表には出ていないが、俺はなかなかのセンスだと思うんだけどね。


「ジーク、なにか余計なことを考えているね?」


 察しのいい叔父が、俺に問いただすが、俺はとぼけた感じで返す。


「えっ? あー、また洞窟に戻ったなぁと……」

「苦しい言い訳だね。まぁ、考えていることは、だいたい想像はつくけどね」


 だったら、突っ込まないでくださいと、心でつぶやく。

 少し間が空いた後、叔父が階層の説明を始めた。


「二十二階層の階段は把握できているけど、距離がね……。このままだと、数日かかってしまうんだよ」

「? 十七階層は、迷わなかったじゃないですか?」

「あれはね、階段が近かったのと、ほぼ直線上にあったからね。迷うことはないよ」


 俺の疑問に応えると、叔父は顎に手を当て、悩ましげに話す。


「んーー。この距離だと『地図』スキルが必要だな。ジークは、さすがに取得はしてないよね。通常、洞窟があるダンジョンに挑むなら、地図機能付きの魔道具を用意するのが当然だけど、そんなものないしね。んーー。まいったなぁ。いっそう壁に穴をあけて進むか?」


 叔父には珍しく歯切れが悪く、肩をすくめている。

 ダンジョン内で活躍している『索敵』は、敵などの個体を把握するには優れているが、地図機能はない。今までは、草原や森だったので、『索敵』に示された場所へ向かえばよかった。

『地図』スキルね

 実は先ほど、地図スキルの取得解放条件であるレベル10になったところだ。

 つくづく運がいい。これも『幸運者』の称号のおかげだろう。

 現在のスキルポイントは3412なので、余裕で地図スキルの獲得が可能だ。

 迷わず『地図〈極〉』を取得する。スキルポイントが、残り1512となったが、気にしない。中途半端な地図ほど役に立たないものはないからだ。

 早速取得した『地図』を起動すると、目の前に洞窟の詳細な地図が展開する。

 3D機能もある。そこにボタンがあれば、もちろん押すでしょ。ポチッとな。

 おお、立体になった。まずは、上部に視点を合わせて……洞窟だから高低差がない。3Dの意味なし(笑)

 ん? 地底湖が広がってる。水中も見れるのか。おもしろい!

 んーー? 水中の奥に洞窟? 隠しダンジョンか? 進むと行き止まりだが、そこを浮上すれば……。出ました地上に!

 大きな扉がある。……これって魔術団で見た『移動門』に似てないか?

 ここから先が見えないということは、あの扉はおそらくそうなのだろう。

 気になるが、踏破が先決だ。

 3Dから2Dへ切り替え、ヘルプ機能のボタンを押す。



 **********************


 ご主人様、寂しかったです。


 **********************



 やはり使えたか、ヘルプ機能!

 地図スキルにも、アクセスできるようだ。

 ヘルプ機能って、いったいなんなんだ?

