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不運からの最強男  作者: フクフク
エスタニア王国中編
159/207

興味本位の果て_01


 決勝トーナメントが始まった。

 予選はバトルロワイアル式だったが、決勝は一対一の対戦方式となる。

 六十四名が決勝トーナメントへの出場権を獲得し、五回戦を勝ち進んだものが、勝者となる。

 まずは四日間かけて、三十二試合が行われ、次に二日間で十六試合が行われる。

 その後は、中一日空けて準々決勝、準決勝、決勝の運びとなる。全日程約二週間のスケジュールだ。


「あの子は棄権したのかな」

「ガウッ<残念>」


 決勝トーナメント三日目、勝者の一覧に、控室の廊下で倒れていた彼の姿はなかった。

 アルベルトたちと同日に開催された予選の組と考えれば、明日出場することはない。

 治療後、すぐに俺たちは姿を消したので、彼の体の状態が気になっていた。

 効果が高い『癒し』を施したが、いつも使用している『聖水』の方が、効果があったのではないかと、彼が棄権したことも含め、とても気になった。

 肩を落とした俺に、「ガウッ<ケガ治ったのハク見た。大丈夫>」と、ハクが慰めてくれる。

 ハクの気遣いに、俺は「ハク」と言って、その体を抱きしめた。

 隣で観戦しているディアーナは微笑ましく、シルビアは冷めた目で俺たちを見ていた。


「アル兄さんの試合は見事だったね」


 一通り感情を整理した俺は、先ほど行われていたアル兄さんの試合について感想を述べた。

 すると、方々から堰を切ったように、剣技の美しさ、火魔法の精密さ、それらを上手く活用する戦術の素晴らしさを称賛する声が届く。

 そんな周囲の反応を、俺は当然の評価だと思う。

 俺の前では、かなり癖の強いブラコンのアル兄さんだが、外に出れば、若手の有望株筆頭の第一騎士団の隊長で、冷静沈着、頭脳明晰、魔法と剣術に優れた超エリートなのだ。

 今回同行したマンジェスタの面々には、そのイメージが、俺との接触で壊れてしまったようだが、決して俺のせいではない。


《多少はご主人様の責任でもあるかと存じますが?》


 ヘルプ機能から辛辣なツッコミが入る。

 そんなはずは……。


《ご主人様が公の場での態度を強く指摘すれば、アルベルトは控えたと考えられます。マンジェスタの団員に、これほど周知されることはなかったと存じます》


 ぐっ。いたいところをついてくる。

 俺だってアル兄さんに、注意はしたんだよ。

 だけどさ、あの、なんとも表現しがたい、絶望した表情を目の前でされたら、撤回するしかないだろ。


《ご主人様は優しすぎます。心を鬼にすることも時には必要です》


 その場だけの妥協はよくないってことを、今回で学んだよ。

 それで、調査は終わったのかな。


《はい。ある意味、ご主人様も、相当なブラコンですけどね》


 うっ、だって仕方ないだろ。

 あの状態のアル兄さんを見たら、やはり心配するものだろ。


《たしかに、先日のアルベルトの言動は、いささか驚くことでした》


 そうだろう。

 あのアル兄さんが、女性への贈り物をディアーナたちに聞いたんだよ。

 俺も目を疑ったし、たまたまそばにいたテオ兄さんが、『アル兄さん、なにか悪いものを口にしましたか』と、本気で心配していたんだ。


《ご主人様も、気が動転してアルベルトの発熱を疑ったり、『鑑定眼』を用いて状態異常を確認したり、最後は私に『これが現実であるか』と問われました》


 あっ、その行動は忘れて。

 動揺したんだよ。もっとも色恋に縁遠いと思っていたアル兄さんが、異国で親しくなった女性がいるなんて、どう考えても怪しいじゃないか。

 俺は弟として、アル兄さんの心配をしただけ。まあ多少は、興味本位があったことも認めるけど。


《では、本題に移ります》


 そこは無視するんだ。


《まず、ご主人様に謝罪をいたします。やはり私の能力が制限されているようで、全貌を把握することは難しく、不甲斐ない報告となります。申し訳ございません》


 うん。気を落とさないで、ヘルプ機能。すべてを網羅できるとは思っていないよ。

 ヘルプ機能は、『はじまりの森』で神界の干渉(・・・・・)を受けてから、一部の能力に制限がかかっている。

 シルビア曰く、『主様のイタズラじゃな。時が経てば解除されるじゃろ』と、言っていた。


《お気遣いありがとうございます。では、報告を始めます。ユリアーナ・フォン・エスタニアについて》


 ちょっと待て。

 えっ!? アル兄さんのお相手ってディアーナのお姉さんなの!


《調査した結果、アルベルトが、逢瀬を重ねている相手はユリアーナ・フォン・エスタニアでした》


 アル兄さん、またややこしい相手を……。


《ユリアーナの人柄などを調査しました。ユリアーナは、『博愛の第二王女』と国民に慕われ──》


 俺の動揺を無視して、淡々とヘルプ機能の報告が始まった。



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