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なるほどな

全三話で完結する予定です。

山も谷も無い、のんびり王子と王子妃候補の話です。

ほのぼのしかございませんので、ご了承下さいませ。

こんな田舎に豪華な馬車が停まっている。馬車の側面の家紋を見るとミルヤーテ家、現宰相のものだった。


宰相?何だろう?


手に提げた籠を持ち直して、門を潜った所で義姉のパティリーナが庭の方から小走りに駆けて来た。


「シフィ!」


「お義姉様どうなさったの?表の…」


パティお義姉様は私の手を引くと、庭の茂みの陰に連れ込んだ。


「宰相様が……あなたを王太子殿下の妃候補にって…」


「ええ!?」


()()王子殿下の妃候補?おまけに今度は王太子殿下だって?


「どうして、私?」


「理由はあなたに直接会ってお話ししますって、待ってらっしゃるのよ〜」


お義姉様は泣きそうな顔をしている。私はお義姉様の肩を擦った。


「大丈夫よ。また適当に候補にされて、有耶無耶にされると思うし…」


「シフィ……あなた()()同じように逃げ回るつもりね?」


お義姉様はジットリとした目で私を見てきた。


人聞きの悪い、逃げ回るだなんて…こちらは真面目に王子妃の勉強を一生懸命しましたよ?そして勉強を詰めに詰めて、第二王子殿下との親睦目的の茶会を何度もすっぽかしましたよ?


妃候補の勉強の為ですよ?何か?


お陰様で第二王子殿下は伯爵家のご令嬢と婚約したから良いではないですか?


第二王子殿下も伯爵令嬢どちらも、個人的に好きになれない人種だったので、心の中でザマァと思っているけど、それが何か?


「兎に角、お待ちになっているから…」


「はい…」


はあぁぁ…ウザ…帰りたい。そう……帰りたい。元の世界に…


私、これでも苦労してたんだよ。前世の記憶持ちなんだけど、前世はパン職人だった。町1番のパン職人を決めるコンテストの結果発表の前日から風邪を引いてそのまま死亡。私のパン、結果何位だったんだろう?自信はあったよ。


しかも前前世は異世界の、日本人として生まれた。パン職人もこの異世界からの知識を活かしたんだけどね。その日本人の時もさ、受験競争に勝つ為に勉強頑張ったよ。それしか私が持てる希望が無かったってのもあるんだけど、そして合格発表の前の日に軽自動車に跳ねられた。それで死亡。


何か私に恨みでもあるのかっ!?ああん?どれもこれも結果が分かる前にフェードアウトってどういうことだ?


まあ、それで記憶のある三度目の今の転生はまた別の異世界の公爵家のご令嬢だった。上に兄と下に妹と弟がいる。極々平凡で幸せなお嬢様生活だった。


第二王子殿下の妃候補に選ばれるまでは…


「お待たせ致しました」


お兄様とお義姉様の同席は認められなかった…胡散臭い、何の用事だろう?不信感が益々募る。


室内に入り、入口で礼をしてから宰相様と、顔は知っている王太子殿下付きの軍部の中将閣下と恐らく部下の方々を見る。物々しい…


「おお、シルフィーデ様。相変わらずお美しくていらっしゃる、ご健勝であられましたかな?」


宰相様の賛辞ににこやかに微笑み返して頷いた。まあ、自分の顔面偏差値は理解しているつもりだ。10人中10人がまず誉める所は「美しいですね」だろう。


さてこの物々しい方々は何だろうか…軍人様方は私と目が合うと頬を染めている。これもよくある反応だ。


「わざわざお越し頂いた理由をお聞きしても構いませんか?」


宰相様は表情を引き締めた。


「シルフィーデ様を王太子殿下の妃候補に推挙させて戴きたく…」


「王都での私の噂をご存知ですか?第二王子殿下の妃候補を落とされたことの腹いせにオラナ=コーデリート様に嫌がらせをしている…と。その私を今度は王太子殿下の妃候補に推されますか?これは酔狂な…ホホ…」


宰相様の言葉に被せるように、嫌味のパンチをぶつけてやった。こんな田舎(自領)に引っ込んでいる私がわざわざ令嬢に嫌がらせ?こっちは伯爵令嬢に反りの合わない第二王子を押し付けられてホッとしているっていうのにふざけんなっ。


宰相様は真っ青になっている。あら?別におじさんを苛めてるつもりは無いんだよ?