 気にはなるが、深追いはしない。



 **********************


 とても残念です。


 **********************



 いやいや、質問をしても、ヘルプ機能、答えないでしょ。



 **********************


 …………。


 **********************



 ほらね無言。今はその時期ではないんだよね。

 わかってるよ、はいはい。

 精霊の森だよね。でもまだまだ俺は、行きませんからね。

 当面の問題を解決して、もう少し成長したら考えるよ。

 さて叔父に『地図』スキルを取得したことを伝えるのは、いろんな意味で危ないから、ここは称号に頼りますか。


「ヴィリー叔父さん、僕が先導します」

「ジーク?」

「僕の『幸運者』の称号を信じてください」と、叔父にだけ聞こえる音量で伝える。

「そうだね。それに乗っかってみようか」


 叔父の同意を得て、俺は隊の先頭に出る。

 もちろん『地図』スキルは起動中だ。

 戦闘のため、俺ひとりが先行することは、もうあたり前なので、誰も疑わない。


 途中で、Dランクのガーゴイルとキラーバットの団体に遭遇するが、油断はできない。ガーゴイルは石化に、キラーバットは毒の魔法を使うので、注意が必要だ。

 洞窟内での戦闘は、コンパクトにほかに影響が出ないよう、最小限の魔法で仕留めるのが常だ。

 崩落とか落下なんて、嫌だしね。

 制御できるようになった『疾風』で、モンスターたちの羽を切り落とし『灯火』でとどめを刺す。

 数十匹いたため、騎士たちも手伝ってくれる。狭い洞窟内の戦闘で、仕留め損ねて反撃され、逃げ場を失ったら困るので、手出し無用とは言えない。


「ガーゴイルが、三匹交じっておりますな」

「バルシュミーデ様、ほかの者が先行しているのでしょうか?」

「他者が先行している反応はないよ」


 伯爵と男騎士の会話に、叔父が割り込む。

 ガーゴイルは、本来、門番の役目をしている魔物だ。小部屋などに置いてある石像に紛れていて、ある一定の距離に近づけば襲ってくるのだ。

 その魔物が野放しでいる。先行者がいると、考えても仕方がない。

 だけど、叔父の『索敵』に反応がないことから、その線はなしだ。


「貴公の『索敵』の範囲外の可能性もあるだろう」


 なにも知らない男騎士が、叔父に強く言った。


「私の『索敵』は、二百キロだよ。その範囲内でダンジョンに入ってから、君たち以外の反応がないんだ」

「二百キロだと!? ありえない。俺たち騎士団の中で『索敵』が得意な奴でも、せいぜい五十キロまでだぞ、ありえない。化け物か!」

「カミルやめなさい。アーベル殿、申し訳ない」


 叔父の索敵範囲を聞いた男騎士が狼狽し、叔父に暴言を吐くと、それを伯爵がとがめ、叔父に謝罪する。


「いえいえ、伯爵が謝罪するほどのことではないですよ。ガーゴイルは、このダンジョンの仕様なんでしょう」

「そう考えるのが正しいですな。そうなると石化が厄介ですな。ジークベルト殿、羽を落としたら、まずはガーゴイルを仕留めてください」


 叔父は気にした様子もなく、淡々と意見を述べ、伯爵がそれに同意して、俺に戦闘の指示をした。

 俺は「はい。わかりました」と、素直にうなずく。

 石化は、状態異常ではあるが『聖水』『癒やし』などの魔法では、完治されない。

 聖属性の領域なのだ。

 しかも上位魔法のため、使用できる者が少ない。

 そのため、石化されると治療費がバカ高く、破産する冒険者が後を絶たない。

 このメンバーでは、おそらく俺しか使えないのだが、公開してないから十分注意しないといけない。

 叔父の『索敵』の結果、この先ガーゴイルの数は、少ないとわかった。

 安心はできないが、進まないと二十二階層にたどり着けない。

『地図』と『索敵』を統合できたらいいのに。



 **********************


 承知しました。

『地図』スキルに『索敵』スキルを統合させます。

 統合には、スキルポイント1000が必要です。

 統合しますか?


 **********************



 普段のヘルプ機能の声とは違う、機械的な声が突然頭に流れた。

 突然すぎて、びっくりするわ!

『地図』スキル起動中だから、反応したんだね。

 ヘルプ機能、できることが増えてるよね。



 **********************


 統合しますか?


 **********************



 無視かい!

 わかったよ。はい。統合します。



 **********************


 統合が完了しました。

 ガーゴイルの位置を『索敵』範囲内で、赤の点で表示します。

 その他の魔物は、青の点で表示します。


 **********************



 おぉー、便利!

 ん? 今日の野営場所として狙っていた小部屋が、青の渋滞だ!

 えっ、どうする? スルーして別の場所を選ぶか。



 **********************


 小部屋内の魔物数、67匹

 その内、ガーゴイル1匹

 魔物を排除した後の小部屋の安全度99%


 **********************



 はいはい。小部屋に行けってことですね。

 行きますよ。

 小部屋までの道のりは、青が点在しているが、数は少ない。小部屋に魔物が集中している影響か。

 左右の分かれ道を、右側へ進む。

 叔父が目配せをするが、俺は首を横に振ると、しかたないねと目が笑っていた。

 魔物数を把握していての行動に、だだ甘だよね。

 進むにつれ、道は狭まる。

 数匹のキラーバットを仕留め、小部屋の前で立ち止まる。


「ジークベルト殿、どうされました」

「この中に魔物が大量にいます。ヴィリー叔父さん、ガーゴイルの数は?」

「一匹だよ。小部屋のようだね。殲滅したら今日の野営場所に最適だね」


 あえて叔父にガーゴイルの数を聞き、伯爵や騎士の顔色をうかがう。

 うん、大丈夫そうだ。

 魔物を殲滅したら、安全な野営場所が得られるとの情報に、周囲の小部屋への関心が高まる。


「アーベル殿、魔物数は?」

「六十強ってところかな。ジーク、威力の強い魔法は控えてね。せっかくの小部屋を貫通したら意味がないからね」

「わかってます。ヴィリー叔父さんも手伝ってくださいね」

「今回はしかたないね。伯爵もお手伝い願いますか」

「承知した。カミルも一緒に来い。ダニエラは、姫様の護衛でここに待機だ」

「「はい!」」

「中にいる魔物は、スライム、オーク、ガーゴイル、キラーバット、そしてサイクロプスとゴーレム」

「Cランクとは腕が鳴りますな」

「サイクロプスが四匹、ゴーレムが二匹だ。私はゴーレムに対応しよう。ジークはガーゴイルを先に仕留めた後、サイクロプスだ」

「ジークベルト殿、ガーゴイルを仕留めた後、キラーバットの羽を落としてくれると助かりますな。私とカミルで仕留めましょう」

「わかりました。小部屋の扉を開けると同時に『疾風』を展開します」

「了解」

「承知」

「わかった」


それぞれ返事が返ってきたのを確認し、戦闘態勢が整ったところで「行きます」と、声をかけ扉を開けた。



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