どういうことだ
山も谷もございません。宜しくお願いします。
どういうことだ?
ブルーノルフェ王太子殿下のマリシアナ様への態度が、私が知っている恋人同士のアレとは違う。
素っ気ない…そう、素っ気ないのだ。照れてるのか?イヤ、チラッとマリシアナ様に向ける目には何の感情も乗っていない気がする。
どういうことだ?
ちょっと待て?私は今あることに気が付いたよ。宰相様の事前説明のアレだ『王太子殿下はマリシアナ子爵令嬢と恋仲で~』あれはよくよく考えれば、宰相様と中将閣下からの片方からの言い分のみじゃないのか?
当事者のブルーノルフェ殿下とマリシアナ様サイドからの証言を一切聞いてないじゃないか!片方(宰相&中将)だけの言葉を鵜呑みにするなんて愚の骨頂…これはいけないわ。
しかし当事者を前に「あんたら付き合ってんの?」とは聞きにくい。流石にそんな事をズケズケと聞ける人生の熟練者(おば様)にはまだ私の精神年齢は到達していない。
私はまずはマリシアナ様に声をかけようとした。
「マ、マリシアナ様は妃教育の勉強で、お困りのことは御座いませんか?」
私がそう聞くと、何故か頬を膨らませていたマリシアナ様は、私からプイッと顔を背けながら言った。
「勉強が難しいのよ!あんなに教えられたって覚えられないっ」
この時、私がマリシアナ様の言葉を遮っておけばよかったのだと後々後悔したのだったのだが…後の祭りだ。
マリシアナ様は胸の前で手を組むと
「でもね、良かった!これからはあなたが面倒くさい公務全部代わってくれるのね?これで私ゆっくり出来るわ!」
と可愛い笑顔でそう仰った…仰ってしまった。
ゆっくり?は流石にマズイんじゃないかな?え〜とマリシアナ様の言葉を心の中で反芻していると私の上座に座られている金髪の美丈夫様から低ーーい声が聞こえてきた。
「公務が面倒くさい?全部代わってもらう?」
あれれ…急に足元が冷えてきたけど、これって噂の殿下の氷魔法かなぁ?しかも大氷雪魔法とか呼ばれててその冷気に触れたら一瞬で氷漬けにされて…っていう例の魔法かなぁ?
室内の寒さに歯の根が合わなくなってきた。マリシアナ様も歯をガチガチと鳴らせている。
「マリシアナ嬢…君はソードリア公爵家より非常に優秀で妃候補に最適の令嬢だとご紹介を受けて登城したよね?あれって嘘なの?」
「そ……そ……それ……それぇぇぇ……はぁ…………ぁ」
マリシアナ様が頑張って何かを言いかけた時に、中将閣下が殿下の側に走り寄って来た。
「殿下っご令嬢方が凍死してしまいますっ!」
そう中将が言うと、やっとブルーノルフェ殿下は氷魔法を引っ込めてきた。馬鹿野郎!部屋の中で凍死させるつもりかっ!
「で、殿下それに私共はマリシアナ様が妾妃でもよいと仰ったので、正妃にはシルフィーデ=バセトラータ公爵令嬢を推挙させて頂きたく…」
何を思ったのか、中将閣下がベラベラと話し出した。
ぎゃあ!そんな本決まりでもないことを何故今言うんだっ!ちょっとシブオジだからって調子に乗るんじゃねぇぞ!
ブルーノルフェ殿下はゆっくりと私の方を見た。
「正妃?シ…シルフィーデ嬢が…正妃?え…私のか?」
ど、どうした?随分驚いておられるようだけど、驚愕の表情のまま私を見ているのでつい私も、ゆっくり頷いてしまった。
するとどうだろう…ブルーノルフェ殿下はそれはそれは、嬉しそうな顔でテーブルを飛び越えて来た。ええっ?!ブルーノルフェ殿下がお行儀悪く飛び越えた!そこにびっくりだ
「あなたが私の正妃!?」
「…はぁ」
肯定の返事をするわけにはいかないし…でも何故か凄く嬉しそうな顔のブルーノルフェ殿下の迫力に圧されて曖昧に返すと、ブルーノルフェ殿下に手を取られた。おまけに指先に唇をつけてくる。
「ああ、夢のようだ…」
んん?