「こちらで店も出して、経営も順調…新作の菓子パン作りが忙しくて、とても王太子妃候補をお受けする余裕はありませんわ」


更なるパンチを浴びせてあげた。


王太子妃候補も嫌がらせもこっちは忙しいんだよっ知らねーよ!っだ。


「そこを何とか…王太子殿下には貴女の助けが必要なのです!」


中将閣下の渋いお顔を見詰める。助け?王太子殿下が何かお困りなのかな?


王太子殿下、ブルーノルフェ様は見目麗しく、そして優しいとても真面目な王太子殿下だ。第二王子妃候補の時に少しお話しただけだが、心もイケメンだった。私的に好感度は高い。


「王太子殿下に何かありましたの?」


あの方は良い人だものね、困っていらっしゃるなら…まあ少しは助けてあげてもいいかな?とは思っている。


「ブルーノルフェ殿下は今、子爵家のご令嬢と恋仲なのです。それで、国王陛下も何とかお二人を添わせようとしているのですが、マリシアナ嬢はその…勉学に非常に不向きでして…遅々として王太子妃の知識が身に付かず、こうなればマリシアナ嬢は妾妃にして正妃をシルフィーデ様に…」


「……は?」


いやいや?あのね、そういう仕組みとか、王族の制度みたいなのは分かってるよ?でもさ、確か妾妃は政治的発言も許されていないし、子供が生まれても王位継承権は一切無し。公式の行事…夜会にも参加すら出来ないはずだけど…所謂、日陰者だよ、妾!


「それは…マリシアナ様はご納得の上で?」


「は、はい。逆に勉強や難しいことをしなくていいなら、それでいい!とまで仰って…」


中将閣下の言葉に私は頭を抱えた。言葉は悪いがマリシアナ様はお馬鹿なのかもしれない…いや、勉強が苦手…難しいことがしたくない…という発言からして、それこそ王太子殿下とお付き合いする覚悟が足りなさすぎる。


「王太子殿下もそれでご納得されているのですね?」


私が聞くと、宰相様以下男性陣は目を泳がせた。まさか…


「殿下はご存知ないのですか?」


宰相様は私に膝をつかれた!?土下座する勢いだ。


「私の一存で…で、殿下は此処に来たことはご存知ないのですぅ!」


私は再び頭を抱えた。


「ブルーノルフェ殿下はマリシアナ様を正妃にされるおつもりです。ですがどう考えても無理なのです。例え正妃として御披露目されても外交も公務も…」


中将閣下の顔をチラリと見た。


「王太子殿下ほどのお方ならマリシアナ様の資質を分かっておいででは?」


「今は出来なくてもやれば出来るようになる。の一点張りで…」


「た、確かにマリシアナ様は勉学は不得手ですが、非常に可愛らしくて庇護欲を掻き立てると申しますか…」


横に控えていた若い軍人の男性がそう言いかけたのを、中将閣下が鋭い声で遮った。


「タイラー!」


「!」


なるほどな。


マリシアナ様は男心を擽る容姿の可愛らしい美少女らしい。悪かったね、ツーンとしたクールビューティ系でさ。男は庇護欲掻き立てる女が好き何だろう?そうだろう?


「では正妃になるはずのマリシアナ様を押し退けて私が正妃に納まり、マリシアナ様を妾妃にして表舞台に出さないようにする悪女を演じろ…と仰いますのね?」


「それは……いえ…そうですな、はい」


宰相様は先程から顔色が悪い、変な汗かいてない?


