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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期後編
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ハクと魔法_06



 謹慎期間中は、ハクと一緒に魔法の修練をし、技術を磨いた。

 マリー姉様にお願いし、侍女付きなら庭に出てもいいとの許可をえる。

 もちろんハクも一緒にだ。

 そして、マリー姉様の過保護対象が増えたことを報告しておく。


 謹慎期間が終わり、第三週の二日目、そう今日はテオ兄さんたちとの狩り日だ。

 もちろんハクも同行する。

 事前にテオ兄さんには、許可をとった。兄弟間でも根回しは大事だ。

 ハクは、魔物を狩ったことがないそうで、昨日から興奮してあまり寝ていない。

 玄関先で馬車を待つ間も、ペタンペタンと尻尾が上下に落ち着きなく動いていた。

 興奮と緊張がこちらにも伝わってくる。

 遠足前の子供だなと、その微笑ましい様子にクスッと笑みが漏れ、落ち着かせるために頭を撫でる。

 そして緊張のあまり、馬車の踏み台を踏み外すというハプニングを起こした。

 御者が慌てて支えようとするが、ハクは見事に着地していた。

 一応、聖獣ですから、運動能力はズバ抜けてはいる。

 再度踏み台に足をかけようとして、ハクの動きが止まる。幾ばくか思案したあと、勢いなしで跳躍し馬車に乗った。

 また踏み外してはだめだと思っての行動だろう。ただ褒められた行動ではないので、あとで注意する。

 貴族は体面を保つことも重要なのだ。

 その様子を静観していた侍女も御者も、魔獣が踏み外した事実が衝撃だったようで、目が語っていた。


 ハクは馬車に乗ると、すぐ俺の膝に頭を乗せ、体勢を整えた。

 馬車も初体験のため、緊張しているようだ。

 ゴトゴトと動く馬車に合わせて耳がピクピクと動いている。

 前でその様子を見ていたテオ兄さんが思わず「かわいいね」とこぼすほどだ。

 うちの子、めちゃくちゃかわいいんですよ。

 声には出さず、内心で萌える俺。

 馬車の中は、のほほんとした雰囲気に包まれ、目的地に進んでいった。


 今日の狩場は『白の森』だ。

 俺が魔法の修練を始めてからは、近場ではあるが白の森以外の狩場にも同行させてもらっている。

 ただ今日はハクのLvUPのため、『白の森』だ。

 言うなれば、ハクの『白狩り』だ。

 テオ兄さんは、快く引き受けてくれたが、ニコライには事情を説明していなかったようだ。

 白の森の入口付近に、金髪の長身が不貞腐れたように立っていた。

 あぁー、前もこんな感じだったよなーと思う。

 ふとテオ兄さんの顔を覗き見ると不敵な笑みを浮かべていた。

 あっ前回の件、根に持っていたのか。意外だなぁと思っていたら、テオ兄さんと視線が合う。

 …………おっ、おれは、なっ、なにも見ていないです。

 腹黒兄さん、ここに降臨。ガクブルッ。


「ニコライ、どうしたんだい?」

「テオ、説明しろ」

「説め「ニコライ様、お待たせしました」」


 げっ! テオ兄さんの言葉と被ってしまった。

 すみません、邪魔する気はありませんでした。

 テオ兄さんしか視界に入っていないニコライへ挨拶をしただけなんです。

 決してテオ兄さんの邪魔をする気はありません。

 もう存分に前回の鬱憤を晴らしてください。

 ぼくは下がりますので、そんな目で見ないでください。

 声にならない声で、訴えてみる。


「なっ、ななっ、な、な、な、なんだ!」


 俺が心中で大反省して、テオ兄さんに許しをえていると、ニコライが狼狽した声を上げた。

 驚くような速さで、数歩下がると、震える手でなにかを指さす。

 その方向には、早く狩りに行きたいとソワソワしているハクがいた。

 その反応に俺とテオ兄さんは、顔を見合わせる。

 まさかとは思うが、その図体でこんなにかわいい子が苦手とかないよね。


「ニコライ、まさかハクが怖いなんてことないよね。魔物を討伐しているしね」

「怖くなどはない! 魔獣の赤子を初めて見たので驚いただけだ!」

「そう、ならいいけど。今日はハクのLvUPだよ」

「ガウッ!(よろしく!)」

「おっ、おう!」


 テオ兄さんの問いかけに、強い口調で返すニコライ。ただ目が完全に泳いでいます。

 しかも、ハクの声にさらに数歩、後ずさっている。

 本当に大丈夫かと、心配している俺とは別に、テオ兄さんがとても楽しそうです。

 アーベル家の血筋やはりここにもあったか……。こえぇーー。





***





 どうもニコライは、人に飼われている魔獣にトラウマがあるようだ。

 道中も「近くないか」「急に動かないか」「噛まないか」と、ハクを意識しすぎている。


「ニコライ様、そんなに怖がらなくてもハクは噛みついたりしませんよ」

「怖くなどない!」

「そうですか……。ハクおいで」

「チッ、チビ、ここは一度話をしようか、なっ!」

「どのような話です?」


 俺の問いかけに「いや……。その、なんだ「ガルゥ?(どうしたの)」ヒィ」と、後ずさっていく。

 ニコライの態度にハクはとても悲しそうだ。

 頭を撫で「悪い人ではないんだ。ただトラウマがあるみたいなんだ。ハクが嫌いなわけではないよ」と説明する。

 耳をピンと立て、テオ兄さんの横に逃げたニコライをジッと見つめ「ガウ(大丈夫)」と鳴いた。

 やはりハクは賢いなぁと、手触りの良い毛を撫で上げる。

 うちの子、こんなにも賢くてかわいいのに、近づくことすらできないなんて、ニコライ不憫だな。

 いずれ慣れるとは思うけど、ニコライは戦力外とそうそうに判断した。


 ハクの初めての狩りは、あっけないものだった。

 ホワイトラビットと遭遇した瞬間、ハクは駆け出し、前足で首を裂いた。

「ガルーー!(狩ったぞーー!)」と勝利の雄叫びを上げる。

 ハクには事前にホワイトラビットの姿絵を魔物図鑑で見せていた。

 そのため瞬時に行動できたのだと思うが、早すぎやしないですかね。

 テオ兄さんが『魔法鞄』でホワイトラビットを収納している。


「赤子でもやはり魔獣だね。攻撃力がすごいね」

「それにしても、あっけないものですね」

「それをジークが言うかい」


 呆れた表情のテオ兄さんに俺は苦笑いをするしかない。

 確かに俺は、ハクのことは言えないと、自嘲する。

 ハクのLvUPは、ホワイトラビット八匹だった。人とは違い上がりにくいようだ。

 まぁ無事にレベルが上がり、ほっとした。これで多少の無理はできるだろう。






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