私は殿下に手を取られたまま中将閣下の方をゆっくりと見た。今、鬼の形相で私を睨んでいるマリシアナ様の存在は見なかったことにしている。
しかし中将閣下もポカンとしている。私は部屋の隅にいる宰相様に視線を移した。宰相様もポカンとしている。
どういうことだ?
何だか浮かれたブルーノルフェ殿下は、直ぐに国王陛下を呼びつけた!そして私の両親まで呼びつけた!
おまけに両方の親が揃うまでお待ち下さい〜と軽やかにまた私の指先にチュウをして、手続きがあるから…部屋を出て行ってしまった。
あのさ、宰相と中将閣下が放置なのは別にいいよ。だって臣下だし?でもさ…マリシアナ様を放置ってどういうこと?えぇ?どういうこと何だよ!?
部屋出て行く時に、マリシアナ様の方に目さえ向けないけど…これさ、薄々分かってきたよ。
とか、感じ始めていたところへマリシアナ様の鋭い声が飛んだ。
「どういうことなんですの!?私はあなたに、王太子妃の公務を代わって欲しいとは申しましたが、あなたに殿下があんなに接触するなんて聞いておりませんよ!」
マリシアナ様さ…何で私を睨みながら言うかな?私だって知らねぇよ。
「ミルヤーデ宰相、中将閣下…」
私は部屋の隅で固まって座っているおっさん2人の前に優雅に近づくと見下ろした。
「ちょっと裏庭まで顔かしな」
淑女の言葉遣いでは無いが、今は構うものか。
おっさん2人は裏庭に出た途端、膝を突いた。分かってんじゃん。
「も、もっ申し訳御座いません!」
「おじ様方に謝罪されてもねぇ…ブルーノルフェ殿下が誰と両思いですって?」
「マ…マリシアナ様です」
私はフムフムと頷いて見せた。
「それはブルーノルフェ殿下から直接言われましたか?」
「い、いいえ」
「では誰から聞きましたか?」
「マ…マリシアナ様からです」
「マリシアナ様のお話だけですね?お間違いないですね?」
「はいっ!」
私は大きく溜め息をついた。そもそもの根底から間違えていたのだ。この宰相と中将閣下達はマリシアナ様の一方的な言い分を信じてしまい、ブルーノルフェ殿下に確認もしないで、勝手に突っ走ってしまった訳だ。
何とな~く突っ走ってしまった訳が分かったよ。今、裏庭に駆け込んで来た見た目は庇護欲をそそられる可愛い系女子のマリシアナ様の可愛さに騙されて口車に乗りやがりましたね?
「何をコソコソしているのよっ!」
……だから、何でマリシアナ様が私達の話し合いに参加する必要があるのかな?あんたが余計な嘘を吹き込むからこんな面倒な事態になっているんじゃないの。
「マリシアナ様、どうしてブルーノルフェ殿下と両想いだという嘘をついたのですか?」
マリシアナ様は顔を真っ赤にした。
「それはっ!私は王太子妃候補なのよっ!?当然殿下からの御寵愛を受けているに決まっているじゃない!」
はぁ…目に涙を浮かべながら訴える姿は確かに愛らしい。これに騙されたのね。
「ブルーノルフェ殿下にお話ししてきますわ…」
「私が嘘をついていたことをバラすの!?酷いわっ!」
「そうじゃありませんっ!」
つい、声を荒らげてしまった…コホンと咳払いをして目に涙を溜めて私を睨みつけるマリシアナ様を見た。いくら庇護欲をそそったって、王太子妃として公務に立てなきゃ意味が無い。お飾りの妃で王太子妃は務まらない。
「私はあなたが妃殿下として真にブルーノルフェ殿下を御支えして共に歩んで行く覚悟を持って王太子妃候補を受けたものだと思っておりました。御寵愛ですって?そんなものは王太子妃のお勉強を全て終えてからになさいませ。今は惚れた腫れたに時間を費やしている時ではありません。それが分からないのなら王太子妃は無理です。私がブルーノルフェ殿下にお伝えするのは今のマリシアナ様のお覚悟では王太子妃は無理だとお伝えすることです」
