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不運からの最強男  作者: フクフク
エスタニア王国中編
173/213

闇を照らす光_02



『閃光』


 辺り一面に、強い光がきらめく。


「お主、なかなか筋が良いのじゃ。この調子で『光輝』もすぐに取得じゃ」

「少し休憩」

<目がチカチカする>

「ハク、大丈夫かい? 『聖水』」

「お主、そこは『癒し』を使わんかえ。光や聖の熟練度が上がらんのじゃ」

「あっ、そうだった」


 アン・フェンガーの迷宮に籠って、数時間経っている。

 シルビアは俺の魔法を指導して、ハクは、近づいてくる魔物の討伐をお願いしている。


「間に合うかな」

「弱気じゃな。ヴィリバルトに一日時間を貰ったのじゃろ」


 俺が不安そうにつぶやくと、シルビアはすぐに反応して、励ましてくれる。


「うん。そうなんだけどね」

「なら、まだ昼にもなっておらん。このまま修練を積めば『光輝』は使えるのじゃ。まぁ安定はせん。けど、及第点じゃ」


 シルビアの言葉に、俺は「うん」とうなずいて返事をした。俺の煮え切らない態度を見て、シルビアは「何が引っ掛かるのかえ」と心配そうに尋ねてくる。

 俺は考え込みながら、「アル兄さんに使用された精霊魔法だよ」と答えた。シルビアは首を傾げて、「それのう」と納得した様子で言った。

 シルビアの反応から、この話をもう少し広げてみることにする。もしかしたら、何か新しい発見があるかもしれない。


「精霊が関与しているよね」

「そうじゃな。おそらく上位の精霊が関与しておる」

「なんで、上位の精霊ってわかるの?」


 シルビアは俺が尋ねた疑問に対して、少し難しい顔をしながら口を開いた。


「むぅ。お主は、精霊の種族が六つあるのは知ってるかえ」

「うん。火・水・風・土・闇・光、だよね」

「そうじゃ。その中でも上位と呼ばれる精霊たちがおる。その者たちには特性があり、魔法を付与できるのじゃ。『精霊の加護』というものじゃ」


 俺はその説明に対して、「精霊の加護」とつぶやきながら、胸元のリボンに手を伸ばした。それを見てシルビアは大きくうなずく。


「そうじゃ、このリボンにかけられた『結界』も、水精霊の特性じゃ」

「魔道具みたいなものだよね」

「まぁ、にてはおるが、精霊の加護は物だけではなく人にもできる」

「魔契約とは違うの?」

「うむ。精霊と魔契約すれば、精霊魔法が使えるようになる。その力は契約精霊とその者の資質により変化するのじゃ。しかし、精霊の加護はそれに依存せず、精霊本来の力が付与されるのじゃ」


 俺は「なるほど」と、相槌を打つ。


「とはいえ、精霊の加護は、特性魔法に縛られるがのう」

「どういう意味?」

「簡単に言えば、その精霊の一番得意な魔法を一つだけ加護できるのじゃ」

「ねぇ、それって」


 俺の言葉を理解したシルビアは、うなずきながら言った。


「うむ。『魅了』が光精霊の加護ではないかと妾は思うとる」

「ユリアーナ殿下が、光精霊と契約している可能性があるってことだよね」

「うむ。おそらくヴィリバルトは、その線を洗っておったんじゃないかえ」

「だとしたら、ヴィリー叔父さんから何らかの連絡は入るはず……。だけど、ヴィリー叔父さんは隷属を疑っていた」


 俺が険しい表情で言葉を選んでいると、シルビアは身を乗り出して話し始めた。彼女の声は力強く、言葉は明確だった。


「そこなのじゃ。ヴィリバルトは疑ってはおるが、確証がないゆえ、断言はできない。しかし、ユリアーナが光精霊と契約しておるのなら、お主の『鑑定』をレジストできたのも、納得ができるのじゃ」

「だけど、ヘルプ機能の調査では……」

《ご主人様、私の機能は半減されております。駄犬の言う可能性は大いにあります》

「駄犬と呼ぶなっ!」


 シルビアとヘルプ機能の激しい言い争いが始まった。

 俺はそれを横目に見ながら、シルビアとの会話の内容と過去の出来事を思い出し、深く考え込む。

 エスタニア国王の寝室で、『漆黒』が使用され、『光輝』が必要となった。この事件の主犯は、武道大会爆破計画を阻止されたトビアス一派の犯行で間違いないようだ。

 状況的にザムカイトから提供された魔道具を使用した可能性が高い。

 だけど、ザムカイトが行方をくらました後、アル兄さんが襲われている。敵側には、ザムカイト以外の腕利きの闇魔術師がいることが確定しており、今後の対策が必要だ。

 また、ガラス石に『光輝』を入れる理由は、俺自身の能力を世間から隠すことと、他国の人間が安易に国王の寝室に侵入することを防ぐためだ。

 おそらく後者が本来の理由であり、ヴィリー叔父さんの周辺に王家の関係者がいる。その関係者がユリアーナ殿下だと俺は考えていたが、シルビアから聞いた話しでは、叔父はユリアーナ殿下を警戒している。

 そもそも王位継承権を巡る争いが激化し、一連の事件が発生している。王族の中に首謀者がいる。

 わからないのが、なぜ今なのかだ。国の威信をかけた武道大会で、各国の代表がいる中でなぜ行動に移さなければならないのか。

 誰だ。誰がこの状況で優位に立つ。


<大丈夫?>


 ハクの呼びかけで、俺は我に返った。

 ハクが不安そうに俺を見つめていたので、俺はハクの頭をなでて「大丈夫だよ」と微笑みながら安心させた。

 そうだ。俺が焦っても仕方がないことなのだ。

 今は俺ができることを着実にこなすだけ。『光輝』をものにして、ガラス石に入れることに集中しなければ。

 俺は立ち上がると静かに瞑想し、魔力循環を高める。必ず『光輝』を取得する。固い決意がそこにあった。



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