侍女との攻防戦_03
光魔法を取得した日からスキルLvを上げるため、毎日MPが枯渇するまで『光明』を実行した。
俺には、時間だけはあるからね。
LvUPはなかなか難しく、光魔法Lv2になるまで、数百回ほど『光明』を成功させた。
苦労したぜ。
「最近のジークベルト様は、大人しいですね。アンナさん」
「奥様の本がいたく気に入っているようなの。絵本をお持ちしたのだけど興味を示さないのよ」
「ジークベルト様は、奥様が大好きですものね」
母上大好きっ子ってバレてるよ。
侍女たちよ。期待を裏切って申し訳ないが、そろそろ次の魔法書を読みたいのだ。
できれば、空間魔法!
今から修練すれば『移動』の魔法がそうそうに使えるはず。
俺の部屋にある本棚は魔法関連の書物が多く保管されている。
目指すは本棚! 無属性の初級魔法の本!
侍女たちが退出して、しばらく様子を窺う。
うん。もう大丈夫だろ。
今からだと、夕食の時間まで侍女たちは訪れない。
時は満ちた。作戦開始!
ソファへダイブ!
このダイブする瞬間が一番緊張する。
着地を失敗したことはまだないが、失敗したら床に直撃だ。
想像するだけでも、痛いっ。
使えるようになった『癒し』の魔法で回復すればいいのだが、痛いのはやはり嫌だ。
それに大惨事になったら大変だ。
まぁ『幸運者』が守ってくれると勝手に確信しているんだけどね。
ソファから床へは、後ろから慎重に降りて……よし!
前方よーし。左右敵なーし。
目指すは本棚! 前進あるのみ!
…………
…………
…………
ハイハイ中です。
しばらくお待ち下さい。
…………
…………
…………
途中、障害物の机があるが、俺には関係ない。
机の下を華麗にスルー。
目的地! 隊長! 目的地が近づいて参りました。
あと数ハイハイのところで、突然、身体が浮いた。
「ジークベルト様、お夕食のお時間まで寝ましょうね」
なぬっ?! なっ、なななぜっ、なぜここにいるアンナ!
思わぬ伏兵に驚く。
本棚が……本棚が遠のいて行く…………。
定位置に戻された俺はアンナを軽く睨みつける。
「あぅ」
「可愛い顔してもだめですよ。本日は夜に奥様と旦那様が訪れる予定ですので、たくさん寝ておきましょうね」
柔らかい布団を掛けられ、トントントンとリズムよく身体をたたく。
絶妙なトントンだが、そんなことで俺は寝ないぞ。
魔法書の確保は、今日はあきらめるとして、光魔法の修練だ。
んー? ん? んん! こっ、この布団は!
最終兵器『子供用安眠布団』ではないかっ!
アンナ! 魔道具を使うなんて卑怯だぞ。
くっ、寝るものか……。
ね……ねてたまる……か。ねっ……ねな……い……ぞ…………。
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子供用安眠布団
効果:安眠
説明:あら不思議! どんなお子様も布団を掛けただけでグッスリ安眠!
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その日から、侍女たち、いやアンナとの勝負が始まった。
そして今日も挑む!
空間魔法の取得を目指して!