マリシアナ様は、私がそう言うと急にヘラヘラと笑い出した。
「だ…だから、お願いしているじゃないの!?私は公務は嫌なのよっ!だから殿下の御寵愛だけを受ける妾妃になりたいのよ!」
私は涙を零すマリシアナ様を見てから、宰相と中将閣下を見た。もう溜め息しか出ないわ。
「戻りましょうか…ブルーノルフェ殿下がお戻りになられているかもしれませんし。マリシアナ様、今の言葉あなたの口でブルーノルフェ殿下にお伝え下さいませ。私は口を挟みませんので」
「え?あなたからも言ってよ…ねぇ…ねぇ?」
何で私がいちいちそんな馬鹿垂れ流しの代弁してやらなきゃならないのよ。
私は後を付いて来るマリシアナ様の声が聞こえないフリをして、急いで貴賓室に戻った。アワワッ!国王陛下と国王妃とブルーノルフェ殿下がすでに揃っておられる。
入口で淑女の礼をして口上を述べてからドアの右端に移動した。中将閣下も宰相も一礼をすると、私の横に並んだ。
おじ様達は私と反対側の壁際に行って頂いても宜しいのですよ?
最後に…マリシアナ様が入って来られた。最初に私が挨拶したみたいにしなさいよーー!
うむ…淑女の礼はまあまあ合格ラインだったけど、優雅さにかけるわね。
「皆…掛けてくれ」
国王陛下のお許しが出たけれど…さあマリシアナ様、ここで誰から順番に腰掛けるかは分かっているわね?宰相→中将閣下→私→マリシアナ様よ?分かっている?
「っ!」
「っぁ」
マリシアナ様は何のためらいもなく一番に座っちゃいましたよ。しかも、ブルーノルフェ殿下の隣に…冷や汗が出る。私は中将閣下と同じ下座に急いで座った。
ひえぇぇ…国王妃が鋭い目でマリシアナ様を睨んでいる。ブルーノルフェ殿下も訝し気にマリシアナ様を見ているが、その訝し気な目のブルーノルフェ殿下に何を思ったのか微笑み返しをしているマリシアナ様。そうじゃないでしょう。
「シルフィーデ嬢、こちらへ。マリシアナ嬢は下座へ行きなさい」
ひええぇっ…ブルーノルフェ殿下に指示されてまた冷や汗が出る。私はギクシャクしながら立ち上がってマリシアナ様の横に移動した。
「え?何で?」
キョトンとして、ブルーノルフェ殿下の顔を見たり、中将閣下の顔を見ているマリシアナ様は一瞬、私に鋭い目を向けたが渋々?ゆっくりと立ち上がると下座の席へ移動した。
心臓に悪い…やめてくれ。
ヨロヨロしながらブルーノルフェ殿下の隣に座った私に、ブルーノルフェ殿下は少し座り直して何故だか近付いて来ると、私の腰をご自身の方へ抱き寄せた。
びっくりしたよっ驚かさないでっ!
「シルフィーデ嬢…公爵は今、遠方に出ているそうで戻られないとのことだったので私達だけで話を進めさせてもらうよ」
ぐっ…国王陛下と国王妃が満面の笑顔で私を見る。こんな時にどこ行ってるんだよぉパパァ!
「ブルーノルフェとの婚姻を受けてくれるんだね。王太子妃…未来の国王妃を任せてもいいんだね」
あ……
あ…ぁ……キラキラした顔で国王陛下と国王妃とブルーノルフェ殿下が私の顔を覗き込んで来る。
これさぁ今断ったら、斬首刑?国外追放?…はぁぁ。マリシアナ様ぁ~あんたのせいだよぉ…王都に来てなきゃこんなことになってなかったのに……あ、王都に来たのは自分かぁ…はぁ、自分のせいか。
「よ…」
「……」
「慶んでお受けさせて頂きます」
「きゃああ!」
「よしっ!」
何がよしだよっミルヤーデ宰相ぉぉ?!何をホッとした顔してんだよぉ中将閣下ぁぁ?!
