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不運からの最強男  作者: フクフク
エスタニア王国中編
156/209

それぞれの_04



「姉上と接触したものは誰かつかめたのか」

「申し訳ございません。いま」


 ダンッと、机を叩く大きな音が、男の声を遮った。


「すでに数日経った。貴様らは何をしている」


 遮った男の指がトントンと机を叩き、男の苛つきがわかる。


「トビアス殿下、落ち着いてください。私どもは随時報告を」

「報告? 情報もなにもなく、なにが報告だ」

「もっ、申し訳ございません」


 トビアスの怒気に圧倒された男が、膝をつき深く頭を下げる。

 その様に、こみ上げてきた怒りが収まる。

 トビアスは、机に片肘をつきその上に顔を置くと、床に頭を下げたままの男に問うた。


「エリーアスはどうしている」

「はい。エリーアス様は、アーベル家の者を私室に」

「アーベル家だと!」


 トビアスの顔が真っ赤に染まり、腰かけていた椅子を倒し、男の前に立った。


「なぜ、報告が遅い。おまえは無能かっ」

「申し訳ございません。しかし、殿下、ぐっ」


 トビアスが男の顔を蹴り上げた。

 そして、「言い訳はいいんだよ。おまえが無能で、役立たずであることがわかった」と、男の頭を踏む。

 トビアスは顎で扉の前にいる護衛を呼び、「処分しろ」と冷たく言い放った。

 すると男が絶望した顔して、「でっ、殿下。お待ちを、わたしはっ」と、乞うが、トビアスは冷めた目で一掃する。

 室内から男が消えると、トビアスは乱暴にソファに腰をかける。


「おまえの紹介は、役に立たん」

「それは申し訳なく」


 優雅にお茶を飲む男。一連の騒動にも我関せずで、傍聴していた。

 従者が、お茶のおかわりを入れる。


「ビーガー、おまえはどう思う」

「そうですね。今までエリーアス様は中立の立場を固持してきました。しかし、連日の動きから見て王太子派であるのは明確」


 そう言ってビーガーは、新しいお茶に口をつける。


「継承権を主張して第三派となることはないか」

「アーベル家と接触したことで、その線は消えたかと」


 ビーガーの言葉に、しばしトビアスが思案すると、口を開いた。


「ディアーナか。あれは見目だけはいい。あと数年すれば利用しがいがある」

「殿下。アーベル家を敵に回すのはあまり得策ではないかと」

「たかが、一国の侯爵家。なにを恐れる?」


 トビアスが挑発するようにビーガーに問うが、ビーガーは沈黙したまま、頭を横に振る。

 その態度に、つまらなそうな顔したトビアスが、なにかを思い出したのか口元を緩めた。


「マンジェスタの王太子に毒をくれてやったが、すぐに見破られた。面白味もない」

「殿下、お戯れはほどほどに」


 トビアスの突拍子のない行動に、ビーガーは目を見開くと眉間に皺を寄せ、苦言を伝える。

 予想とちがうビーガーの反応に、トビアスが沈黙した。

 気まずい空気が、室内に流れる中、ビーガーの表情が引き締まると、いつになく真剣な面持ちでトビアスを見る。


「殿下、例のものを入手しました」

「そうか。間に合うか」

「すでに配下の者に手配をしております」


 ビーガーの報告にトビアスの機嫌が浮上した。

 その口元を緩めると、「やっと、馬鹿どもに誰が王に相応しいか、わからせられる。フハハハハハ」と、高笑いをする。

 その様子をビーカーは、目を細めながら慈愛ににた眼差しで見つめる。

 しばらく、トビアスの高笑いが続いたが、折を見たビーガーが問う。


「エレオノーラ妃殿下にお伝えはなさいますか」

「よい。母上には、正式に王太子となった時に報告する」

「殿下のお心のままに」


 ビーガーが胸に手をあて臣下の礼をとる。


「なぁ、ビーガー。姉上を自由にしたのは間違いだったか」

「ユリアーナ様は、殿下を裏切ることはございませんよ」

「そうだな。いらぬ心配をした。姉上のすべては俺のものだ」


 トビアスが嬉しそうに微笑んだ。



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