「王太子殿下に恨まれてしまって、私には損なことばかりですわね」


宰相様は益々変な汗をかいている。


「もちろんっ!ご協力頂いている分、公爵家には援助を…」


「ご心配頂かなくとも、領地は潤って御座います」


「ごもっとも…」


「でしたら、シルフィーデ様にご援助を!」


「ご心配頂かなくとも菓子パン店の経営は順調で御座います」


「ごもっとも…」


私は温くなったお茶を一口飲むと男性陣をグルリと見回した。


「王太子殿下に変にご遠慮されて、マリシアナ様と殿下の今後の事を誰も諭すことが出来ませんでしたのね」


男性陣は俯いた。誰だって不敬だと叱責されたくない。ましてや王太子殿下の好きな女、王太子妃には無理だと思うよ?…なんて口が避けても言えないだろう。


何だか分かってきたぞ。この宰相(狸親父)、私に不敬上等!で王太子殿下とマリシアナ様に説教してくれと訴えにきたんだ。


しかし何故私なんだ?もっと迫力があってドスの効く御大なんて王城にいっぱいいるだろう?


「いいですわ、王太子殿下とマリシアナ様を交えてお話しましょう。王太子殿下に隠れて画策するのは、性に合いませんもの」


「シルフィーデ様!?お待ち下さい!まさか…」


宰相様が立ち上がった私に取り縋った。いや、おっさんに縋られてもドン引きだわ。どちらかと言うと中将閣下に縋られる方が萌える……そうじゃねえ。


「身支度を整えて参ります。王都まで私もご一緒させて下さいませ」


「ええ!?」


宰相様は心底驚いたのか…今は棒立ちになっている。


「王太子殿下もマリシアナ様もご自身の立場と成すべき責務に気が付かれましたら取るべき道が分かるはずです、では」


□ □ □◆□ □ □ 

 

「カッコいい…」


「なんですか?あの方…」


中将は宰相に思わずそう聞いた。聞きたくもなる。一国の宰相と、軍の中でも強面な自分を前に顔色一つ変えることなく、威圧してくる公爵令嬢。


「あの方こそ国母になられる方なのだよ。第二王子妃候補に名前が上がって登城されたお姿を見て、あまりの美貌に傾国の美女だと臣下達は心配したが、なんのその真逆をいくお方だった。惜しまれるは第二王子殿下とは反りが合わす、王子との茶会を全て欠席されていた為に、王子はコーデリート伯爵令嬢と…」


「もしかして、わざと茶会を?」


「だろうな…オラナ様が第二王子妃と発表されるとすぐに自領に戻られてしまって一度も王都に来られていない」


部下がオロオロしながら宰相の顔を覗き込んでいた。


「ではあの嫌がらせは?オラナ様の住む北棟に押し掛けて、罵倒しドレスを傷付けて宝石類を奪ったと…」


「警護もいるのに部外者が入れるものか。おまけに夜会でオラナ様のドレスに酒を引っかけられたと言われたのだって、オラナ様の友人以外、証言するものが出て来ない」


中将がそう部下に言い聞かせると、部下は顔色悪くしている。


そう…あの令嬢なら嫌がらせなんてしない。確信を持って言える。ヤるなら正々堂々、正面からだ。


宰相は大きく息を吐き出した。


「ブルーノルフェ殿下がシルフィーデ様を御覧になられて、色々と気付かれることを願うよ」


□ □ □◆□ □ □


宰相様の馬車に乗り込んだものの、よく考えたら4人乗りの馬車に宰相(おっさん)中将閣下(シブオジ)部下(フツメン)に私。


女子1人だ…気まずい。しかも何を思ったのか遠足気分で色々と準備してしまった。まあ、軍の関係者?に直接プロモーションかけられる絶好の機会だしね。


先ずは…


「そうですわ、移動中に召し上がって頂こうと思いまして〜私の店の『ベッカライサクラ』のモチモチロールどうぞ〜!」


藤籠の中から紙に包んだ、木の実入り菓子パンを取り出し、斜め前に座るフツメンに渡す。フツメンが笑顔になった。続けて中将閣下に微笑みを添えて渡した。渋いお顔が少し和らぎましたね。眼福です。ん?


「あの…シルフィーデ様…」


宰相様のお手がワキワキ動いている。おっさんも食べるの?木の実結構硬いと思うけど、歯は丈夫かい?


