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第31話

こちらの作品本日よりマンガUP様に連載始まりました!

良かったら読んでみてください!


 今日はレベル上げを行うため、俺は森へと来ていた。

 隣にはリーシャもいる。

 今日の戦闘は基本的に俺一人で行う。魔物を倒して得られる経験値は魔物に攻撃した人間皆に入るそうだ。


 だから、リーシャが戦いに参加してしまうと、その分俺からリーシャに分配されてしまうらしい。

 何より、レベル差があると俺にまったく経験値が入らない、なんてこともあるらしい。

 ……知らなかったな。

 

 誰かにレベル上げを手伝ってもらうなどは、そう簡単にはできないそうだ。


「リーシャ、この森にはどんな魔物がいるんだ?」


 森を歩きながら、俺は耳と目で周囲を警戒している。

 もちろん、気配も探りながらだ。

 ……懐かしいな。


 ゲイルさんの訓練で、目を閉じたまま戦闘を行うというものがあった。

 人間が持つ第六感を鍛えるためだ。

 その訓練を思い出しながら、周囲を探っていく。


「そうね……ゴブリン、オーク、ホーンラビット、ブレイブボア……だったかしら」

「そうか。ゴブリンとオークは聞いたことがあるな。ホーンラビットはウサギの魔物だったか?」

「そうね。ブレイブボアはわかる?」

「……いや、聞いたことがないな」

「イノシシの魔物ね。突進が好きで、戦闘中の冒険者を見つけると突然突進してくるから気を付けたほうがいいわ」

「……恐ろしい魔物だな」

「実際、背後から急に突進されて死んでしまう冒険者もいるわ。凄まじい威力で、まず直撃したら大怪我は免れないわ」

「……なるほどな」


 戦闘中にも気を抜けないというわけか。

 リーシャの説明に納得しながら、森を歩いていく。

 と、ゴブリンだ。人間の子どものような見た目だが、緑色の肌を持つ魔物だ。


 数は三体。こちらへと鬼気迫る様子で走ってきた。


「……なんだ? 腹でも減っているのか?」

「……かもしれないわね」


 異常な様子に驚きながら、俺は拳を構える。ゴブリンたちも俺たちに気づいた。

 そこへ、まずは先制の一撃をはなつ。

 正拳突きを発動する。同時、接近し、拳を振りぬいた。


 ゴブリンがその場で崩れ落ちる。残りの二体が驚いたように持っていた棍棒を叩きつけてきた。

 しかし、俺はそれを横に滑るように移動してかわす。そして、足を振り回し、一体を蹴り飛ばした。

 首が折れ曲がったゴブリンはそのまま、木に背中を打ち付け、倒れた。


 最後の一体――正拳突きを発動すると、ゴブリンが倒れた。

 こんなものか。

 ゴブリン相手では……何とか戦えるようになってきたな。

 いやいや、だからといって気を抜くんじゃない俺。一度深呼吸をしていると、リーシャが近づいてきた。


「……や、やっぱりレベル2の戦闘能力じゃないわよ。ジョン、強すぎるわ」

「……そうでもない」


 リーシャの言葉に首を横に振る。

 ……このゴブリンがたまたま弱いだけだろう。以前は、スケルトン相手にあれほど苦戦したのだぞ?


 それから、次の魔物を探していく。

 ……次は、オークだ。オークもまた、森の外へと走るように移動していた。

 オークの発見に、リーシャが驚いていた。


「どうしたんだ?」

「……オークって本来森の奥にいるのよ。それが、こんなところにいるなんて。ジョン、戦えそう?」

「少し、やってみようか」


 今回は俺のレベル上げだ。今日の目標はレベル10だからな。

 そこに到達できれば――そう思いながら一度息を吐いた。

 オークがこちらへと接近してくる。体は俺より一回り大きい。さすが、オーク、といったところか。


 オークもこちらに気づき、拳を振り下ろしてきた。

 速い……。だが、見切れるほどだ。

 その一撃をかいくぐるようにしながら、俺は拳を振りぬいた。


 ――正拳突き。

 今度は柔の一撃。相手の内部をえぐるような拳だ。

 ずしん、という音だけが響き、オークの巨体が崩れ落ちた。


 ……問題なさそうだな。

 ただ、気になるのはオークのあの顔だ。

 まるで、何かにおびえるような……。


 だからこそ、本来の動きとは違ったように感じた。

 その時だった。


「ジョン! ブレイブボアよ!」


 なに? オークの顔の分析をしていた俺は、突然接近してきたブレイブボアへの反応が遅れる。

 そちらを見ると、鋭い角を突き立てるように、こちらへと全力で走っていたブレイブボアがいた。

 木々をなぎ倒すその様は……確かに、不意を突かれたら大怪我では済まないような魔物だった。


 リーシャがいてくれてよかったな。

 俺は小さく息を吐いてから、片手をそちらに向ける。ブレイブボアの角を掴む。

 ずしん、と俺の体に衝撃が襲い掛かるが、それらすべてを飲みこむようにブレイブボアの角を握りつぶした。


「ガァ!?」


 痛みと驚きだろうか? それらを含んだような声をあげるブレイブボアに俺は左拳を放った。

 その眉間から尻尾までを貫通するような衝撃を与えると、ブレイブボアが体を沈めた。

 ……よし。

 これで、この森にいる魔物とはすべて戦えたな。

 

 俺が小さく息を吐いてから、リーシャを見ると、彼女は唖然としていた。


「……どうしたんだ?」

「ぶ、ブレイブボアの一撃を止めた人、初めてみたわ……」

「そうか」


 確かにリーシャはあまりこの森で誰かと戦闘したことはなさそうだもんな。

 そう思いながら奥へと進んだときだった。

 ……嫌な気配が感じられた。


 同時、ばたりと一人の女が倒れた。


「……だ、誰かぁ……」


 血を流した女がそこにはいた。

 血を流している彼女に、リーシャが慌てて駆け寄った。


「だ、大丈夫!?」


 リーシャはアイテムボックスからポーションを取り出し、女の口元に運ぶ。

 俺は周囲を警戒しながら、女を見ていると、女はごほごほと何度かむせてから、声をあげた。


「な、仲間が……まだ、向こうに……いるんです……っ!」

「……なるほど。リーシャ、少し様子を見てくる。彼女を任せてもいいか?」

「え、ええ! こっちは任せて! ジョンも気を付けてね!」

「ああ」


 リーシャにこくりと頷いてから、俺は女が指さした方へと向かう。

 そちらに向かうと……ゴブリン、のような魔物が二体いた。

 ゴブリンたちは、女たちの身体をまさぐろうとしているところだった。


 ゴブリン二体は俺に気づくと、苛立ったようにこちらを見てきた。

 俺はゴブリンをじっくりと観察する。

 うーん、さっきのゴブリンとは肌の色が違うな。


 普通のゴブリンは緑色なのだが、こいつらは濃い茶色だな。

 人間でいえば……そうだな。


 日焼け、といったところか。

 ゴブリンも日焼けする時代なのだろうか……?


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