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黒の天使  作者: 竜胆焔
1/1

人間共が攻めてきたので返り討ちにしましょう

天使の羽根それはどんな病気や怪我も治す秘薬になる。

そのため天使は人間に羽根奪われ飛べなくなった。

空に帰れなくなった天使は悲しみにくれて人間に恐怖し憎悪を露わにした。

そして飛べなくなった天使達は人間の近寄らない迷いの森に逃げ込んだ。

昔からあるおとぎ話だ。

「でも、羽根なんてまた生えるじゃないの。どうして飛べなくなっちゃったの?」

母の膝の上で昔話の絵本を読んで貰っていたリーシャは色とりどりのクリスタルに輝く羽根をパタつかせて母に質問した。

「それはね、私達は羽根の数枚なら抜かれても問題なく飛べるけど、たくさん抜かれてしまうと飛ぶための魔道回路に傷が着いてしまったり、飛ぶために必要な魔力が無くなったりしてしまうの。」

本を読んでいた母はリーシャの頭を撫でながら優しい声で説明してくれた。

「そっか、確かに羽根が勝手に抜ける時期は飛ぶのが難しいもんね。」

「そう、だから羽根はとてもデリケートな部分なのよ。」

「でも、人間はどうしてそんなに羽根が欲しかったんだろう。」

うーんと唸りながら首を傾げると家の入口から声が聞こえた。

「それは、俺らの羽根が人間共にとって何でも治す薬になるからだろうな。」

「パパ!!」

勢いよく振り返り走り出すと、ポスッっと音を立てて父に抱きついた。

「ギュー。おかえりなさいパパ!」

「ただいまリーシャ。」

軽く挨拶してから父はリーシャを抱き上げると、腰にある袋から今日とったであろううさぎを取り出した。

「今日はうさぎが2羽に鳥が1匹後は近所の人達と協力してジャイアントボアが1匹だ。」

今日の狩りの成果を誇らしげに話すと、腕の中のリーシャは目をキラキラさせながらはしゃいだ。

「すごいすごい!!あのジャイアントボアを採ってきちゃうなんてパパすごい!」

きゃ〜っとはしゃぐ娘の頭を撫でて母に成果を渡すと、母は刃物などを持って出かける準備をしていた。

「じゃあ、パパが頑張った成果を近所の人と捌いて来るわね。」

そういって外に出ようとすると、父の腕の中にいたリーシャがハイハイと手を上げた。

「ママ!私も行く!お手伝いする!」

元気よく言うと、母はうふふと嬉しそうに笑った。

「そうねじゃあうさぎを捌くの手伝って貰えるかしら。」

「任せて!」

父に下ろしてもらい急いで汚れても良い服と捌くの時用のエプロンをして村の中心にある解体所に向かった。

解体所には既に他の家の母達が解体作業を始めていた。

「あら、リーシャちゃん来たのかい?お手伝い偉いねぇ。」

近所のおばちゃんに褒めらるとえへへと顔を赤くして喜んだ。

早速うさぎや鳥などの小物から捌いていくと、あっという間に血でドロドロになった。

「あらあら、リーシャちゃん真っ赤うふふ。」

と母が笑うとやっと気づいたのかリーシャは水場に行き、全身の血を洗い流した。

「ママ、落ちた?」

「落ちた落ちた。」

うんうんと頷く母はもううさぎと鳥を捌き終えてママさん達とジャイアントボアの解体に移っていた。

「早!」

思わず叫ぶとまた母は笑って「リーシャちゃんだって、これくらい出来るようになるわ」と言ってくれた。

その後も解体が進み、あっという間にジャイアントボアの肉は食料になった。

ふぅと汗を拭うと、母は濡らしたハンカチで顔に着いた血を拭ってくれた。

「さあ、帰って夕飯にしましょうか。」

手を繋いで家に帰ると、疲れたのかそのまま眠ってしまった。

その日は夢を見た。

自分が抜け代わりの羽根を渡して人間と仲良くなる夢。

楽しそうに和になって遊ぶ夢を。

あははうふふと笑う光景は外からの悲鳴によって終わりを告げた。

重いまぶたを開けて、何に事かとリビングに行くと、そこにいた父と母に口を抑えられて、抱き抱えられた。

父は狩猟用の剣と弓を持ち、家に近づく私達に似た何かに向かって弓を発射した。

何が起こっているのか理解出来ないまま母は娘を抱えたまま裏口から森に逃げた。

裸足で走って、逃げる母は恐怖に顔が歪んでいた。

森の中を一心不乱に走る母はようやく森の奥深くの泉にたどり着いた。

そこにはようやく逃げ延びた大人や子供がたくさんおり、その全員が疲れ果てていた。ボロボロになりながら我が子を抱きしめて泣いている光景は絵本の中の絵とそっくりで、自分の大切な場所が壊されたとぼんやりと理解出来た。

