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不運からの最強男  作者: フクフク
幼少期前編
13/208

兄姉の試練_02



 ――三日後の昼過ぎ。


 マリアンネたちは、裏門の木陰に潜んでいた。

 魔術省から派遣された鑑定師が、昼過ぎに裏門から来るとの情報をえたからだ。


 情報源は、あの新人侍女。

 マリアンネたちに情報を与えるきっかけとなった人物だ。

 彼女もやはり、動向が気になったようで、あれから先輩侍女に食いつき、魔術省がどのように鑑定師を送り込むのか、詳細を聞いていた。

 その様をテオバルトの『報告』で随時、把握していたのだ。

 アーベル家ではめずらしい、教育を受けていない新人侍女。伯爵家の息女で、行儀見習い中である。

 教育を受けないのは行儀見習いだから。だけどアーベル家が、行儀見習いで貴族の息女を預かるのは、ほぼない。

 テオバルトは、その不自然さに何度か疑問を持つ。

 侍女たちが、鑑定師が来ることを許容している。アーベル家はそれを受け入れたと判断していい。

 ジークベルトをそのまま鑑定させれば、大問題になるのは、理解している。

 父様たちには、なにか考えがあるのだろう。

 僕たちの出番はない。けれど、姉様を説得することは、僕にはできない。

 大人たちへ相談しても、結果は変わらないと思う。それに姉様を裏切ることはできない。

 怒られるなら、姉様と一緒に怒られよう。

 おそらく僕たちの作戦は、父様たちに筒抜けだ。

 野放しなのは、実行しても問題ないと判断されたからだ。


 小型馬車が、ひっそりと裏門に着く。

 裏門の衛士が、馬車内を確認すると、黒いマントを羽織った一人の人物が馬車から降り立った。

 身長は高く、体格もいいが、フードを被っており、その顔は拝めない。

 なぜかこの鑑定師に親近感がわいた。


「やっと来たわね。テオバルト、用意はいい」

「うん……」


 二人の作戦は、鑑定師を屋敷に入室させないことだった。

 ジークベルトにさえ、接触させなければ、鑑定はできないだろうと考えた。

 裏門から屋敷内までは、距離にして一キロメートルほどある。

 その道中で、鑑定師を穴に埋め、断念させる作戦だ。

 子供の浅はかな知恵である。

 その穴は、テオバルトの土魔法であけるので、魔力が低い人が脱出するには、時間がかかることも計算されている。

 鑑定師は、知識が豊富な人は多いが、魔力は低いのだ。

 子供だが魔力が高いテオバルトと、大人だが魔力が低い鑑定師であれば、この作戦で勝つのは前者だ。

 勝利の確信をもった二人は、この作戦を実行することにした。

 ただの落とし穴作戦ではあるのだが、有効ではある。


 案の定、鑑定師がマリアンネたちの用意した区間に入っていく。

 倉庫内でたまたま見つけた『隠蔽』の魔道具を設置した場所である。

 これも時間稼ぎの一環だ。

 マリアンネたちは、固唾を呑んで鑑定師の動向を窺っていた。

 予め指定していたポイントに鑑定師の足が着く。

 マリアンネが合図をするが、魔法を放つのに一瞬躊躇した。

 鑑定師の後ろ姿が、父様と重なったからだ。

 まさか、そんなっ。だったら、この作戦は大失敗だ。

 だけれど、作戦をやめることはできない。


『沈下』


 テオバルトは魔法を放つが、鑑定師の足元が崩れることはなく、逆にマリアンネたちのいた場所が崩れていった。


「うわっーー!」

「きゃーーーー!」


 二人の叫び声が辺りに響く。

 鑑定師は、その様子をフードの下で、心配そうにみていた。





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