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第21話


 ギルドについた私たちに注目が集まる。


「……おい、あれみろよ」

「……『紅蓮の翼』じゃねぇか! 確かAランク冒険者たちだよな?」

「そうだぜ? あの若さでAランクだ。将来的にはSランクにだって到達するだろうさ」

「それにしても、みんなめっちゃ可愛いんだな……」

「あの胸でかい子、いいなぁ」

「いやいや、俺はあっちのクールな子だな」


 ……うぅ。嫌な注目が集まってしまう。

 私はアクフィアとヒレンの後ろに隠れ、受付へと向かう。


「いらっしゃいませ。どのような御用でしょうか?」

「人を探しているんです。……えーと、とりあえずこれを」


 私は領主――アリースト家から渡されている書状をギルド職員に見せた。

 これは私たちが仕事関係で施設を利用したい場合に使用できるものだ。

 ……冒険者とはいえ、個人情報だ。だから、それらを聞くためには、これが必要になる。

 受付は書状を見てからにこりと微笑んだ。


「それで、どのような人なのでしょうか?」

「……あまり情報はないのですが、男性で凄く強い方ですね。恐らく、レベルは最低でも50は超えていると思われます」

「……なるほど」

「それで、剣を使いますね。それもかなり頑丈なものだと思います」

「……はい」

「あとは……所有しているスキルの一つに瞬間移動のようなものを持っているんです」

 

 ……私が昨日の戦いで見たことを正確に伝えた。

 私の言葉を聞いた受付はそれから首を傾げた。


「それで、そちらの方は……えーと、ギルドに登録されている冒険者情報から調べればよろしいのでしょうか?」

「……いえ、そのこの街にいる冒険者、ですね」

「こ、この街ですか……!? そんな強い方、いませんよ!」


 え!? 受付の素っ頓狂な声に、私たちは驚いてしまった。


「で、でも私昨日見たんです!」

「……で、ですが、いまあなたがいったようなスキルを持っている人は……すくなくとも、この街にはいませんね。……街にいる該当しそうなスキル、レベルを持つ冒険者をいくつかリストアップしましょうか?」

「……お願いします」


 ……受付の言葉が信じられなくて私はすぐにそう頼んだ。

 それから、私はアクフィアとヒレンとともに近くの席についた。


「ギルド職員に聞いてもすぐに思い当たらない冒険者……本当にいるの?」


 アクフィアが不安そうにしていた。

 ……確かに私も同じだった。

 受付が、『私たちに匹敵するほどの実力』と聞いた瞬間凄く驚いていた。

 ……つまり、この街に私たちに匹敵するほどの実力者はかなり少ないのか、あるいはいないのかもしれない。


 まあ本気で稼ぎたい冒険者なら、もっと上の街にいるだろう。


「……もしかして、フウア、ねぼけてたの?」

「まさか、ヒレンじゃあるまいし」

「なにをー! 私だってさすがに寝ぼけて見間違えるなんてしないわよ!」


 ヒレンの言葉を聞き、私はいよいよ自分がみた昨日の光景に疑問を抱き始めてしまった。


「とりあえず……今はギルド職員の結果を待つしかないです……」


 ……お願いだから、受付が忘れていただけ、とかそんなことを期待してしまう。

 ヒレンは目を輝かせた後、ポケットからお菓子を取り出した。


「じゃーん! 昨日買っておいたお菓子! これでも食べて落ち着きましょう!」

「能天気……」

「焦っても仕方ないじゃない! 一時間後に結果わかるんだから! ほら、二人とも食べるといいわ!」


 笑顔でそういったヒレンに、私たちは顔を見合わせる。


「……ヒレンは時々、正しいことを言う」


 アクフィアはお菓子を口に運び、私も同じように手に取った。



 〇



 一時間が経過して、リストアップされた資料を渡された。


「手書きでいくらか行いましたので読みにくい部分はあるかもしれませんが、大丈夫ですか?」

「……ええ、大丈夫です」


 私はちらと紙を見た。

 ……レベルやスキルなどが記載されているが、最高でも30かぁ。

 それに、30の人は今牢屋に入れられているらしいし。たぶん、違う人なんだろうと思う。


「……一応、すべての条件を満たしているという方はいなかったので、高レベル、似たようなスキル、剣を扱う……程度のものでもリストアップしたのですが」

「わかりました、ありがとうございます。とりあえず、この人たちに当たってみようと思います」


 冒険者によっては泊まっている宿についても書かれている。

 ……一時間程度でこれをやってのけた受付は、さすがギルド職員なんだと思った。

 受付はにこりと微笑んだ。


「今後も時間を見つけて調べていきます。情報も集めておきますので、何かありましたらお伝えします」

「ありがとうございます」

「私も、依頼を受けに来た際に伝えておきます。少し用事がある、とでも言っておけばだいたいの冒険者は待ってくれますしね」

「感謝します」

 

 すっと頭を下げてから私たちはギルドを後にした。

 ……とりあえず、冒険者の情報は手に入った。

 ヒレンはいつの間にかアイテムボックスから串焼きを取り出し、それをおいしそうに食べていた。


「これからどうするの、フウア?」

「そうですね……とりあえず、二手に別れましょう。私とアクフィアでこのリストにある冒険者に声をかけていきます」

「わかったわ! あたしはどうすればいいの!?」


 ……ヒレンは、目を輝かせながらこちらに顔を寄せて来た。


「とりあえずは、現場周辺で聞き込みをしてくれませんか? もしかしたら昨日の戦闘の目撃者がいるかもしれませんから」

「わかったわ! それじゃあ行ってくるわね!」

「あっ、ヒレン! 昨日の今日です。なるべく大通り以外は一人で歩かないこと、また暗くなる前にギルドに戻ってきてくださいね」

「わかっているわ! それじゃあまたあとでね!」


 ……本当は三人それぞれで活動がしたかったが、私はそこまで力が強くない。

 リストにある高ランク冒険者に会う場合、力づくで押さえ込まれた場合抵抗できない可能性がある。

 だから、私はアクフィアと共に行動する必要があった。

 ヒレンはこのパーティーのリーダーを務めるだけあって、一番強いからね。


「アクフィア、行きましょうか」

「うん。見つかればいいけど」

「……そうですね」


 私たちは、リストにある冒険者たちに手あたり次第声をかけていった。



 〇 



 ギルドでヒレンと合流した私は、にこにこのヒレンに状況を聞いた。


「まったく見つからなかったわ! けど、猫ちゃんが可愛かったのよ!」

「……猫ちゃん?」


 アクフィアがぴくりと眉尻をあげた。


「野良猫と仲の良い人がいてね! その人に猫を触らせてもらったのよ! 可愛かったわ!」

「……まったく。ヒレンももう少し真面目に探して」

「探したのー! 聞き込みしたけど、まったくそういう人がいなかったのよ!」


 アクフィアは小さくため息をついた。

 ため息をつきたくなる気持ちもわかる……。

 私たちの結果もあまりよろしくなかったからね。


 ……冒険者たちに声をかけたが、皆知らない、あるいは教えてほしかったら……か、体で払えとか何とか。

 ふざけた相手はすべてアクフィアがボコしてくれたけど、とにかく疲れた一日だった……。




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