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不運からの最強男  作者: フクフク
エスタニア王国前編
145/208

ヴィリバルトの秘密



「ヴィリバルト、大丈夫?」


 フラウが心配気にソファに座るヴィリバルトの周囲を回る。


「感情がとても揺らいでいるわ」

「少し動揺してしまってね」


 瞑想していたヴィリバルトが、静かにそうつぶやく。


 ジークベルトをエスタニア王国のバルシュミーデ伯爵家へ送り帰し、発狂したハクとスラの対処に追われた。

 ヴィリバルトは全てが解決した後、アーベル家の自室に戻っていた。

 今夜は、ジークベルトのそばにいることができないと、判断したからだ。

 大きく息を吐き、乱れる心を落ち着かせ、ジークベルトを想う。


 ジークベルトは、後悔していた。

 義姉さんの死に、深く傷ついていた。

 優しい義姉さん、仮主となるのは私だった。

 私が拒否したため、いらぬ()()()()を受けた。


「責められるのは、私だ」


 ヴィリバルトはぐっと拳を握り、顔を歪める。


「リアは後悔していないわ!」


 即座にフラウが否定する。

 フラウは、ヴィリバルトが悔やむ原因を知っている。

 その度に、己の未熟さを恨む。


「ヴィリバルトの代わりに至宝となったことを、リアは、ヴィリバルトの心を守れたと誇りに思っているのよ! それをヴィリバルトが否定したらだめよっ」


 フラウは涙を浮かべ、ヴィリバルトに訴える。

 ヴィリバルトの澄んだ心を曇らせた()()()がそもそもの原因なのだ。


「元はと言えば、()()()が悪いのよ! ヴィリバルトの()に気づいて目を覚ましたと思ったら、ふらふらと出てきて、無防備にヴィリバルトに接触したからっ!」


 フラウの体から魔力が漏れていく。

 その魔力が部屋全体に渦巻きはじめ、緑の瞳が徐々に光を失っていく。


()()()許せないわ! なにがちがうよ! ヴィリバルトは、ヴィリバルトなのにっ!」

「フラウ」


 ヴィリバルトが、フラウの頬を優しくなでる。

 自我を忘れ、暴走しそうになったフラウは、恥ずかしそうにうつむく。


「ちょっとヴィリバルトが嫌がったからって、拗ねちゃって、()()()が油断したのが悪いのよ! 本当に嫌になっちゃう! 神の呪いで、私がリアに近寄れなくなったのも、()()()()()()()()からよ!」


 プクーと、頬を膨らませ、フラウはヴィリバルトの肩に乗る。


 ()()()()

 帝国がアーベル家の至宝を狙い義姉さんを呪ったことまでは、わかっている。

 人が神の呪いを操ることは不可能に近い。

 しかし、それができたこと。

 私と()()()の接触で起きた弊害。


「大丈夫よ! 私が守ってあげる!」

「それは心強いね」


 無邪気に宣言する友人にヴィリバルトは微笑む。


 仮主を拒否した瞬間、神界の影響を受けない体となった。

 血の滲む努力と研究で、種族の壁を越えた。

 その瞬間、覚えのない知識と経験が、ヴィリバルトを襲った。

 人知を超える力を持ったとしても、全てを見通すことはできない。


「私は()()でも君を友とは呼ばないよ」


 古い薄れた記憶が、ヴィリバルトの脳裏によぎった。


 ヴィリバルトは、運命を外れた者。

 ジークベルトは、運命を導く者。



エスタニア王国前編は、こちらで完結となります。

次回は少しお時間を頂いての更新となりますので、楽しみにお待ちください。

いつも応援ありがとうございます。

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