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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期後編
38/208

出会い_02



 沈黙の森に到着してから、約二ヶ月が経つ。

 一部ではあるが、森の中の位置も把握できつつある。方向感覚が麻痺している中、なぜ迷わないのか、それは前世の本での知識が役に立っているからだ。伊達に何年も家に籠っていない。引きこもりではない。友人もいたぞ。ただ不幸体質で、外に出ると迷惑をかけるから、極力外は避け、家に居てできることをしただけだ。その知識が活躍しているのだから、あの時間は、有意義なものだった。

 サバイバル知識を有効活用し、今日も森の奥へ進んでいく。

 林道を歩いていると、不審な気配を察し、足を止めた。


 んー……? なんだ? 何かいる。


 草の間から白い物体が眼に入る。

 すかさず、鑑定眼と念じた。



 **********************

 白虎 オス 0才

 種族:聖獣

 Lv:1

 HP:2/100

 MP:10/100

 魔力:100

 攻撃:100

 防御:100

 俊敏:100

 運:100

 魔属性:雷・氷


 身体スキル:炎耐性Lv1

 技能スキル:心眼Lv1


 状態:瀕死

 **********************



「白虎? えっ? 白虎! 聖獣!」


 鑑定結果に驚きの声を上げる。

 白虎は、俺の声に気づくと、ゆっくりと立ち上がり、ギラギラとした眼で威嚇する。

 全身は血だらけで、皮膚は焼け焦げている。


 その様に、昨晩の夕食時の父上との会話を思い出す。

 たしか、帝国の冒険者が白虎の赤子を捕まえたらしく、近々開催されるオークションに出品するとの情報だった。帝国主催のオークションのため、我が国は関与できないが、希少種の聖獣は各国で保護の対象とする動きがでていた最中だったと、父上は珍しく荒れていた。


 んー……? あれは!


 白虎をよくよく見ると、焼け焦げた皮膚から、僅かに魔法色が滲みでている。

 魔法色とは、高度な魔法を使用することで生じる魔力の色だ。魔法にも純度があり、魔力の量や質が高いほど、純度が高く高度な魔法となる。高度な魔法ほど色が残りやすい。

 魔法色を残すほどの魔術師は、国が重宝するぐらい貴重なのだ。

 白虎を捕獲する魔術師か……いや冒険者だな。

 この白虎は、おそらく件の赤子だろう。

 拘束した魔道具を破壊したのか、首回りに深い傷があり、胸の辺りまで血が流れて固まっている。

 瀕死状態の白虎は、フラフラになりながらも立って威嚇する。


「グルッルルル(ちかづくな!)」


 その言葉を無視し、白虎に近づいていく。

 白虎は、立つだけで精一杯なのか威嚇はするが、その場から動こうとはしない。

 手を伸ばせば、触れる距離まで近づくと、立ち止まり怪我の状況を窺い見る。


 んー……。これは、ひどい。

 遠目からでも、ひどい状態だと分かったが、近くで確認すると首回りの刺し傷は貫通しており、焼け焦げた皮膚は、感染して傷口が膿んでいる。

 この状態で、よくここまで逃げてこられたな。すごい生命力だ。

 よし。『癒し』『再生』『洗浄』でなんとかなるかな。


 これ以上、傷口を開かせないように、ゆっくりと白虎に手を近づける。

 治癒系や補助系の魔法は、相手に触れた方が効果が上がるのだ。

 白虎の皮膚に手が触れた瞬間「いっ」腕に激痛が走った。


『癒し』


 白虎の全身が淡い光に包まれる。

 俺の腕に噛みついたまま、白虎は驚いた声を上げた。


「ガウッ?(なんだ?)」

「まだダメか……『癒し』『癒し』『癒し』…………『癒し』」


 傷口が、徐々に癒えていくのがわかる。火傷の跡も綺麗になっていく。

 数十回の『癒し』で、ほぼ完治した。

 魔法色の残った傷を回復するのは、難しい。普段の四倍以上、時間と回数がかかった。


「よし次は『再生』」


 剥き出しの皮膚から、白い毛が生えてくる。

 よしよし上手くいった。お次はこれだ。


『洗浄』


 赤く染まった身体が、美しい白に染まる。

 うわーー。フワフワの毛! 真っ白! 素晴らしい! モフりたい!