家があった方から煙が上り、村で足止めしていた男達の悲痛な叫びがこだました。

何もかもを奪われ蹂躙され大切なものすら壊された悲しみに涙が零れ、その場に崩れ落ちた。

すると、森の方からパキッと聞こえハッとする。

「...何で。」

森から姿を表したのは先程襲撃してきた人間らしき生き物だった。

「お、こんな所に隠れていやがった。

大人しく捕まれよ面倒くせえな。」

ぐへへと下品に笑う人間は近くにいた若い娘の髪を掴み顔を近づけた。

「お前なかなか可愛い顔してるじゃん、羽毟って売り飛ばす前に楽しもうかなぁ。」

と言って娘の服を破いた。

娘からヒュッと音がして露わになった自身の体を慌てて隠すと、娘の母であろうおばちゃんが娘と人間の間に入り、娘を庇った。

「あぁ?ばばぁに要はねぇんだよ。

おとなしく見てろっつの!」

イラついた人間はおばちゃんの背中を蹴りつけ踏みつけ、髪や羽根を毟った。

「お母さん!もうやめて!!」

と娘が叫ぶが人間は楽しそうに笑って痛めつけた。

絵本の中よりも酷い光景にもはや言葉が出てこなくなった。

そして残ったのは純粋な怒り憎悪そして悲しみだった。

真っ黒な感情が心を埋めて、自分の中にあった密かな夢すらも全て崩れ去っていく。

そうして全てが絶望で満たされると、七色に輝いていた羽根は真っ黒に染まり、白銀の髪も真っ黒に染まった。

自身の中の魔力は絶望に支配されて無意識の中で目の前の人間を殺すため体が動いた。

小さい体で飛翔し今なおおばちゃんを痛めつける人間の顔を蹴りあげ、そのまま足を払った。

地面に転びキレたように喚く人間の手を切り落とし、髪を掴んで高く飛ぶと、人間は目に涙を貯めて「痛い痛い」と叫んだ。

髪を掴んで飛ぶリーシャを睨みつけて喚き散らす人間を蔑んだ目で見下ろすと、遠くに燃える元我が家が見えたのでそこに向かい、髪を掴んだまま火の上で止まってやった。

「熱い!痛い!離して、ごめんなさい。」

泣きわめく人間は心にもない謝罪を繰り返し命乞いしてきた。

「虫唾が走る。」

ッチと舌打ちをした後両足を切り落として燃える建物に落としてやると、「熱い!熱い!助けて!」と声がしたが無視。

騒ぎに気づいた他の人間が近づいて来ると、自分の食事にゴキブリが集った時のような感情が湧き上がり、その気色の悪さにまた舌打ちを零した。

「おい、そこの天使。こんなことしてタダで済むと思ってんのか?

それとも俺たちに勝てるとでも思ってたりしてな。」

わははと笑う人間を見下ろすと、害虫が天使に刃向かって来たように滑稽に見えた。

「害虫となんか話す価値すらない。」

そう返して自分の羽根を1枚抜くと、空に投げた。

羽根はひかり小さく分裂すると、無数の刃物となって人間に降り注いだ。

「ほらほら欲しがっていた羽だぞ。拾わないのか?」

と笑いながら言うと、全ての人間の急所は外して刺していった。

阿鼻叫喚の中動けなくなった人間を山にして火をつける。

「私の羽根はお前らの受けた傷を癒してくれるからな、せいぜい羽根の効果が切れるまで熱い炎のなか苦しめ。」

と言い捕まった仲間の救出に飛ぶ。

森の上空を飛んでいると、森を駆け抜ける馬車を見つけた。

「みーつけた。」

にやりと笑って馬車に急降下して止めると、御者をしていた人間がガタガタと震え出した。

つまらないと羽根を刺して首を落とすと、悲鳴を上げる。

「うるさいなぁ。」とひとこ言ってから首を森に蹴飛ばして馬車の中の仲間をたすけた。

仲間の羽根は全て毟られ、傷だらけだった。

リーシャは自分の羽根を3枚とって砕き自分の血を混ぜた後毟られた羽根に塗っていくと、新しい羽根が生えて来た。

「多分まだ魔力が溜まらないから飛べないと思うけど、羽根があればそのうち溜まるから大丈夫。」

笑って言うと、信じられないものを見たように皆目を見開いた。

「リーシャ...なのか?」

馬車の奥にいた父は娘に駆け寄り抱きしめると、涙を流した。

「馬鹿野郎、無茶しやがって、俺たちは見捨てて逃げろよ。」

うぁぁと泣く父の背中を抱きしめて「ごめんなさい、無事で良かった。」と言った。

最後まで読んでいただいてありがとうございます。

コメントなどをして頂けると励みになります。

次回も読んでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします❀.(*´▽`*)❀.

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