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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期前編
32/211

魔物討伐_01



『灯火』


 火矢をイメージした火魔法は、ホワイトラビットの急所を射抜く。

 これで二匹目だ。


 白の森に入るとすぐにホワイトラビットと遭遇した。

 ホワイトラビットは名の通り、見た目は白い兎だ。

 ただし、大きさは五十センチメートル以上あり、特徴として額に角が一本生えている。


「あれがホワイトラビット」

「そうだよ。弱い魔物だけど、ああ見えて素早いからね」

「チビ、得物はなんだ。俺たちで逃げないよう周りを囲んでやる」

「あっ! その必要はありません。火魔法で仕留めます」

「おいおい、火魔法で仕留めるにも、近づくだろ。素早いから逃げるぞ」

「いえ、ここから魔法を撃ちます」

「ジーク、ここからだと遠すぎるのではないかい」

「大丈夫です」


 二人の助言を無視し、俺は行動に移す。

 ホワイトラビットから目を離さず、魔力循環を行う。

 魔力制御で、威力・大きさ・持続を決め、矢尻に青い火がついた矢を放つイメージをして『灯火』を実行した。

 青い火は、一直線に、ホワイトラビットの腹に命中し、一瞬にして火に包まれ、絶命する。


「失敗した」


 急所である角の下を狙ったがだいぶずれた。また威力が弱すぎたせいで、射抜くつもりが、ホワイトラビットを焼いてしまった。

 むーー。思った以上に緊張していたようだ。

 次は、きれいに射抜いて見せる。同じ過ちは繰り返さない。


「失敗って、倒しているよ」

「緊張して狙いがズレました。魔法制御が上手くいきませんでした」

「おいおい、この距離で魔法放って一発で仕留めて、制御できてないって、なにが不満なんだ」

「んー……。言葉でお伝えするのは、難しいですね。次は失敗しないので、見ていてください」


 俺の言葉に二人は顔を見合わせ、やれやれと言った感じで首を振る。

 焼けたホワイトラビットをテオ兄さんが魔法鞄で回収し、森の奥へ足を進める。

 二匹目はすぐに見つかり、俺の描いていた急所を射抜く仕留めかたができた。


「うん、80%ってところですね」


 仕留めたホワイトラビットを見て、俺は満足する。

 そこには、角の下に直径二センチメートルほどの穴が貫通して絶命している、ほぼ無傷のホワイトラビットがいた。

 ただ穴の回りは、焼け焦げた跡があるため、そこは今後の課題だ。


「わぁーー。これはすごいね」


 テオ兄さんが二匹目を回収しながら、感嘆の声を上げた。

 ニコライは、魔法で射止めた部分の傷を丁寧に確認している。


「テオ兄さん、LvUPってどれぐらいでするんですか」

「んー。だいたい三、四匹で、LvUPするよ」

「だとすれば、あと二匹……。できれば複数同時に戦いたいのですが」

「複数同時にかい。今の戦闘を確認する限り問題ないとは思うけど、あと数匹単体で慣らしてからでもいいんじゃないかい」

「有難いお話ですが、Lv2に上がるまでのお付合いとの約束ですし、馬車の時間も考えるとギリギリかと。複数戦は経験しておきたいんです」

「そうだったね。ちょっと待って、探してみるよ。『報告』」


 風魔法の『報告』は、声を運んだり、聞いたりでき、周囲にあるものの情報を大まかに取得することができる。

 種類や個数などの特定は難しいが、大雑把に情報を得るには便利なのだ。

 ちなみに、魔物や敵を探り出すのに適しているのは『索敵』で、上位魔法となる。

 初級魔法なので、俺も使えるけれど、テオ兄さんの方が精度は高いので、ここは甘える。


「五百メートルほど先に団体がいるね」

「そこへ案内してください」

「了解。ニコライ行くよ」

「おぉー。なぁチビ、さっきの魔法は、火魔法の初級だな」

「はい。『灯火』です」

「そうか……。初級で、あの威力か……。現実だよな。ブツもあるしな……。いやいや、だけどなぁ……」


 ニコライは、俺の答えを聞くと、ブツブツと思案しながら歩いて行く。その手には、先ほど仕留めたホワイトラビットがあった。

 まぁ、言いたいことは、わかるけどね。

 本来の『灯火』は、種火みたいなものである。それが魔物を瞬殺するだけの威力を放つなんて、この世界の常識ではありえないのだ。

 明確なイメージと、魔力値が高ければ、容易にできるのだが、魔力値が高い = Lvが高いとなる。

 魔力値が高いほとんどの人が、初級魔法ではなく、上級魔法を使う傾向がある。これは主に貴族の面子が、関係しているようだ。

 確かに上級魔法は、攻撃力もズバ抜けてあり、魅力的ではある。

 だけど、コストが高く、現実的ではないので、今はパスだ。


 そっと視線をニコライに戻す。

 テオ兄さんの横で、未だブツブツ言っているが、俺の魔力値が異常であることには、まだ気づいていないようだ。

 冷静に考えれば、おかしいと思うのだが、俺の魔法が衝撃的すぎて、そちらに気がいっているようである。

 このまま気づかなければ、それでよし。そう甘くはないと思うけどね……。





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