「はい、宰相様」


笑顔はタダだ、いくらでもあげるよ。


「うわっ凄く美味しいです!この木の実甘いですね?何かに浸けてますか?」


おお、フツメン君は意外とグルメかな?コメントが鋭いね。


「はい、ご明察です。数種類の甘味料に浸けて木の実本来の苦味を抑えてますの」


「これは幾らでも腹に入るな。シルフィーデ様の店は王都に出店されてますか?」


中将閣下、良いご質問ですわね!


「はい、近々出店予定です。中将閣下もお好きかと思います、焙り肉のサンドイッチもありますので、開店しましたら…」


軍人は肉でしょう?閣下はどうだ?中将閣下はニヤリと笑われた。


「それは…開店の際は是非お伺いします」


私はプロモーションの成功に、にっこり微笑みながらポットからお茶を入れて皆様に渡した。


「これは…ありがとうございます。しかしシルフィーデ様は給仕をされるのにご抵抗はないのですか?」


中将閣下は私が手渡した茶器を受け取って目を丸くされている。


「ありませんよ。ですから、菓子パン店も経営していますし。それに店が軌道に乗るまでは、私1人でパンを作ってましたよ」


「ええっ?お1人で?」


「すごいですな…」


と、言うような和やかな雰囲気で王都入りをしたのだった。


「……」


今は王城内の来客用の貴賓室で王太子殿下のお越しをお待ちしている。当たり前だけど、いきなり押し掛けてマリシアナ様が都合よく王城にいる訳でもなく、初日から出鼻をくじかれた。


初日っていうか宰相様が兎に角、2人にガツンと頼むぜ!とばかりに丸投げしてきたので…数日は王都に滞在して説得?の予定だ。


王都に住んでいる両親には使いを出している。何故か首、突っ込んじゃったな…と今頃後悔している。


「王太子殿下お越しになられます」


おっと…廊下から先触れの方のお声に、立ち上がると淑女の礼をした。


「お待たせしたね、シルフィーデ嬢」


「此方こそ急な謁見の申し入れをお聞き入れ下さりまして有り難き幸せに御座います」


ソファに対面に座られた殿下に許可を頂いて私も腰かけた。あれ…対面?王太子殿下は普通、上座に座るものじゃないの?


おいっ、あんた上座じゃない?


…とは、とてもじゃないが聞けない。しかし…


久々に見るブルーノルフェ王太子殿下はやっぱりお美しいな〜と眩しげにしていると、あれ?殿下も眩しそうな表情をしている。


「久しいな、シルフィーデ嬢……一年ぶりかな?」


「はい……ぇ?」


よく見ると…というか、王太子殿下の肩越しに部屋の隅に、宰相様と中将閣下が居ることに気が付いた。なんであんた達がそこに居るの?何か必死で頷いているけど、心も読めなければ察するなんて剣士みたいな真似も出来ない私にそのジェスチャーが何か分かるはずがねぇ!


「ところで、話とは何だろうか?」


ああ、しまった…これはマリシアナ様がご一緒の時に話す方がいいような気もするんだけど…え~と。


「実はそこにいらっしゃる宰相様からご相談を受けたのです」


宰相様は泡でも吹き出しそうなくらいに真っ青になっていた。先生!宰相くんが気分が悪いみたいです!もう床に座っちゃえば?朝礼中、気分が悪くなったら体育座りしてなさいよ~


「うん?ミルヤーテが?」


振り返ってまで宰相様の方を見てやるなよ…ブルーノルフェ殿下よ…見られただけでひきつけ起こしそうになってるからさ。


「実はマリシアナ様の王太子妃の勉学の進み具合が良くないとお聞きしまして…」


王太子殿下の目が若干鋭くなった後、苦々しい顔になった。


「マリシアナ嬢か…それで宰相から何か言われて私の所へ来たのだな?」


王太子殿下はやはり出来る王太子殿下ですかね?それがまたマリシアナ様の事となると目が曇るのでしょうかね~恋は盲目?う~ん…


「一年前、私も王子妃候補の教育を受けました。その経験上先生方でも特に、歴史のモーアン先生と行儀作法のノクター夫人は大変厳しかった記憶が御座います。マリシアナ様も教師陣から厳しい叱責を受けて、萎縮されていると察せられます」


