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不運からの最強男  作者: フクフク
日常編
118/207

裏迷宮_01



「魔物の数が異常だな。くそっ、取り逃がしたか。チビ、援護頼む」

「はい『疾風』。ハク、右側前方にも大量のオークがいるよ。テオ兄さん後方からオーガが迫っています」

「ガゥ!〈任せろ!〉」

「了解。ディアーナ様、援護を頼みます。エマはハクの取り逃がしを頼んだよ」

「「はい」」


 ただ今大混戦中です。

 十二階層の隠し部屋に到着目前で、トラップにかかったのだ。

 魔物の反応が、ほぼなかったこともあって油断していた。

 エマの「うわぁー」という声と共に、ガゴッと、お約束の音がした。

 俺は一部始終を目撃していた。

 エマが転ぶのを回避するため、壁に手をついたら、そこが罠の発動ポイントだった。

 本当にエマは、お約束は外さないよね。

 ガタンッと、音がして足もとが揺れた直後、そのまま床ごと急激に下がっていく。

 重力を感じず、フワッと浮く感覚に「うっ」と声が出てしまう。

 俺は、絶叫系が超苦手です。

 ディアーナたちも「きゃあー」と絶叫している。

 大がかりな仕掛けに、これちゃんと止まるよねと危惧していると、徐々に減速していき、ガダンッと停止した。


「皆、大丈夫かい」

「はい。大丈夫です。エマ、気をたしかにっ」

「ひっ姫しゃまー。ヒックッ、足がガクガクして、うっ、動きませぇん」


 テオ兄さんの声掛けに、ディアが気丈に返事をするが、ディアと抱き合っていたエマは、プチパニックを起こし、立ち上がることができず、その場に座り込む。

 スラはニコライの肩から落ち、床にへばりついたようで、床と平面に伸びていた。

 あれは大丈夫そうだ。

 ハクは床が落ちた瞬間、俺に駆け寄り守ろうとしてくれたが、今まで経験したことがない浮遊感に、すぐ耳を下げて恐怖した。

 その姿に「うっ」と、情けない声を出しながらも、ハクを抱きしめた。

 いまだハクは俺の腕の中でブルブル震えている。

 乗り物酔いしたのかもしれない。

 静かに『癒し』と精神を安定する魔法をかけると、ハクが腕の中から顔を出し「ガゥ〈こわかった〉 」と鳴く。

 よしよしと、ハクの体をなで安心させる。



 ***********************


 ご主人様、いますぐ地図を確認ください。


 ***********************



 ヘルプ機能からの警告を受け、『地図』を慌てて起動する。

『地図』の迷宮階層の表示がおかしい。

 マイナス十階層ってなんだ。


「テオ兄さん、階層表示がおかしいです。マイナス十階層との表示が……。えっ!? 前方から大量のオークの反応あり。数は三十です」

「マイナス十階層? 三十匹!? ニコライ頼む」

「おぅ! 行くぞ、スラ」

「ピッ〈がんばる〉」


 床に伸びていたスラの体が正常な状態に戻り、ニコライの肩に飛び乗る。

 それを確認したニコライが、オークのもとへ向かっていく。

 その間にテオ兄さんは、ディアーナとエマに『聖水』をかけ、精神を安定させている。

 突如、地図の左側にゴブリン三十、右側にスライム五十との表示が出る。

 これはどういうことだ?

 考えている暇はない。


「左側からゴブリンです。数三十。右側からスライムの大群。数五十。スライムは、僕が魔法でやります」

「了解。ディアーナ様、エマ、ゴブリンを狩るよ。ハクは、ニコライに加戦して」

「「はい」」

「ガウ〈わかった〉」


 それぞれが、戦闘態勢に入る。

 俺は『倍速』でスライムの大群に近づき『熱風』で瞬殺する。

 スライムが青から赤に変わり、次々とドロップ品の薬草に代わる。

 薬草にも種類があり、スライムの薬草は、HP回復薬のもとになる。

 回収している先から新たな魔物が出現する。

 光の粒が集まりオーク二十匹となった。

 腰にある黒い剣を抜き、オークの大群に切り込む。

『倍速』で動きを速め、一撃々確実に急所を狙い仕留めていく。

 二十個のオークの肉がそこにはできていた。

 スラが喜ぶなと『収納』に放り込み、テオ兄さんたちの戦闘に加戦するため、もとの場所へ急ぐ。

 この階層はおかしい。

 魔物の出現を目の当たりにしたが、復活するにも周期があるのだ。

 この数は尋常ではないし、俺たちが階層に着いた瞬間から、意図して魔物が出現している。

 言った先から前方に光の集合体を確認すると、ゴブリンが十匹現れる。

 うっとうしい。

 魔力温存のため、黒い剣でゴブリンをなぎ倒す。

 剣スキルを取得してから、剣筋があきらかに異なり、低ランクの魔物なら瞬殺で仕留められる。

 スキルの有無は、雲泥の差であると、実戦が語っている。


「次から次へと、湧いてくる。くっそー。きりがねぇー」

「ピッ〈危ない〉」


 ニコライの隙をオークが狙うが、スラがそれをカバーする。ニコライの集中力が落ちている。

 魔物と戦闘を初めて早一時間、いくら低ランクの魔物であっても、数が増えれば脅威だ。

  ニコライとテオ兄さんの疲労も激しい。ディアーナやエマは、そろそろ限界だ。

 これは地味にやばいぞ。

 打開策を考えなければ、全滅する可能性もある。

 ん? なんだこれ? セーフティポイント? 

 地図上に突如、緑のマークが現れた。

 すかさずヘルプ機能から説明が入る。



 ***********************


 ご主人様、すぐにその場所に移動してください。

 魔物との戦闘をいったん離脱できます。休憩場所です。

 セーフティポイントは、人がいない状態が一定時間続くと消えます。

 

 ***********************



 おぉー。ここで天の助け。

 消える前に移動だ。



「みんな、僕についてきて、魔物との戦闘をいったん離脱できる場所が現れました。早くしないとその場所が消えます」

「ジーク先行して、僕がうしろの魔物を引きつけるよ」


「はい」と、テオ兄さんに返事をして、戦闘中のハクを呼び、ディアーナたちの護衛を頼みつつ、セーフティポイントへ急ぐ。

 前方にも魔物の大群がいるが、黒い剣を振り回しなぎ倒す。ドロップ品は回収不要だ。

 ハクも襲ってくる魔物を前足で切り裂いている。ハクには念話で、魔法を温存するようにと伝えてある。

 この先なにがあるかわからないからね。

 地面から緑色の光を発光している場所が見えてくる。

 あれがセーフティポイント。

 なんとか消える前に到着できたと、安堵のため息をつきながら、緑の光に突っ込む。

 ディアーナたちもためらうことなく、俺の後に続く。



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