「ああ…嬉しいよ。シルフィーデ…私の妃」
ブルーノルフェ殿下が頬にキスをしてきた⁉ちょっとーー!
「シルフィーデ=バセトラータ公爵令嬢との婚約発表まで忙しくなるな!」
「そうですわね、陛下!それに婚姻式のシルフィーデの衣裳も決めなくてわ、腕が鳴るわ!」
国王陛下と国王妃は2人同時に立ち上がった。私達はそのお2人を一礼をしてお見送りをする。
何やらニヤニヤしているミルヤーデ宰相を私がチラリと見たら、宰相はアタフタしながらマリシアナ様の側に走り寄った。
「と…いう訳でして、マリシアナ様は正妃候補から脱落ということで…」
脱落!いや、そういう言い方でもいいのだろうけど、言い方気を付けろよっミルヤーデ宰相!
私が更に睨むと…宰相は益々アタフタして
「え~と妃候補から外れて頂くということで…ワルボロ子爵にはご連絡してお迎えに上がるように伝えますので、荷造りをしてお待ち下さい」
とマリシアナ様に伝えた。マリシアナ様はポカンとしている。まあ、呆けている理由も分かってるよ。さあ、マリシアナ様ご自分の言葉でブルーノルフェ殿下に聞いてみな。
マリシアナ様は、キョトンとした顔のまま
「あの殿下?私はあのお部屋をそのまま使ってもいいのでしょう?」
と聞いちゃった。そんな聞き方しちゃったよぉ。
恐々ブルーノルフェ殿下の横顔を見ると、とんでもなく冷たい顔をしていた。おまけに、またまた寒~い魔法を放出し始めてるみたいだよ?おーい誰かぁ止めてよ~
「ん?何だって…?」
マリシアナ様は微笑みかけて、小首を傾げた。
「あっもしかして~王宮の離宮のお部屋に移ります~?」
おいおいっ!そこは歴代の王妃のお住まいだよっ。今は東の離宮は現王妃が使っているから、順番から言って西の離宮だろうけど…
すると、ブルーノルフェ殿下はパッと笑顔になると私の方を見てきた。ついでに寒い魔法も治まった。
「西の離宮…そうだな!シルフィーデはもう越して来るかい?私も早く準備をしておかねばな」
いやいやいやぁ!?なんか噛み合ってない!絶対に噛み合ってないよ!?
流石にマリシアナ様も自分が会話の中に入れていないことに気が付いたみたいだ。
「あ…あの、じゃあ私は北の離宮に引っ越すのですよねぇ!?」
貴賓室内が静寂に包まれた。私は口を挟まないと言ったからには何も話さないと決めている。
そう叫んだマリシアナ様は流石におかしいと気が付いたみたいだ。ブルーノルフェ殿下は小さく息を吐いた。
「君は妃候補から外れただろう、ご苦労だった。早く子爵家に戻る準備をしなさい」
うん…多分ブルーノルフェ殿下はそう答えると思ってたよ。これを聞いてミルヤーデ宰相も中将閣下もやっと殿下のお気持ちが分かったみたいだ。
マリシアナ様はワナワナと震えながらブルーノルフェ殿下を見ている。ブルーノルフェ殿下は更に言い放った。
「ソードリア公爵家にマリシアナ嬢は非常に優秀で妃候補に最適の令嬢だとご紹介を受けたがな。出来て当然だと思っていたのだが…まあ今更言っても仕方ないな。どうした?もうよいぞ」
ほら見ろ、バッサリ切られたでしょう?敢えて私は何も言わないよ?これはあなたが招いた結果だからさ。
その、推薦してくれたソードリア公爵って若くて可愛いお妾さんを何人も囲ってるエロジジイじゃない。あなたよくそんなジジイの推薦取れたわね?裏技でも使った?