この先生云々…は馬車の中でお茶を頂きながら宰相様と中将閣下に聞き取り調査した結果、総合的に判断した。勉強が苦手な子供はまずは先生と相容れないせいで、学力が落ちるというのも一理あるからだ。


先生が苦手→授業に身が入らない→成績が落ちる→先生が怒る→やはり先生が苦手…このループだ。


「マリシアナ嬢も教師が厳しい…怒られてばかりだ、すぐに前の妃候補と比べると漏らしていたかな?もしかするとシルフィーデ嬢と比べられているのか…」


「さあ?それはともかく、一度マリシアナ様からのお話をお聞きして…僭越ながら苦手とされている勉強を私が少しお教え出来るかと思いまして…私とは同じ年ですし、お話ししやすいかと思いましたの」


私がそう言うと、ブルーノルフェ殿下は笑顔になられた。


「そうだな、シルフィーデ嬢なら萎縮することもなく教えを乞うことも出来るな」


まあ、まずは面接?をしてから…ということで私は明日また登城致しますと伝えると、王太子殿下の御前を失礼した。


廊下に出ると…侍従の方が


「バセトラータ公爵様とご夫人がお待ちです」


あれ?両親が揃って来たんだね~侍従の方に案内されていると、角を曲がった先で立ち話をしている両親を見つけた。ゥエーイ!パパママ~!


「おお…シルフィーデ」


「もうっシフィ!王都に来るならもう少し早く伝えなさいな~」


私はお母さまに抱き締められた。久々のママの抱擁だ…胸が気持ちいい。グッジョブ巨乳。


「宰相様の馬車に便乗させてもらいましたの~王都に来たついでにお店の建築状況を見たいと思いまして~」


「おお…今から行くか?昼食はどうする?」


「外で頂きましょうよ」


パパに聞かれてママが即決すると私もママに賛同した。3人で城下町へ移動した。


★  ☆  ★  ☆  ★  ☆


久しぶりにお会い出来た…今日は嬉しかったというのが本音だった。綺麗だな…と鑑賞対象として憧れていたシルフィーデ=バセトラータ公爵令嬢が目の前に居た。これで緊張するなというほうが無理だった。どうしよう……マリシアナ嬢の勉強を見るだって?じゃあ毎日顔を拝見出来るのか?これは嬉しいし緊張する。近くで見ると作り物のような侵し難き神々しいまでの美貌だったな。本当に私と同じ生き物なのだろうか?


まさかあんな至近距離で会えるなんて夢みたいだった。いつもご挨拶程度でしか言葉を交わしたことがなかったけど…どうしてハッシュラーフェの奴あんな素敵な令嬢を娶らなかったのだろう。


正直私には高嶺の花だな。


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★


翌日、マリシアナ様と対面することにした。さあ、こいっ!


ふあああ…マリシアナ様は小動物だった!これは可愛い!サラサラの薄い茶色の髪に瞳も薄い茶色。白く折れそうな体躯に小柄な方。これは庇護欲をそそりますねーー!そうですねっ!ブルーノルフェ殿…下?あれ?


殿下は淑女の礼で入って来たマリシアナ様をチラリと一瞥しただけで、私に極上の笑みを向けられた。しかしマリシアナ様は上目遣いの可愛い顔でブルーノルフェ殿下の方に顔を向けている。


おーい。こっちを向いて欲しい人には無視されて、見なくていい人から見詰められるって何事だ?


「マリシアナ嬢、シルフィーデ嬢があなたの勉学を見てくれるそうだ。彼女は優秀だ、これで少しは勉学に身が入られるかな?」


ん?


王太子殿下がチラッとだけマリシアナ様に目を向けた後、私ににこやかに微笑みかけられると


「このビエーソナのプディングは絶品だよ。シルフィーデ嬢是非食べてくれっ!」


何故だか、グイグイと私にお菓子を勧める殿下…そして、何故だか私を睨み付けるマリシアナ様。


んん?


「はっはい?頂きます!」


プディングを食べながら何かおかしいことに気が付き始めた。


んんん?

  

何の捻りもなく短期連載スタートで御座います。宜しくお願いします。

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