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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期後編
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ハクと魔法_03



 しばらくすると、マリー姉様が庭に現れた。

 俺とハクの姿を確認し、叔父へ声をかける。


「お呼びですか。ヴィリー叔父様」

「マリー、急に呼び出してすまない」

「いいえ、今ちょうど休憩をしていたところなんです」

「それはよかった。マリーは聖魔法を取得したよね」

「はい。遅くなりましたが……、やっと、聖魔法を使えるようになりました」

「遅くなんてないさ。よく頑張ったね」

「間に……、合いませんでした」


 マリー姉様の声が急に詰まる。

 あぁ、そうだった。マリー姉様は、母上の病を治すために、光魔法の修練を欠かさず、ほぼ毎日していた。

 聖魔法の取得は、母上のためだったはずだ。

 母上が亡くなって四年。マリー姉様は、修練を続けていた。


「ごめんなさい。気が高ぶってしまって……」

「大丈夫だよ」

「お話とはなんでしょうか」

「マリーは『浄化魔法』が使えるのかな」

「お恥ずかしながら、魔力値が足らないようで、まだ使えません」

「そうなんだね。んーー。それは困ったな」


 肝心の浄化魔法使えないのか、マリー姉様!

 いや、マリー姉様は悪くないんだけどね。光が見えたと思ったら、その先は崖だったみたいな気持ちだ。遠回しすぎるけど、そんな感じだ。

 落胆する雰囲気の中、マリー姉様が遠慮がちに話す。


「あの浄化魔法は使えませんが、『浄化の石』はあります」

「『浄化の石』を持っているのかい!?」

「はい。なにかのお役に立てるかと思い、五年ほど前にお爺様に買ってきて頂きました」

「五年前? もしかして『リンネ』のものかい?」

「はい。『リンネ』のものです」

「リンネ製であるなら間違いない。しかも、父さんが購入したものとなれば相当良い物のはず。マリー、それをハクに使用してもいいかい?」

「どういうことでしょうか?」


 叔父はマリー姉様に、状況を説明する。

 マリー姉様は説明中に「まぁ」「可哀想に」「ひどい」と感想を述べ、ハクに近づくと「すぐに持ってくるからね。もう大丈夫よ」と、淑女らしからぬ動きで庭を後にした。

 あぁ、いつぞやの俺への行動と似ていない気はしない。これはハクも過保護対象に入ったかも……。一抹の不安が残る。

 とっ、とりあえず、それは後で考えよう。

 なにより今は、ハクが魔法を使用できるようになるのだ。

 俺は喜びに全身震える。当事者のハクも、尻尾が忙しなく動き、瞳の輝きが増していた。

 駆け回って吠えたいのをグッと我慢して、静かに俺のそばに座りなおす。

 俺はハクが隣に座ったと同時に、叔父に向き直り、頭を下げた。


「ヴィリー叔父さん、ありがとう!」

「ジークまだお礼は早いよ。それに私は何もしてないからね」

「いいえ、ヴィリー叔父さんがハクを視てくれなければ、原因がわかりませんでした。本当にありがとうございます」

「ガゥーー!(ありがとう!)」


 俺とハクは、同時に叔父に抱きついた。

 それを簡単に受け止め、叔父の呟きが辺りに響いた。


「まいったな。本当になにもしていないんだけどね」


 チート叔父最高だぜぃーー!





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