マリシアナ様はまだ信じられないのか、驚愕の表情のまま私を見てきた。私を見たってどうもしないよ?
「シルフィーデ様が正妃を代わってくれるんでしょ!?わ、私がその代わりに殿下に愛して貰って癒してあげてぇ…愛されて幸せで…」
「…何?」
ブルーノルフェ殿下は私の横でまた冷気魔法を放ち始めた。
私は黙っておこうと思ったが、この修羅場?を一言の言葉で収められるのではと気が付いて、殿下に顔を向けた。
「ブルーノルフェ殿下はマリシアナ様を愛しておられますか?」
「いいや」
間髪入れずにブルーノルフェ殿下は答えられた。そう今までグダグダしていたけれど、たったこの一言を聞けば済むことだった。実に簡単なことだ。
マリシアナ様もこの一言を聞けばいいのに、どうして聞かないのか?彼女の顔を見て気が付いた。
怖かったのだ。
最初はソードリア公爵に言われてか…何かで妃候補になったかもしれない。そして妃候補の勉強の難しさで、彼女のプライドは傷つけられたのではないか?更にブルーノルフェ殿下は優しい言葉もかけてくれない。
彼女の可愛さなら男性に冷たくされるなんて、今まで経験したことがなかったのでは?勉強が出来ないと言えば、しなくていいよ、と優しく言ってくれる人達に囲まれていたのかもしれない。
あくまで私が考える王太子妃や国王妃という『職業』の立ち位置は、王や王子の臣下であり、唯一進言、苦言、叱責を許される…いえ許されるくらいに信の厚い方で無ければならない。愛を優先させたり、情を優先させたり…愛をうたう人であってはならない。
だったら私は妾妃に…と、マリシアナ様は思ったんだろうな。彼女は馬鹿じゃない。自ら愛をうたうだけの人になろうとしたのだ。だけどブルーノルフェ殿下には必要なかっただけだ。
第二王子殿下のハッシュラーフェ殿下なら多分、欲しがると思うけど…
マリシアナ様は宰相と中将閣下に支えられながら、部屋を退出した。またそこで庇うからぁ…おっさんどもは懲りねえな!
「……」
あら?もしかして今、ブルーノルフェ殿下と2人っきり?隣の部屋にはお茶の準備をしているメイドがいるっぽい…が、事実上2人きりだ。
「シルフィーデ…君は正妃をマリシアナ嬢に頼まれたから引き受けたのか?」
そう言ってブルーノルフェ殿下を見たら……しょんぼりしていた。
しょんぼり?何故しょんぼりする必要があるの?
ブルーノルフェ殿下は私の手を握りながら
「それでもいつかは私のことを好きになって欲しい…」
と仔犬アイズで私を見てきた。キラキラキラキラ…
ふぁああ!?
なんだその目と消極的な発言は!?あなた我が国の王太子殿下だよ?顔面偏差値的に言ったら、少なくとも貴族間でNo.1だよ!それに中身も個人的には貴族の中ではNo.1の男前だと思うよ?
寧ろ、独身既婚を含む男性の中で唯一嫌われていない人じゃない?弟の方はチャラチャラしているから、一部の女子には毛嫌いされているけど。
さて、マリシアナ様の問題はまあ…片付いたと思ってもいいだろう。問題はこの仔犬だっ…違った、ブルーノルフェ殿下だ。
先程から私の手を握ったまま離さない。普通さ、好意の無い男性に手を握られたら気持ち悪くない?
全然気持ち悪くないんだよね〜しょんぼりしている姿も綺麗だからだろうか?
そうだ、宰相や中将閣下がまた泡でも吹いて倒れそうになるかもしれないが…これまでの宰相達と私の一連のやり取りを説明しておこうか。
「殿下、実は…昨日私の所に…」
私が説明をしていると殿下は段々眉間に皺を寄せ始めた。
そしてタイミング悪く、話の途中で宰相と中将閣下が帰って来てしまった!
「ミルヤーデ、テルサー閣下…」
また寒い冷気が室内に漂い始めた…
あ〜あもう寒いなぁ。