 勝手にモフったらダメだよね。今は治療の一環で触っているけれど、撫でたらアウトかな。

 モフらしてって、あとで頼んでみよう!

 えっ、モフるの拒否されないよね。拒否されたら、めちゃくちゃ落ち込むけど……。

 一抹の不安を残しつつ、白虎に声をかけた。


「もう大丈夫だよ」


 すでに白虎からは、威嚇はなく、キョトンとした顔をして俺を見ている。

 しばらくすると、耳がペタンと下がり、慌てて腕から口を離し、傷口を舐めはじめる。

 その行動に愛しさが募る。

 まじ良い子。かわいい。

 噛まれた傷は痛いけれど、白虎の行動がとても健気で泣ける。

 白虎を安心させるために、『癒し』の魔法をかける。

  

「ほら、俺は大丈夫だよ」


 舐めていた傷口が、目の前で綺麗に治り、白虎は一瞬驚いた顔するが、次の瞬間、耳がピンと立ち、瞳が輝きだす。

 うわぁ。なにこの子。可愛すぎる。どうしよう。まじでかわいい。

 内心萌えつつ、白虎に俺が無害であることを説明して、その場に座り込む。


 腕の傷は、出血していたがたいしたことはなかった。

 白虎が瀕死状態だったため、本来の力を発揮できなかったのだろう。

 幼児の腕を噛み切るぐらいの力はあるはずだ。骨まで達していないこともよかった。

『癒し』一回で完治したことは、幸運だった。

 じつは、魔力をほぼ使い切ってしまったからだ。

 あぁーー。帰りどうするかな。

 あと数時間経てば、魔力は回復するけれど、遅くなりすぎるとまずい。

 俺が屋敷内にいないとなれば、マリー姉様、発狂するよね。

 あははっははは。まずいな……。

 それに、いま魔物が出没したら、相当厄介だな。

 悪目立ちするのを考慮して、MP回復薬の購入を避けたのもいたい。 

 あーー。行動が裏目裏目に出ているよ。


 物思いに耽っていると、突然、黄色い光が全身を覆う。



 ***********************


 白虎との契約が成立しました。


 ***********************



「はあぁーー!?」


 空気を読まない無機質な音とその内容に驚愕し、慌ててステータスを確認する。



 **********************


 魔契約:白虎


 **********************



 なぜこうなった!

 落ち着け俺! 落ち着け俺! 落ち着け俺!

 ここはひとまず深呼吸するのだ。

 スーハー。スーハー。

 落ち着くんだ俺!


 魔契約をする方法は二通り。魔力契約と真名契約のはずだ。


 真名契約は、真名を教えてもらい契約する方法だ。

 精霊との契約が主だ。稀に上級魔獣などもこの方法でできる。

 魔力契約は、契約者が従属魔法を発動し、従属側が契約者の魔力を受け入れる方法だ。


 その二通りのはずなんだが、他にも契約方法があるということか。

 犯人であるだろう俺の前に座っている白虎を見る。


「お前が……したのか?」

「ガウッ!(そうだ!)」


 嬉しいのか、もの凄い勢いで尻尾を振っている。

 その仕草に、かわいいと萌えつつ、現状の問題に目をむける。

 ほんの少し前に、瀕死状態の傷を完治させた。

 恩義を感じた。まぁわかる。

 なにか御礼がしたい。まぁわかる。

 喜んでくれるものがいい。まぁわかる。

 そうだ魔契約しよう。まぁわからない。

 

 俺は、一旦考えることを放棄した。






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