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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期後編
56/209

料理革命_01



「ジークベルト、プリンが食べたいわ!」

「精霊って、食することができるの?」

「あら、食べる必要はないけれど、味覚はあるわよ」

「そうなんだ。食材で、口にしたらダメなものはないの? 例えば、肉とか?」

「ないわよ。どうして?」

「いや、偏った知識があってね。殺生したものは、口にできない……とか?」

「うふふ。ジークベルトは、面白いことを言うのね。だとすれば、何も口にできないわ。すべてのものに、生命(いのち)はあるもの」

「そうだよね……。ごめん、フラウ。変なことを聞いて」

「気にしてないわ! ジークベルトは、優しいわね。うふふ」

「プリンだったね。なら今日のおやつは、ポテトチップスも作ってもらおう!」



 あの突然の訪問から、フラウが、俺の部屋に入り浸っている。理由は、俺と仲良くなりたいらしい。俺のなにかが、フラウの興味を引いたようだ。精霊の気まぐれは、よくあることなので、あきるまで付き合うしかないようだ。


 叔父は精霊との契約を隠蔽している。

 理由は、言わずと知れた『精霊狩り』で、厄介ごとを避けるためでもある。

 この部屋でも、万が一に備えて、顕現はしていない。顕現せずとも、俺とハクには視えているので問題はないが、侍女たちには視えないので、最近では「ジークベルト様が、壁に向かって、ブツブツと独り言を……」との噂が流れ、侍女たちに心配されている。


 ねぇ、俺の評判!

 いままで、築き上げたものが……。

 そんなイタイ子を見る目で、みないで!

 はあーー。


 この屋敷で、フラウの存在を認識しているのは、父上、執事ハンスと侍女長アンナ、テオ兄さんだと、フラウが、教えてくれた。

 テオ兄さんは、フラウのうっかりで、存在を知ってしまったようだ。


「ギルベルトと久しぶりにお話がしたくて、テオバルトがいるのを忘れて、ついつい顕現しちゃったのよね。うふふ」


 フラウが、悪気もなく、あっさりと答えた。

 テオ兄さんって、かなりの確率で、大はずれを引くよね。俺の件といい、秘密を抱え込んでいる。うん。なんだかひどく同情してしまう。

 秘密の一部は、俺なんだけど……。

 テオ兄さん、ごめんね。ストレスで、倒れないでね。


 ついでに、俺の隠蔽が効かなかった理由もフラウは、教えてくれた。


「あら、知らないの? 精霊は『真実の眼』があるから隠蔽してもだめよ」

「真実の眼?」

「簡単に説明すると、そのものの本当の姿を視る眼よ。だからわたしには、隠蔽は効かないのよ! すごいでしょ!」


 フラウは、得意げな顔で、腰に手をあて、胸を張る。翠の髪が、サラサラとなびく。

 うん。かわいいだけです。


 精霊の秘密を少し教えてもらい、フラウに興味が湧く。他にも面白そうなスキルを所持していそうだ。精霊を鑑定する機会なんて、そうそうないし、鑑定眼、使ってみようかな。


「ジークベルト、だめよ! 鑑定なんてしたら絶交よ! 女の子のヒミツを覗き見るなんて、ジークベルトのエッチ!」

「えっ? どうして鑑定をしようとしたことがバレているの? えっ? 精霊って心が読めるの? それに精霊って性別があるの?」

「ヴィリバルトと同じ顔をしたもの! なにか企んでいそうなことぐらい察するわ! それに失礼よ! 精霊に性別はないけれど、わたしは女の子よ!」


 えっ? 性別がないのに、女の子なの?

 たしかに、豊満な肉体は、ありましたよ。実体験しているので、あの柔らかさは最高でした。俺も男だから、そりゃー嬉しかったですよ。

 えっ? でもあれって、作りものでしょ?

 作りものではない? フラウが、人間の女性だったら、あんな感じになる?

 えっ? それは、無理ゴリ押しじゃない?


 フラウの性別云々を思い出していると、この世界にないはずの食べ物の名前が、耳元に響く。


「ポテトチップス?」

「ガルゥ?(ポテトチップス?)」


 ハクとフラウが、仲良く小首を傾げている。

 うわぁー。かわいい! かわいすぎるっーー! これだけで、ご飯一杯はいける! 聖獣と精霊の最強タッグ! もうっ、かわいすぎだろ! やばすぎぃーー!


「それ、プリンより、美味しいの?」

「ガルゥ?(おいしいの?)」

「甘味ではないけど、お菓子だよ」

「甘くないお菓子? ならいらないわ!」

「ガゥ!(食べる!)」


 俺の簡単な説明に、きれいに意見が分かれました。

 ハクは、食べる。フラウは、甘くないならいらないと。

 んーー。でもフラウは、食べると思うな……。しかも、お気に入りとかになりそうな予感がする。

 不思議なもので、あるとつい口に入れてしまうし、手が止まらなくなるんだよなぁ。

 まずは、再現だな。


「では、料理長にお願いしにいきますか」

「「ガルゥ! はーい!」」

「ん? ハクとフラウはお留守番だよ」

「えっ、なんで?!」

「ガルゥ?!(なんで?!)」

「ヴィリー叔父さんとの約束は、この部屋だけって話だったでしょ。たぶんフラウ、部屋から出れば、ヴィリー叔父さんに強制回収されるよ。ハクは、料理長NGだったよね」

「そんな……」

「ガゥー(そうだった)」


 両手を頬にあて、口を開けたまま、固まるフラウと、頭を垂れて微動だにしないハクのあまりにも素直すぎる反応に、思わず、笑ってしまうのだった。






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